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043 ――こっちも、さっさと玄武に辿り着かないとな

「――こっちも、さっさと玄武に辿り着かないとな」


 かわしても逃げても追い迫って来る、多数の武器をかわしつつ、牡丹達の様子を空から視認した惣左衛門は、独白を続ける。


「厄介なのは、空にいた連中じゃなくて、玄武の方にいる連中だろうし」


 惣左衛門は飛行高度を落としつつ、ガス・ホライズンの前方にいる玄武から見て、ガス・ホライズンの影となる辺りに、身を隠す。

 丁度、ガスホライズンと後方にいる玄武の間辺りに入り、ガス・ホライズンの船尾に貼り付く様に、空中で停止したのだ。


 すると、正確に惣左衛門を追いかけて来ていた多数の武器が、目標である惣左衛門を見失ったかの様に、空中で止まってしまう。

 そして、追跡を諦めたらしい多数の武器は、ガス・ホライズンの前方にある玄武に向かって、一斉に飛び去って行く。


「やはり、自動追尾ではなかったか」


 玄武に向かって飛び去って行く、多数の武器を見上げながら、惣左衛門は呟く。

 これまで惣左衛門は、迫り来る多数の武器から、ただ空を逃げ回っている風な動きを見せていたのだが、そうでは無かった。


 空を飛び回りながらも、様々な動きを試し、その動きに対する、追いかけて来る武器の動きを、確かめていたのだ。

 その途中、一度……前方の玄武から見て、ガス・ホライズンのブリッジの陰に入った時、追跡して来る武器の動きが乱れたのに、惣左衛門は気付いた。


 故に、追いかけて来る武器は、自分を自動追尾している訳では無く、ガス・ホライズンの前方にいる魔法使いが、空を飛ぶ自分の動きを目で追いながら、多数の武器を操作して追わせているのではないかと、惣左衛門は考えた。

 そこで、ガス・ホライズンの前方の玄武から見て、完全に死角となる、ガス・ホライズンの船尾の後ろに、惣左衛門は隠れてみたのである。


 結果、追いかけて来ていた多数の武器が、迷走を始めたのを目にして、惣左衛門は自分の考えの正しさを、確信した。


「――たぶん魔法使いは玄武の上から動かず、空中戦にはならないだろう」


 自分を追撃出来なくなった多数の武器を、玄武の方……手元に戻したのは、飛行魔法で空中戦を行うよりも、多数の魔法武器を作り出して操り、戦うのを得意とする魔法使いであるからだろうと、惣左衛門は推測。

 空中に自分がいたとしても、魔法使いが玄武から飛行魔法で飛び立ち、空中戦になる可能性は低いと、惣左衛門は判断。


「だったら、飛んで行くよりも、纏魔状態になった上で、船の上を駆けて玄武を目指した方が、良さそうだな」


 飛行魔法から現象魔法による纏魔に切り替える際、惣左衛門といえど隙は出来る。

 どうせ足場のある状態での戦いになるのなら、隙を作らずに済む様に、身を隠している状態で纏魔に切り替えておいた方が良いと、惣左衛門は判断したのだ。


(飛ぶ魔法武器の属性は、大抵は風。こっちも風なら相性は五分だし、目立たないから……風にしとくかねぇ)


 魔法武器は大抵、属性を持っていて、属性の間には、有利不利が存在する場合がある。

 風属性相手には、雷属性が有利なのだが、雷のセフィルによる纏魔は目立つので、敵に見付からずに玄武まで移動したい現状、惣左衛門は使用を避けた。


 纏うセフィルを決めた惣左衛門は、ガス・ホライズンの後部甲板に乗ると、飛行魔法を解除する。

 そして、現象魔法を発動すると、風のセフィルを纏った上で、ガス・ホライズンの甲板の上を、惣左衛門は駆け出す。


 甲板の上にはガスタンクなど、身を隠す物には事欠かない。

 一応、様々な甲板上の設備に身を隠しつつ、惣左衛門は素早い動きで甲板の上を走り抜け、あっという間にガス・ホライズンの舳先へさきに辿り着く。


 しゃがんで舳先に身を隠し、惣左衛門は玄武の様子を探る。

 玄武の周囲には、海に落ちた仲間達を救助すべく、大きな筋斗雲を作り出した魔法使い達が、海上に低空飛行で乗り出していた。


 甲羅の上にいるのは、二十代後半と思われる、ただ一人の魔法使いのみ。

 功夫服と道袍を組み合わせた感じの戦闘服に、身を包んでいる男だ。


 道袍の上に羽織る上着を、功夫服の上から羽織っているので、功夫服と道袍を組み合わせた感じに見えるのである。

 白と黒に塗り分けられた、円形の図形……仙術などの中国の術において、シンボルとして使われる事も多い太極図が、額の辺りに刺繍してある黒い頭巾を、男はかぶっていた。


 多数の槍や大刀などの長柄の武器が、男を守る様に、周囲の空中に浮いている。

 その事から、多数の武器を操っている魔法使いが、この鍛えられた身体を持つ、長身の優男であるのは明らかだ。


 先程、玄武に向かって多数の武器が飛び去ったのは、惣左衛門を見失った男が、武器を自分の周囲に戻したからだった。

 単に戻しただけでなく、魔力……セフィルを、全ての魔法武器にチャージし、男は完全な状態で待ち構えていた。


 通常の魔法は、魔法陣に最初に投じたセフィルのみで効果を発揮し、発動中にセフィルを消耗した場合、失われた分のセフィルをチャージする事は出来ない。

 だが、一部に例外といえる魔法が存在し、失われたセフィルを再チャージ出来るものがある。


 この男が使う、多数の武器を作り出す魔法は、その例外の一つなのだ。

 ちなみに、再チャージを行うと、破壊された武器が復活したり、空を飛ぶ為に消費したセフィルが、補充されたりする。




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