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065 鴛鴦刀の二刀流ねぇ! 若い割には、渋い趣味してるじゃん!

 カリプソが超高速詠唱によって、呪文の詠唱を終えると、足下に創造魔法陣が出現する。


「我がセフィルよ、雷神が鍛えし雷刃鴛鴦刀らいじんえんおうとうとなり、我に従え!」


 胸に輝くセフィルの塊を、カリプソは創造魔法陣に投入する。

 すると、創造魔法陣を突き破って、雷刃鴛鴦刀が現れる。


 見た目は刀では無く、両刃の剣なのだが、刀の名が付いているのは、雷刃鴛鴦刀が鴛鴦刀えんおうとうの一種だからである。

 鴛鴦の夫婦は仲が良い事から、対になる二本の刀を鴛鴦の雄雌に見立てた、鴛鴦刀と呼ばれる中国の武器があるのだ。


 一見、一本の剣に見える雷刃鴛鴦刀は、二本の刀が背で合わされた状態なのである。

 見た目通り、一本の剣として使う事も出来るが、二本の刀に分離させて使う方が、基本的な使用法と言えるだろう。


 本来の中国武器の鴛鴦刀は、刀身が短い短刀なのだが、カリプソが作り出した雷刃鴛鴦刀の刀身は、普通の刀と同等の長さ。

 それ故、刀の背を合わせ、一本の剣として扱うのが、本来の鴛鴦刀よりも、かなり難しい武器となっている。


 カリプソは、手にした雷刃鴛鴦刀を分離させ、二本の雷撃能力を持つ刀……雷刃鴛刀らいじんえんとう雷刃鴦刀らいじんおうとうとし、両手に握る。

 雷刃の名を関する刀の刃は、雷のセフィルを帯びて輝いている。


 こういった、雷刃鴛鴦刀や雷刃の薙刀……そして水妖鞭などの、魔法武器を造る為の魔法の呪文は、古文書や魔法書……魔法教典などから、多数発見されている。

 強力な武器なのだが、武術の素養の無い魔法使いや魔法少女にとっては、造るのも使いこなすのも不可能に近い。


 それ故、この類の魔法の武器を使う事が出来る、魔法使いや魔法少女は、限られた強者と言える。


「鴛鴦刀の二刀流ねぇ! 若い割には、渋い趣味してるじゃん!」


 雷刃鴛鴦刀を両手に持って、左前の半身の中段で構えているカリプソの姿を見て、柊は言い放つ。

 柊も雷刃の薙刀を手にして、右前の半身で身構えている。


 ハイレベルの魔法使いと魔法少女の戦いは、周囲に凄まじい被害を及ぼす場合がある。

 魔法を使えない者達を、攻撃対象から外しながら戦うのが、一応は魔法少女と魔法使いの戦いのマナー。


 だが、戦いが激しくなれば、そういったマナーを気遣う余裕が無くなったり、強力な魔法は制御し難い為、攻撃対象を制限し損なってしまう事も多い。

 それに、人ではなく物の場合は、かなり遠慮なく破壊してしまいがちな為、破壊した物の破片が飛び散り、人を傷付けてしまう場合もあるので、魔法少女と魔法使いの戦いの場の近くは、かなり危険なのだ。


 蒼天の二つ星作戦における、国会議事堂内での戦いの際は、多数の国会議員達を傷付けぬ様に、クロウリーも惣左衛門も、使用する魔法の威力を抑えていた。

 閉鎖されていた国会議事堂内で、レベルS以上の魔力を誇る両者が、魔法の威力を抑えずに戦えば、攻撃対象から非戦闘員達を外したところで、大量の死傷者が出るのは避けられない。


 両者共に、自分達が攻撃の威力を抑えずに戦えば、意図せずとも大量の非戦闘員の死傷者を出してしまう事を、理解していた。

 それ故、惣左衛門とクロウリーは暗黙の了解で、互いに威力を抑えていたのである。


 だが、この場は閉鎖されている訳ではなく、逃げようと思えば逃げられる状況なので、逃げずに危険な場に居残る者達を、柊とカリプソが傷付けぬ様に気遣い、威力を抑えて戦う可能性は低い。

 故に、封鎖は解いたものの、少し離れた場所から様子を見守っていた、警察や警備隊の人間達は、戦いの被害を受けない様に、遠くの方まで逃げ出し始める。


 両者は百メートル程の距離をおき、対峙している。

 刀と薙刀による対決にしては、距離が開き過ぎている様に見えるが、手で持って操るサイズの魔法武器の多くは、遠距離攻撃能力を持つので、両者は既に、互いの攻撃間合いに入っている。


 戦闘の口火を切ったのは、カリプソだった。

 左手の雷刃鴦刀を振るい、雷刃が纏っている雷を、柊に向けて放ったのだ。


 金色の雷が空気を震わせ、激しくスパークしながら、柊に向って一瞬で伸びる……が、柊は雷刃の薙刀を振るい、雷刃によって雷を弾き返す。

 弾かれた雷は周囲に飛び散り、川島街道の路面に、幾つかの穴を穿つ。


 カリプソは両手の刀を交互に振るい、雷を続け様に放ちながら、柊に向けて突進して行く。

 柊も雷刃の薙刀を振るい、雷を放って攻撃しながら、カリプソに向って突撃する。


 雷撃は早過ぎるので、見て避けるというよりは、攻撃のコースを先読みして回避したり、手にした魔法武器で弾く形で防ぐ場合が多い。

 常人離れした運動能力を誇る両者は、互いの雷による攻撃をかわし……弾きつつ、数秒足らずで間合いを詰め、接近戦の間合いに入ると、すぐさま激しく斬り付け合う。


 周囲に激しい金属音が響き渡り、雷が飛び散る。

 魔法の雷の飛沫は、周囲の路面や電柱、ガードレールなどを直撃し、片っ端から破壊してしまう。


 雷鳴響き渡る中、互角の剣戟が続くが、次第にカリプソが優勢になり始める。

 技量は互角どころか、柊の方が数段上回っている程なのだが、雷撃の出力において、カリプソが明らかに柊を上回っているのだ。


 両者の魔力は共にレベルAと、伯仲しているのだが、ブラック・メイデンの効果により、魔力を増幅している分、雷撃の威力はカリプソの方が高い。

 しかも、柊は群摩でのテロを鎮圧した後であり、魔力も体力も完全とは言い難い状態だった。


 強力な魔法戦闘能力を持つ者同士が、魔法戦闘を行えば、体力の消耗も激しい。

 雷撃の威力で押されるだけでなく、体力の限界を迎えてしまうのも、柊の方が先になってしまう。




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