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053 ボクシングにムエタイ……サバットと、色々混ざってんな、軍隊格闘術ってとこか

 日本で活動している魔法主義革命家であり、日本語も母国語レベルで堪能なのだが、レキウユンはアメリカ人だ。

 元々は在日米軍の第三十一海兵遠征部隊に所属する、海兵隊員であった。


 配属先であった澳縄県おきなわけんキャンプ・ハンセンが、世界を照らす自由団の襲撃を受けた際、教主により教化され、レベルAの魔力を持っていた為、世界を照らす自由団の魔法使いとなった。

 レキウユンは真名であり、本名はザック・オーバーオール、海兵隊を抜ける前の階級は一等軍曹。


 海兵隊マーシャルアーツプログラム(MCMAP)という軍隊格闘術の黒帯ブラックベルトであった為、魔法使いとなったレキウユンは、纏魔や魔法武器を使用出来る、強力な魔法使いとなった。

 レベルAの強力な魔力と、高度な軍隊格闘術を併せ持つレキウユンは、世界を照らす自由団の中で頭角を現し、精鋭を集めた特殊部隊の隊長を任される、幹部の一人となっている。


 精鋭といえる十四人の魔法使いを集めた、特殊部隊と共に作り出す、魔法駆動巨像……コロッサス・オブ・リバティを、軍隊格闘技の高い実力を持つ自分が操るのなら、幾ら相手が鳳凰であれ、地上での近接戦闘では勝てる筈だと、レキウユンは考えた。

 故に、テロ計画を中止して逃亡を計らず、レキウユンは喜びの声を上げ、戦う道を選んだのである。


 コロッサス・オブ・リバティは灯明と銘板を捨てると、巨体に似合わぬ鋭い動きで、正面に立ち塞がる鳳凰に、パンチとキックを繰り出し始める。

 パンチはボクシング風、キックはムエタイ風のを得意とする、レキウユンの強い癖が出ている。


 地上戦向きでは無いので、動かし易くは無いのだが、それでも惣左衛門は鳳凰を巧みに操り、巨体に似合わぬ軽々としたフットワークで、パンチとキックを避ける。


(ボクシングにムエタイ……サバットと、色々混ざってんな、軍隊格闘術ってとこか)


 相手の動きから、惣左衛門は大雑把に、レキウユンの武術や格闘技のバックボーンを読み取る。

 立った状態での打撃戦には有効な筈の、灯明と銘板を捨てた事から、立ち技の打撃は本命の攻撃ではないと、敵の狙いを推測。


(だとしたら、打撃は牽制、本命はマウントからの打撃か寝技辺りか? タックルか足払いで、倒しに来る可能性が高いな)


 惣左衛門の読み通り、コロッサス・オブ・リバティはパンチとキックによる牽制を繰り返してから、いきなり体勢を下げ、鳳凰に向かって勢い良く、タックルを仕掛けて来る。

 魔法使い達が乗り込んでいるが故に、人体と同様に弱点の塊となっている頭部のガードを、両腕で固めた上で。


 軍隊格闘術でも良く使われるが、アルティメット系のルールを採用した格闘技の試合では、かなり有り勝ちな戦法である。

 格闘家時代に何度も経験済みの戦法なので、惣左衛門は焦りもせず、冷静に対処を始める。


 両腕のガードは、カウンター気味の打撃を頭部に食らい、一撃で沈められるリスクを軽減出来るが、タックルする側の視界を狭める欠点がある。

 惣左衛門は両腕のガードの位置から、両腕に隠されて死角となる位置を瞬時に判断し、動き難い鳳凰を素早く移動させる。


 レキウユンからすると、コロッサス・オブ・リバティの左腕の陰に、鳳凰が入った状態になる。

 故に、レキウユンは一瞬、鳳凰の動きを見失ってしまう。


 その一瞬で、惣左衛門は鳳凰を操り、右脚の中段の回し蹴りを繰り出させる。

 タックルで飛び込んで来たせいで、短い鳳凰の脚によるローキックでも、コロッサス・オブ・リバティに届く。


 鳳凰の回し蹴りが蹴ったのは、コロッサス・オブ・リバティの左足の膝関節。

 膝関節の外側から内側に向け、惣左衛門は強烈な回し蹴りを、鳳凰の右脚で食らわせたのだ。


 人体には様々な急所があるのだが、関節部分は大抵急所と言える。

 筋肉の鎧で保護し難い部分である上、可動しない方向に強い力をかけると、あっさりと圧し折られる。


 関節技は、そういった関節部分の弱さを利用した技といえる。

 この関節部分の弱さは、打撃技でも利用可能であり、稼働しない方向に向けて、強力な打撃技で強い衝撃を与えると、関節部分は圧し折り易い。


 コロッサス・オブ・リバティは、自由の女神とそっくりな見た目の人型であり、関節部分の構造も、人体を模した構造になっている。

 こういった人型の魔法駆動巨像は、人体と同様の弱点を抱えている場合が多く、コロッサス・オブ・リバティの関節部分は、人体同様の弱点なのである。


 惣左衛門は回し蹴りで、その弱点を狙ったのだ。

 膝関節の弱点を狙う場合、普通はまさかりで木の幹をるかの様な、鬼伝流ではまさかりりと呼ばれるローキックで、惣左衛門は攻める。


 だが、今回はコロッサス・オブ・リバティと鳳凰の大きさに、差が有り過ぎる上、鳳凰は脚が短いので、中段の回し蹴りで狙ったのだ。

 そして、死角に入った上での、鳳凰の中段回し蹴りは、見事にコロッサス・オブ・リバティの左膝関節部分を捉えた。


 大きな鐘が突かれたかの様な音と、自動車が衝突したかの様な爆発音が、ほぼ同時に響き渡り、コロッサス・オブ・リバティの左脚が、関節部分で内側に圧し折れる。

 その結果、コロッサス・オブ・リバティは左前方に前のめりになり、地震の様な地響きを発生させながら、防風林に転倒。


 レキウユン達は操縦室内で悲鳴を上げるが、転倒時の轟音に、悲鳴は掻き消されてしまう。

 ちなみに、魔法駆動巨像の操縦室内は、特殊な結界に守られている為、魔法使い達が身体を傷付けられる事は滅多に無いので、悲鳴は上げれども、レキウユン達は無事である。


 惣左衛門は即座に、うつ伏せに倒れたコロッサス・オブ・リバティの、背中側から狙える急所に向けて、連続で蹴りを放つ。

 四肢の関節部分を蹴りで圧し折り、行動不能に追い込んだ上で、最後に体重をかけた右足で、うなじを踏み……首を圧し折る。




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