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072 索敵魔法も使わずに? そんな馬鹿な!

「索敵魔法も使わずに? そんな馬鹿な!」


 信じられないとばかりに、驚きの声を上げる惣左衛門は、会話に口を挟まずにいた、奉侍と新人の方を向き、確認を取る。


「本当なのか?」


 惣左衛門の問いに、まずは奉侍が答える。


「確かに、索敵魔法を使っていない様に見えました。慎重とは程遠い感じで、何の迷いも躊躇いも無く、走って行っちまいましたよ」


 続いて、神山DZPMを指差しつつ、新人が答える。


「あの……大きなチーズみたいな奴の所まで、走って行った後、穴の中に入って、姿を消しました。穴の中の様子を確認もしないで、入ってましたから、安全なのが分かり切ってるって感じに見えましたね」


 新人が指差した先には、体育館程の大きさがある、長方形の何かが存在した。

 サフランイエローであり、穴だらけの見た目は、新人が表現した通り、エメンタールと呼ばれる穴だらけのチーズに、良く似ていた。


 旧神山町の建物が、捻じ曲がったり逆さになったりして、並んでいる辺りよりも遠い場所に、巨大なエメンタール風の何かは存在する。

 その辺りは、索敵魔法を使用し、危険な物を探知しようとすれば、危険な物だらけの場所の筈なのだ。


「あそこまで、走り抜けたっていうのか、索敵魔法も無しに……」


 才蔵だけでなく、奉侍と新人からも、ほぼ同様の答が返って来た以上、カリプソが索敵魔法無しに、慎重さとは無縁な感じで、神山DZPMの中を走り去ったのは、事実なのだろうと、惣左衛門は判断する。

 何故、そんな真似がカリプソに出来たのか、惣左衛門は思案するが、答は出なかった。


 だが、カリプソが索敵魔法無しでも、平然と神山DZPM内で行動出来るという事実を知り、惣左衛門が抱き続けて来た謎が、解けようとしていた。


「――もしも、銀の星教団が神山DZPMの中で、まともに行動出来る、何等かの手段を持っているのだとしたら……神山DZPMを利用出来るって事になるな」


 魔法少女側には、手出しが出来ないのに、カリプソ……つまりは銀の星教団の上級幹部には、手出しが出来る場所。

 その様な場所があるのだとしたら、惣左衛門達……規格外犯罪対策局側の者達が、捜し求め続けていた存在の在り処として、最適と言える場所となる。


 その存在の在り処が何処なのか……という事こそ、惣左衛門が「抱き続けて来た謎」であった。

 そして、存在の在り処として、神山DZPMが最適と言える場所であるのを知った結果、ようやく謎は解け、惣左衛門は驚きの声を上げる。


「――銀の星教団の秘密のアジト、神山DZPMにありやがったのか!」


 惣左衛門達が探し続けていた存在とは、銀の星教団の秘密のアジトであった。

 ただのアジトではなく、惣左衛門が言うところの、「上級幹部にしか知らされていない、緊急非難用の秘密のアジト」という奴だ。


 魔法主義革命家団体が秘密のアジトを持つのは、当たり前の事である。

 大抵は複数の秘密のアジトを保有し、活動拠点としたり、逃亡時の潜伏先として利用している。


 そういったアジトは大抵、短期間しか使用されない。

 何故かといえば、長く同じ場所をアジトとして使用すると、近隣住民の通報などにより、あっさりとアジトの場所を、規格外犯罪対策局に把握され、魔法少女達の急襲を受けてしまうからだ。


 魔法主義革命家団体の魔法使い達は、人前に魔法使いとして姿を晒す際、シドリ製の着衣の顔認識妨害能力だけでなく、仮面やゴーグルなどを利用し、正体を擬装している場合が多い。

 だが、魔法少女達に注目され、何度も顔を合わせがちな、幹部級の魔法使い達は、魔法少女達が認識した、顔の記憶を利用した似顔絵などにより、正体がばれてしまう者が多いのだ(仮面やゴーグルも、戦闘時に外れる場合がある)。


 正体が判明した、幹部以上の魔法使いの多くは、人としての名前と顔が、規格外犯罪対策局により公開され、指名手配されている。

 それ故、同じアジトに長期間滞在すると、近隣住民に指名手配犯だと気付かれてしまう為、アジトは短期間で使い捨てるのが、基本なのである。


 ちなみに、アジトでの潜伏中、シドリ製の着衣による顔認識妨害能力を使い、近隣住民に対して正体を隠す事を、魔法使い達は可能な限り避ける。

 顔認識妨害能力は、連続で長時間使い続けると、能力が停止したり、長距離からでも探知される、強力なセフィル波動を発してしまう欠点がある。


 それ故、潜伏中に顔認識妨害能力を使用してしまうと、索敵魔法使用中の魔法少女や、規格外犯罪対策局が試験運用中の、セフィル波動感知システムにより、発見されてしまうリスクが高まる。

 この欠点がある為、潜伏中の魔法使いは顔認識妨害能力を、余り使用出来ないのだ(せいぜい短時間の外出時くらいしか、使用出来ない)。


 ちなみに、逃亡中や潜伏中の犯罪者が、捜査機関などの追跡から逃れようとする場合、整形手術で外見を変えるというのも、手段の一つではあるが、魔法主義者達は整形で外見を変えたりはしない。

 魔法主義者達からすれば、手術をしてまで外見を良くしようとする整形手術は、科学文明により欲望に蝕まれた人間が行う、退廃的行為の一つとして、否定すべき存在なので、整形手術を受ける事は無いのである。


 例外的なのが、暴風のルドラだ。ルドラは魔法使いになる直前、北村三蔵であった頃、整形手術により顔を変え、指先の指紋の全てを薬物で消した。

 魔法主義思想に洗脳される直前の話であり、そうしなければならない理由が、当時のルドラにはあったのだ。


 ルドラは整形で顔を変え、本名を捨てていた上、逮捕される直前、記憶にプロテクトをかけた。

 それ故、現時点では正体を、規格外犯罪対策局に対して隠し切れている。


 そんなルドラと、正体が判明したばかりのカリプソを除き、銀の星教団の幹部以上の魔法使い達の正体は、既に規格外犯罪対策局に把握されていた為、以前より本名と本物の顔が、真名と共に公開され、指名手配されている。

 ルドラは正体はばれていないのだが、整形後の顔と真名の方で、指名手配を受けている。





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