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060 ――分かった、この場は榊……お前に甘えさせて貰おう!

 そんな榊の申し出は、惣左衛門には有り難いのだが、安易に受け入れる訳にはいかない。

 蓬莱仙幇とは違い、惣左衛門は魔法教典を破壊して、世界を照らす自由団を壊滅させた訳ではない。


 当然、捕えられた仲間を取り戻す為、世界を照らす自由団の仲間が、襲撃して来る可能性がある。

 この場を自分が離れたら、榊一人で襲撃者に対処しなければならなくなってしまう。


 世界を照らす自由団に追い込まれた、榊の姿を見た直後の惣左衛門は、護送班が到着する前に、榊を残して彩多摩県に向かうのは、不安だったのである。


「そうさせて貰えると有難いんだが、こいつらの仲間が、襲って来る可能性もあるから、お前を一人にする訳にはいかないだろ!」


 惣左衛門の言葉を聞いて、榊は一瞬だけ、嬉しそうな表情を浮かべるが、すぐに真顔に戻り、ポケットから取り出した、真っ白な専用無線機を弄り始める。

 携帯電話機能の方で、素早くメールのやり取りをしてから、口を開く。


「――円城寺えんじょうじかのうの二人が、ヘリを置いて先行してくれるそうですから、あと五分もかからずに辿り着くでしょう!」


 榊の言う円城寺と叶とは、惣左衛門達の元に急行中の護送班に参加している、コンビで行動する場合が多い、レベルAの魔力を持ち纏魔も使える、強力な魔法少女の二人組である。

 コンビで行動する場合が多いのは、この二人が力を合わせなければ発動出来ない、合体魔法と呼ばれる、特殊魔法の使い手である為。


 円城寺と叶の二人が使える合体魔法は、護送任務に向いている為、テロ鎮圧任務よりは、護送任務を任されている場合が多い。

 そして、二人は護送任務の際、大型輸送ヘリコプターと共に飛行し、移動するのが普通なのである(ヘリで運べない人数の場合は、車両や船舶の場合もある)。


 だが、円城寺と叶は飛行魔法の性能が高く、飛行速度は大型輸送ヘリコプターの倍近いので、ヘリと同行せずに、自分達だけ先行するなら、予定より早く辿り着ける(ヘリが時速二百六十キロ、円城寺と叶の飛行速度は時速五百キロ)。

 本来なら護送班が到着するのは、十分後の筈だったのだが、円城寺と叶が最高速度で飛行して先行すれば、五分で到着出来る訳だ。


 その事に気付いたので、榊は付き合いのある円城寺と叶に、メールで連絡を取り、ヘリを置いて先行する様に頼んだのである。

 円城寺と叶は、すぐさま「五分もあれば辿り着く」と、快諾するメールを送って寄越してくれた。


「円城寺と叶が来るまでの、たった五分程度、この場でこいつらを奪われぬ様にするだけなら、私一人でも問題は有りません!」


 自信有り気な口調で、榊は断言する。


「襲撃されたとしても、防御に専念すれば、その程度の時間は、余裕で稼いでみせますよ!」


 創造魔法を駆使して、防御障壁などを作り、徹底して防御を固めた榊は、そう簡単には魔法使い達に崩されはしない。

 榊の言葉は、決してはったりではないのだ。


 先程は、守らなければならない対象が、榊に作り出せる防御障壁では、覆い尽くせない程に大きな、海濤原子力発電所であった為、防御に専念する訳にはいかなかった。

 だが、今回は十五人の魔法使い達を、守り通せば良いだけなので、榊が作り出せる防御障壁なら、余裕で守り通す事が可能なのである。


「惣さんは忘れてるのかも知れませんが、私は一応……日本の魔法少女のナンバー3なんですよ! もっと信頼してくれて良いんです!」


 榊の言う通り、榊は日本の魔法少女の中では、ナンバー3として扱われている。

 突出したナンバー1の惣左衛門、惣左衛門には大きく劣るがナンバー2の柊に続く、魔法戦闘能力値を誇るのが、榊なのだ(ちなみに牡丹がナンバー4)。


「この程度の任務でしたら、私だけで十分ですから、惣さんは一刀斎君を追いかけて下さい!」


 セフィロトの首輪を指先で弄りつつ、少しだけ考えてから、惣左衛門は決意する。


「――分かった、この場は榊……お前に甘えさせて貰おう!」


 惣左衛門の言葉に、榊は力強く頷く。


「追跡中の警備隊連中の信号を頼りに、追いかけてみるよ!」


 そう榊に告げた後、能力魔法を発動させて、飛行能力を得た惣左衛門は、大空に舞い上がると、彩多摩県がある西の空に向かって、飛び去って行く。


「何時もより遅い……大丈夫かな、惣さん?」


 飛び去る惣左衛門の姿を目で追い、榊は不安げに呟く。

 惣左衛門の飛行速度が、普段よりも遅いのに、榊は気付いたのだ。


 息子である一刀斎の危機なのだから、出し得る最高速度で飛びたい筈なのに、惣左衛門の飛行速度が、本来の最高速度よりも遅いのは、魔力を消耗し過ぎてしまったから。

 膨大な魔力を保有する惣左衛門であっても、今日の連戦と魔力の消耗度合いは異常であり、超音速を出せる程、魔力が回復し切っていないのだ。


 そんな惣左衛門の状態を、榊は察したので、不安を覚えたのである。

 榊は無事を祈りながら、空の彼方に飛び去る惣左衛門を見送る。



    ×    ×    ×




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