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048 常勝真人を倒し、魔法教典の蓬莱玄経を破壊した。ガス・ホライズンは守れたし、蓬莱仙幇は、もう終わりだ

「――ま、こいつらの服には、救命胴衣機能が付いてるみたいだから、大丈夫だろ」


 悲鳴が響いて来る、あちこちの方向に目をやりながら、惣左衛門は呟く。

 多数の魔法使い達を、空中で叩き落していた時、海に落ちた魔法使い達の着衣が膨らみ、海に浮いていたのを、惣左衛門は視認していた。


 魔法少女には、魔法主義革命家団体の魔法使いを殺害する事が、法的に許されている。

 許されてはいるのだが、望まないのに魔法教典に洗脳された結果、戦いに参加する羽目になった者達も多いだろうから、惣左衛門に限らず魔法少女の多くは、殺さずに済む場合は殺さないのが普通なのである。


 無論、完全に不殺という訳にはいかず、たまに死者を出してしまうのが、現実ではあるのだが。


「さーて、結構な数……海に落とした気がするけど、どうやって助けるかねぇ?」


 惣左衛門が自問した直後、ポケットの中の無線機が、黒電話のベル風の、やかましい着信音を響かせ始める。

 ポケットから無線機を取り出すと、惣左衛門は携帯電話の様に話し始める。


「――鬼宮惣左衛門だけど?」


 ちなみに、フルネームを名乗るのは、鬼宮姓の魔法少女が四人いるので、間違えられない為にである。

 そして、通信相手は当然の様に、規格外犯罪対策局のIC。実は少し前から、惣左衛門を呼び出していたのだが、電波障害のせいで通じていなかったのだ。


 惣左衛門が蓬莱玄経を破壊した結果、この海域での異常な規模の魔法使用状態が終わり、電波障害が収まったので、ようやく惣左衛門の無線機と連絡が取れたのだ。

 通信の用件は、現在の状況と、蓬莱仙幇を倒し、ガス・ホライズンを守れたかどうかの確認であった。


「常勝真人を倒し、魔法教典の蓬莱玄経を破壊した。ガス・ホライズンは守れたし、蓬莱仙幇は、もう終わりだ」


 惣左衛門は簡潔に、ICのオペレーターからの問いに答えた上で、話を続ける。


「これから、蓬莱仙幇の魔法使いだった連中の、救助を始める。かなりの数……海に落しちまったんでな、結構時間がかかるかもしれない」


 だが、オペレーターは惣左衛門に、救助は牡丹達に任せた上で、すぐに別のテロの鎮圧に向かうよう、指示を出す。

 救援だけであれば、ガス・ホライズンに配備されていた三人の魔法少女だけで可能なので、惣左衛門には魔法主義革命家団体との戦闘に専念して欲しいというのが、規格外犯罪対策局の判断なのだ。


 次に鎮圧する様に指示されたのは、茨木いばらき県で起こったテロ事件。

 現在、榊が一人で魔法主義革命家団体と戦闘中なのだが、旗色が悪いらしく、ICは榊から応援要請を受けていたのである。


 そういった指示を、惣左衛門が無線機で受けている頃、ガス・ホライズンの後ろの方から、無線機を手にした一人の魔法少女が、飛行魔法で飛来して来た。

 カウガールファッションの、ティナであった。


 蓬莱玄経が破壊されたので、蓬莱仙幇の全魔法使いは、魔力が解放状態ではなくなり、魔法を使う力を失った。

 当然、すぐにガス・ホライズン後部の玄武は消滅、魔法使い達は海に投げ出された。


 牡丹と楪、そしてティナの三人は戦闘を中止し、魔法使い達の救助を始める羽目になった。

 そして、救助を始めた直後、規格外犯罪対策局のICから無線連絡を受けたティナは、現状を報告。


 すると、惣左衛門に代わり、ガス・ホライズン前方付近での、魔法使い達の救助を担当する様に、ティナは指示を受けたのだ。

 それ故、牡丹と楪から離れ、ティナは飛行魔法で、惣左衛門の元に飛んで来たのである。


 惣左衛門の近くの甲板に着地したティナは、明るい口調で惣左衛門に声をかける。


「救助はウチら三人に任せて、惣左衛門さんは茨木いばらきに向かって、ピンチの榊さんを助けるっスよ!」


 ティナは規格外犯罪対策局のICから、惣左衛門の次なる派遣先である、茨木の大雑把な状況も、無線通信で知らされていたのだ。

 惣左衛門としても、親しい身内といえる榊を、助けに行きたかったので、ティナ達に後を任せられるなら、有り難い場面といえた。


「あ、それと……魔法教典の残骸を引き取る様に、指示を受けたっス!」


 その指示は惣左衛門も、無線で受けていたので、ポケットに仕舞っておいた蓬莱玄経を、袋ごとティナに手渡す。

 ポケットの中の物が多いと、多少なりと動き難くなるので、蓬莱玄経を持ち歩かずに済むのは、惣左衛門にとっては有り難かった。


 惣左衛門は能力魔法陣を出現させ、飛行魔法を発動すると、ティナの肩を軽く叩きつつ、声をかける。


「――じゃあ、後は任せる。牡丹婆……姉さんにも、宜しく伝えておいてくれ!」


「了解っス!」


 ティナの返事を聞いた惣左衛門は、ロケットの様に一気に高度五百メートル程の高さまで舞い上がると、GPSと連動したマップ機能がある無線機で、目標とする方向を確認。

 無線機をポケットに仕舞うと、水平飛行を開始。


 目指すのは百七十キロ以上離れた、茨木県の海の傍。

 北北西に向かって、惣左衛門はジェット機の様な速さで、青空を飛び去って行く。


 惣左衛門が浦賀水道を後にした、この時点では、まだ一刀斎は藤那……カリプソに、拉致されてはいなかった。



    ×    ×    ×




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