表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/124

064 今のは威嚇だ! もし道を開けないなら、次の一撃で、あなた方を残滅する!

(警察官達には当たらない様に、気を付けないとな……)


 カリプソは、前方を塞ぐパトカーだけに狙いを定め、右手に持った水妖鞭を振るう。

 水のセフィルで出来た鞭は、一気に百五十メートル以上の長さに細長く伸び、パトカーの車体に巻き付く。


 カリプソが水妖鞭を引き絞ると、水の鞭が巻き付いた部分が輪切りにされ、パトカーは真っ二つに両断される。

 セフィル製の武器による攻撃を防ぐ事は、この世界の通常の物質では不可能なのだ。


 自分を狙うだろう銃弾の流れ弾が当たらないように、車から離れた上で、カリプソは水妖鞭を振るい続け、次々とパトカーを破壊する。

 警官達はカリプソに向けて拳銃を発射し、応戦するが、銃弾は水妖鞭とダークスーツに受け止められ、カリプソを傷つける事は出来ない。


 一分もかからずに、カリプソは前方を塞いでいたパトカーを、全て破壊し尽くしてしまう。

 拳銃による反撃も、カリプソには通用せず、警官達は為す術を失い、じりじりと後退し続ける。


「今のは威嚇だ! もし道を開けないなら、次の一撃で、あなた方を残滅する!」


 警察官達に、カリプソは鋭い口調で警告を発する。


「――て、撤退! 道を開けるんだ!」


 カリプソの目論見通り、威嚇攻撃は見事な効果を発揮し、指揮官は撤退の指示を出した。

 警察官達は蜘蛛の子を散らす様に、封鎖地点から撤退する。


(それで良い……)


 勝って当たり前の相手を、必要以上に傷つけるつもりが無いカリプソは、封鎖が解かれた事に、安堵する。

 カリプソは解除呪文を超高速詠唱して、水妖鞭を消滅させると、続け様に風の魔法の呪文を、超高速詠唱する。


 出現した現象魔法陣に、セフィルを叩き付けながら、カリプソは叫ぶ。


「セフィルよ、風と成りて、我に従え!」


 直後、現象魔法陣の上で、カリプソを中心として、空気の渦巻きが発生する。

 渦巻く風の風速は次第に強まっていき、カリプソの周囲は、台風の暴風域に入った時のような状態になる。セフィルに風の属性を与え終えた現象魔法陣は、砕け散って消滅する。


 カリプソは、人の姿が消えた前方に向けて、強烈な風のセフィルを放つ。

 魔法の暴風が、カリプソの前方にある障害物……パトカーの残骸や、封鎖用の障害物などを、薙ぎ払う様に吹き飛ばした。


「これで、車でも通れるかな」


 行く手を阻む障害物を、除き終えたカリプソは、車に戻ろうとする。

 しかし、車に戻る前に、カリプソは何者かに呼び止められる。先程まで、パトカーの残骸が並んでいた辺りの……空中から。


「おいおい、まだ車に戻るには早過ぎるぜ、仮面の魔女さんよぉ!」


 カリプソが空を見上げると、高さ五十メートル程の所に浮かんでいる、巫女姿の魔法少女の姿が、目に映る。


「鬼宮……柊!」


 何時の間にか姿を現した魔法少女の名を、カリプソは叫ぶ。


群摩ぐんまでのテロを片付けてから、大急ぎで飛んで来たんだが……。どうやら間に合った様だ。一刀斎は、その車の中か?」


 胸に十字の印が輝いている柊は、カリプソの車の進路を塞ぐかの様に、着地する。

 着地と同時に、魔法の解除コマンドを唱え、柊は胸の十字を消す。


「だったら、どうする?」


「取り戻すに決まってんだろ! ソウリエイション! 我がセフィルよ、雷刃らいじんの薙刀となり、我に従え!」


 柊の足下に創造魔法陣が現れ、柊のマジックオーナメントである開耶さくやの腕輪が、柊の魔力をセフィルヘと変換してチャージし、黄金色に輝く。

 右手にはめられている、小さな勾玉を繋ぎ合わせた形状の開耶の腕輪から、収束されたセフィルの光線が、創造魔法陣に照射される。


 創造魔法陣の中から、黒くて長い柄の先に、刃先が広く反り返った刀が付いている薙刀が、姿を現す。

 只の薙刀では無い。刃の部分が雷のセフィルを纏っている、雷属性の魔法武器……雷刃の薙刀である。


 槍と大刀の機能を合わせ持つかの様な武器であり、雷のセフィルによる攻撃も可能な、この雷刃の薙刀を、柊は近接戦闘用の武器として愛用している。

 榊同様に、鬼伝大蛇流の使い手である柊は、本来は鞭が最も得意な武器なのだが、どういう訳だか鞭の系統の魔法武器が、開耶の腕輪との相性が悪く、鞭の魔法武器が使えない。


 榊は鞭程ではないが、槍や薙刀などの長柄の武器も、割と得意としていた。

 それ故、規格外犯罪対策局が解析を終えていた、魔法武器を作り出す魔法の中から、使用する魔法武器として、この雷刃の薙刀を選んだのだった。


 柊を見据えながら、カリプソは言い放つ。


「日本ナンバー2の魔法少女、鬼宮柊に雷刃の薙刀か……。相手にとって、不足は無い!」


 武術の実力だけでなく、魔法少女としての戦闘能力に限れば、柊は榊を数段上回る。

 柊は魔法少女の中でも、惣左衛門に次ぐレベルの実力者でもある。


 魔法戦闘能力値はともかく、戦闘センスだけなら、教主であるクロウリーすら上回ると、惣左衛門が評したカリプソにとって、柊は言葉通り「不足は無い」相手と言える。

 ちなみに、現時点での魔法戦闘能力値自体は、柊の方がカリプソより高いのだが、カリプソは飛行能力のせいで、大きく数値を減らされている様なものなので、地上戦となれば、どちらが勝つのかは分からない。


 空中戦となれば、柊が勝つだろうが、今回は地上にいる一刀斎の争奪戦なので、必然的に地上戦となってしまう。


(水妖鞭は、雷撃能力との相性が悪過ぎるから、使えないな)


 水の属性のセフィルは、雷……電気の属性のセフィルに電気分解され、打ち負けてしまう場合があり、不利なのである。

 それ故、カリプソは水妖鞭を消滅させ、他の愛用している魔法武器を、創造魔法で造り出す事にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ