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054 うわ、惣さん……さすがにそれは、えげつない!

「うわ、惣さん……さすがにそれは、えげつない!」


 飛行魔法を発動し、空中から鳳凰とコロッサス・オブ・リバティの戦いを見守っていた榊は、首筋に寒気を覚えながら、声を上げる。

 人型の魔法駆動巨像相手の戦いなので、対人では決して使わない禁じ手を、惣左衛門は使っている。


 そんな「えげつない」攻撃を、次々と繰り出す惣左衛門の戦いを目にしたので、榊は寒気を覚えたのだ。

 背筋だけではなく、コロッサス・オブ・リバティが踏み抜かれた首の辺りまでも。


 全身の関節部分を圧し折られ、砕かれた挙句、首を圧し折られてしまい、コロッサス・オブ・リバティが受けた損傷は限界を突破。

 魔法が強制解除に追い込まれ、コロッサス・オブ・リバティの全身は崩壊を開始。


 鋼のセフィルは分解し、金色の光を放つセフィルの粒子群へと変化。

 膨大なセフィルの粒子群は、大気に溶け込む様に消滅し、崩壊を始めてから十秒もかからず、コロッサス・オブ・リバティの巨体は、完全に消滅してしまう。


 頭部の操縦室に乗り込んでいたレキウユン達は、松林に放り出される。

 惣左衛門は頭部は狙わなかったので、レキウユン達は無傷といえる状態だ。


 無論、コロッサス・オブ・リバティの創造に、かなりの魔力を使ったので、魔力を消耗してはいるが、十分に戦闘は可能な状態。

 しかも、レキウユンが率いる特殊部隊は、全員が何等かの武術や格闘技に通じているので、纏魔や魔法武器による戦闘が可能。


 金色に光り輝くセフィルの粒子群と化し、崩壊と消滅を始めた鳳凰を見上げながら、レキウユンは口惜しげに言葉を吐き捨てる。


「――ここまでの化物だとは……」


 役目を果たした鳳凰を、惣左衛門は創造魔法を解除し、消滅させたのだ。

 コロッサス・オブ・リバティを倒した以上、魔力消費が激しい鳳凰は、惣左衛門としても使用を控えたかったのである。


「レキウユン様、御指示を!」


 部下の魔法使いに指示を仰がれ、レキウユンは即座に指示を出す。


「撤退だ! 固まらずに散開して逃げろ!」


 鳳凰であった、大量の金色に輝くセフィルが、大気に溶けている方向に向かって駆け出しながら、レキウユンは言葉を続ける。


「鬼宮惣左衛門は俺が抑えて時間を稼ぐ! その間に、奴の索敵魔法の索敵範囲……半径十キロ圏内から出るんだ!」


 コロッサス・オブ・リバティを失った以上、海濤原子力発電所へのテロの完遂は不可能なので、撤退は当然。

 地上接近戦に向かない筈の鳳凰を相手に、自ら操るコロッサス・オブ・リバティが、手も足も出なかったので、レキウユンは自分達と惣左衛門の力の差を、嫌という程に思い知ってしまった。


 自分達が集団でかかろうが、惣左衛門相手には決して勝てない。

 勝てないなら逃げるしかないし、逃げるなら散開して、別々の方向に逃げた方が、惣左衛門の追撃から逃れ易いだろうと考えた上での、レキウユンの指示だった。


 ただし、超音速飛行能力だけでなく、索敵範囲の広い索敵能力を持つ惣左衛門からは、逃げるだけでも困難。

 そこで、レキウユンは自らが犠牲となり、惣左衛門の索敵範囲から、部下達が逃れる為の時間を、稼ごうとしているのである。


 惣左衛門の索敵範囲が、半径十キロ程度であるのは、公表こそされていないが、繰り返された過去の戦いの分析から、魔法主義革命家団体側にも知られている。

 榊も惣左衛門に近い索敵範囲の索敵魔法を使えるが、どちらにせよ魔法少女から十キロ以上離れる事が出来れば、逃げ切れる可能性が高いと言えるのだ。


「レキウユン様! 我々も残って戦います!」


 そういったたぐいの主張をする部下達に対し、レキウユンは強い口調で命じる。


「駄目だ! 俺達全員でかかっても、勝てる相手じゃない! 全滅を避ける為にも、この場は逃げろ!」


 レキウユンの言葉から、強固な意志を感じ取り、部下達は残って戦うのを諦め、命令に従い逃げる決意を固める。

 走り去るレキウユンの背に一例してから、部下達は飛行魔法を発動。


 命令通りに次々と別々の方向の空に向かって、部下達は飛び立ち始める。

 四方八方に飛び去ろうとする魔法使い達であったが、西側に向かって飛んだ魔法使いの前には、別の魔法少女……榊がいた。


 飛行魔法を発動したまま空中にいた榊は、コロッサス・オブ・リバティを失っても、海濤原子力発電所へのテロが継続された場合に備え、海濤原子力発電所の方に移動していたのだ。

 そこに、魔法使いが逃亡の為に飛んで来たので、両者が遭遇したのだった。


「逃がさないよ!」


 ナースファッションの榊と、ミリタリーファッションの若い男性の魔法使いが、空中で激しく打ち合い始める。

 どちらもレベルAの魔力保有者なので、アーマーアビリティを駆使した空中戦を行えるのだ。


 十数発の打ち合いは、鬼伝大蛇きでんおろち流の古武術に熟達した榊が、終始優勢。

 最終的には顎への掌底打ちが決り、榊は若い男性の魔法使いを、気絶に追い込んだ。


 魔法使いが身に纏う戦闘服は、魔法以外では事実上ダメージを負わない為、高所から墜落しても、死なずに済む確率が高い。

 それでも、万が一という事もあるので、榊は若い男性の魔法使いの首根っこを掴んだまま、高度百メートル辺りから急降下。


 若い男性の魔法使いを、死なない様に地面に下ろしてから、榊は空を見上げて、逃亡する魔法使い達の姿を探す。

 そして、西北西に向かって飛んでいる魔法使いの姿を、榊は視界に捉えると、空に舞って追撃を始める。




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