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090 切り札は、最後まで秘密にしておくものさ、カリプソも言っていた通りにな

 こういった魔法武器は、一定以上の武術や格闘技の使い手でなければ、作り出せもしなければ、使用も出来ない、使用者を制限するシステムが、魔法に組み込まれているらしく、使い手を選ぶ存在となっている。

 それ故、クロウリー程の魔法使いであっても、作り出せすらしないのだ。


 単に創造魔法で作り出された、セフィル製の武器には、こういった魔法的な能力は存在しない。

 その代り、使用者に関する制限も無いのだが、武術に通じた魔法使いにとっては、魔法武器に劣るし、武術に通じていない魔法使いにとっても、上手く使いこなせない為、有効な武器とは言えないので、わざわざ作り出して使う魔法使いは、殆どいないのである。


 当然、これまでクロウリーが、創造魔法で武器を作り出す光景など、惣左衛門は目にした事が無かった。

 それ故、惣左衛門は驚いたのだ。


 魔法が使い難い状況に対処する為、クロウリーもある程度は、武術の修練は積んでいる。

 ただし、纏魔や魔法武器を使える段階には、程遠い技量である。


 一応は鍛えているとはいえ、身体能力に関しては、五十歳前後の割には、多少ましな程度でしかないクロウリーに、鋼のセフィルで出来たランタンシールドは重過ぎる。

 クロウリーの右肩は、ランタンシールドの重さのせいで、やや下がり気味になってしまう。


「使えもしない武器なんて作って、どうするつもりだ?」


 明らかに、重たいランタンシールドを持て余している、クロウリーの姿を目にして、惣左衛門はからかう様に問いかける。


「使えもしないか……まぁ、これは確かに、まだ使える段階の物ではないがね」


 不敵な笑みを浮かべ、言葉を返しつつ、クロウリーは創造魔法を解除し、ランタンシールドを消滅させる。

 創造魔法が使えるかどうか、試す為の発動だったので、クロウリーは最初はなから、すぐに解除するつもりだったのだ。


 実は、クロウリーは開発中の魔法をの一部を、ついでに試してもいたのだ。

 開発中の不完全で不安定な魔法である為、この場で惣左衛門相手に使うかどうかは、クロウリー自身にも分からない魔法を、部分的に発動させてみたのである。


 ランタンシールドを消し終えたクロウリーは、十メートル程先……硝子のセフィルの向こう側にいる惣左衛門と、その周囲に倒れている、部下の魔法使い達に目をやる。


「――まさか魔法無しで、魔法使いを倒せる手段を、隠し持っていたとはな……」


「切り札は、最後まで秘密にしておくものさ、カリプソも言っていた通りにな」


 普段通りの気楽な口調で、惣左衛門は続ける。


「魔法少女になった頃から、こういった事態が起こる事は、想定済みだ。魔法を失った状態でも、魔法使い相手に戦える手段の準備は、以前から鬼宮一族で進めていた」


 惣左衛門は魔法少女になった直後から、魔法使い相手の戦いで、鬼伝流の様々な技や戦い方を試し、密かに鬼伝流自体の改良を進めていた。

 その主な目的は、魔法が使えなくなった場合に備え、魔法無しでも魔法使いを倒せる手段の、開発であった。


 開発には途中から、柊と榊……牡丹も参加、他にも魔法少女ではない、鬼伝流の武術を使う鬼宮一族の人間が参加した。

 その結果、惣左衛門達は鬼伝流の武術ですら、不可能だと思われていた事、つまり魔法無しで魔法使いを倒す方法を、見出しつつあったのだ。


 まだ完成とは程遠い段階であり、倒せるケースは限られているので、「見出した」というよりは、「見出しつつある」というべき段階。

 惣左衛門ですら、実戦で使いこなせるかどうかが分からない、未完成の対魔法使い戦闘法が、魔穢気法まえきほうである。


 鬼伝流には様々な禁じ手があるのだが、穢気法えきほうという、穢気を使う攻撃技の全ても、禁じ手として扱われている。

 魔穢気法とは、この穢気法から生まれた戦闘法だ。


 魔法使いに通用する技の開発の為、惣左衛門達は鬼伝流の技を、穢気法などの禁じ手まで含め、その全てを試した。

 癒しの魔法を使える魔法少女が、四人もいたので、危険な禁じ手も試せたのである(禁じ手で死に掛けても、魔法で治せるので。無論、殺傷しない様に気をつけて、禁じ手を試していたが)。


 結果、纏魔や魔甲……アーマーエフェクトどころか、シドリ製の戦闘服による防御すら、鬼伝流の全ての技が通用しないのが、明確になった。

 シドリ製の戦闘服は、魔法主義革命家団体の魔法使いから、鹵獲ろかくしたものを利用していた。


 だが、大量の穢気を掌から放出し、敵に浴びせて殺傷する、穢気疾風えきはやちという技を試した時、惣左衛門達は不思議な事に気付いた(疾風はやてではない)。

 穢気疾風により放たれた、惣左衛門の穢気が、雷のセフィルの纏魔を行っていた柊に当たった時、穢気と水のセフィルが、僅かではあるが混ざり合ったのだ。


 そもそも、惣左衛門達が操る気は、魔力とは似て非なる生命エネルギーである。

 それ故、魔力から生み出されるセフィルと気は、近い存在と言えるのだが、セフィルと混ざり合う様な現象を、普通の気は起こさなかった。


 ところが、出来損ないの気といえる穢気は、通常の気よりもセフィルと近い存在なのか、それとも相性が良いのか、理由は不明なのだが、僅かに混ざり合う事が分かったのだ。

 この、僅かではあるが、セフィルが混ざった穢気を、魔法と融合した穢気と看做し、惣左衛門達は魔穢気まえきと命名した。


 この新たなる気といえる魔穢気なら、セフィルと融合しているのだから、セフィルによる防御を崩し得るのではないかと、惣左衛門達は考えた。

 そして、鬼伝流の武術で、魔穢気を操る方法を、模索したのだ。




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