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089 カリプソ……お前には、奴の攻撃が何なのか、分かるのか?

「どういう事だ?」


 何かを知っている風な、カリプソの言葉を聞いたクロウリーは、驚きの表情を浮かべ、カリプソに問いかける。

 惣左衛門が何をどうやって、魔法でしか破れぬ筈の防御を破ったのか、武術が専門外であるクロウリーには、全く分からなかったのだ。


「カリプソ……お前には、奴の攻撃が何なのか、分かるのか?」


「おそらくは、邪気と似た気を使った、攻撃だと思われます」


 邪気について、クロウリーが知らないだろう事に気付き、カリプソは短く、邪気の説明をする。


「身体にとって、いや……生物にとっては害となる気が、邪気です。奴は邪気と似て非なる、見た事が無い気を使っていました」


 カリプソは自ら受けた攻撃と、その後に目にした、惣左衛門がクロウリーや五人の魔法使い相手に使った攻撃を目にして、得られた情報からの推測を述べる。


「クロウリー様の魔法の発動を阻害したのは、その気を掌から放出した攻撃で、私や部下達を倒したのは、その気を使った点穴……指先による経穴に対する攻撃です」


 惣左衛門がクロウリーに掌から放った気が、邪気と似ている別の気であるのを、カリプソは視認していた。

 自分の経穴から経絡に、惣左衛門に流し込まれた気が、邪気と似てはいるのだが、邪気とは微妙に異なるのを、カリプソは感じ取っていた。


 五人の部下達を倒した気も、自分が倒された気と同じだろうと、カリプソは考えている。

 確かめられた訳ではないので、あくまでも推測ではあるのだが。


「――そして、奴が私達……魔法使いの、シドリによる防御を破り、ダメージを与えるのに成功した攻撃は、全てが点穴でした」


「張り手の様な技も、食らっていた様だが、あれはダメージがなかったのか?」


「あれは牽制だったのか、ダメージはありませんでした。ダメージを与え得るのは、あの邪気に似た気を使った、点穴だけでしょう」


 不敵な笑みを浮かべつつ、カリプソは続ける。


「――つまり、経穴を突けないようにする防御を行えば、魔法使いを倒し得る、奴の技は防げるという事です」


「だから、創造魔法の防御障壁を前に、奴は何も出来ない訳か?」


 クロウリーの問いに、カリプソは頷く。


「セフィルを纏うタイプの防御を破れる点穴で、あの邪気に似た気を経絡に流し、魔法使いにダメージを与える事と、あの気を放出し、僅かの間……魔法の発動を阻害する事。奴が使える、魔法使い相手に有効な攻撃手段は、この二つだけだと思われます」


 魔法が発動しなかった時の状況を思い出し、クロウリーはカリプソに問う。


「短時間だけだと、何故分かる?」


「気というものは、人の身体の外では、すぐに消えてしまうものだからですよ」


 クロウリーの近くで立ち止まると、カリプソは続ける。


「気を点穴により、相手の身体の中に流せば、暫く残り続けますが、放っただけなら、すぐに消えてしまうので、魔法の発動を阻害する効果も、すぐに消える筈です」


 カリプソは目線を、クロウリーの頭から足元まで動かし、惣左衛門が放った気が、まだ残っているかどうかを確認する。


「先程まで、クロウリー様の身体に纏わり付いていた気は、既に見当たりませんので、今なら魔法の発動を失敗する事は、無いでしょう」


 その言葉が事実かどうかを確かめる為、クロウリーは即座に、創造魔法の呪文の超高速詠唱を開始。

 すると、今回は何の問題も無く、足元には円形の創造魔法陣が出現し、胸元には金色に輝くセフィルの塊が発生する。


 この段階で、既に魔法は確実に発動しているのだが、クロウリーは念の為、セフィルの塊を創造魔法陣に投じる。

 すると、創造魔法陣の中から、銀色に輝く粒子群が噴出し、クロウリーの右前腕に装着される、鋼のセフィルで出来た円形の盾となり、創造魔法陣は消滅する。


 普通の盾ではなく、ランタンシールドと呼ばれる、丸い盾と篭手と剣が合体したかの様な、特殊な盾だ(篭手と一体化しているので、前腕に装着する形になる)。

 盾にランタンを仕込む事も出来るので、ランタンシールドと呼ばれている。


 ランタンシールドの円形の盾には、銀の星教団の象徴である、「銀の星」の紋章が刻まれている。

 二重の円の中に、七つの角がある星が描かれた紋章だ。


「魔法武器?」


 クロウリーが創造魔法で、ランタンシールドを作り出したのを目にして、惣左衛門は驚く。

 だが、纏魔が使える程に、武術に通じていないクロウリーが、魔法武器を作り出す訳は無かった。


「――の訳がないか。創造魔法で作られた、ただのランタンシールドだろう」


 惣左衛門は、そう判断する。

 優れた魔法使いであれば、鋼のセフィルなどの形状を整え、武器を作り出す事が出来る。


 そういった物は、単なるセフィル製の武器であり、魔法武器ではない。

 単に魔法で形作られているだけでなく、何等かの魔法的な能力を持つ武器だけが、魔法武器なのである。


 例えば、多くの魔法武器は属性を持ち、属性のセフィルによる攻撃や、魔甲による防御などが可能だ。

 これは、創造魔法で作り出された武器に、現象魔法の属性を操る能力が付加された存在だと、魔法の研究者達に推測されている。


 それ故、現象魔法を発動している時の様に、属性のセフィルを放って攻撃が出来るし、纏魔と似た魔甲により、身体を防御する事が出来るのである。

 同等の魔力を費やす場合、防御能力に関しては、魔甲は纏魔に劣るのだが、攻撃能力に関しては、魔法武器の方が遙かに高い。


 魔法武器には、属性を持たぬ物も存在する。

 それらは、魔法使いが手にするだけで、何等かの能力が強化されたりするので、創造魔法で作り出された武器に、能力魔法が実現する能力が付加された存在だと、推測されている。


 玄武やコロッサス・オブ・リバティなどの魔法駆動巨像も、魔法武器の一種である。

 魔法駆動巨像は、巨大な物体を自由自在に動かす能力魔法が、創造魔法と組み合わされた存在だと、推測されているが、空を飛べたり特殊な攻撃が行えたりと、更に複数の魔法が組み合わされている可能性もある。


 魔法使いは基本的に、一度に一つの魔法しか発動出来ないのだが、魔法武器は二つ以上の魔法の力を、持ち合わせている存在と言えなくもない。

 それ故、魔法武器は魔法戦闘において、とても強力な存在となる。




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