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040 これだけの数を一撃とか、相変わらず無茶苦茶っスね

 纏魔の様に属性を持たないし、防御能力も打撃攻撃能力も纏魔には劣る為、上級魔法使いが作り出す、防御障壁を破る程の力は無い。

 だが、中級や下級の魔法使いが作り出す防御障壁や、天遁剣法の使い手のアーマーアビリティによる防御であれば、惣左衛門はアーマーアビリティを使った打撃だけでも打ち破り、倒す事が出来る。


 空中にいる蓬莱仙幇の魔法使い達の殆どは、中級と下級の魔法使い。

 故に、アーマーアビリティと武術の打撃技の組み合わせにより、惣左衛門は凄まじい勢いで、倒してしまえるのである。


 高速移動しながら、打撃戦を行える程の、動体視力や反射神経、体術のスキルを持ち合わせなければ、不可能な戦い方なので、アーマーアビリティを持つ飛行魔法の持ち主の誰もが、この様な空中戦を行える訳ではない。

 レベルA以上の魔力を保有する、魔法少女や魔法使いの中で、纏魔を使える程度に、体術の能力が高い者であれば、同種の戦闘法は可能なので、惣左衛門唯一の戦い方という訳でもないのだが。


 戦場に姿を現してから、ほんの一分程度の間に、惣左衛門は数十人の魔法使い達を倒し、撃墜してしまう。

 だが、空中にいる蓬莱仙幇の魔法使い達は、まだ殆どが健在だ。


「格闘戦だけで片付けるには、数が多過ぎるか。このままだと片付け終わる前に、一刻不落が消えちまうだろうし」


 惣左衛門は急降下すると、一刻不落の上に降り立つ(一刻不落は透明なカプセルの様なものなので、上に乗れる)。

 丁度、ブリッジの屋根の上に乗っている、牡丹達から十メートル程上の辺りである。


「婆さん! これ……あとどれくらい持つ?」


 惣左衛門は一刻不落を指差しながら、下にいる牡丹に訊ねる。


「一分弱だよ! あと、婆さん言うな!」


 牡丹の返答だけを聞いて、文句の方を聞き流しながら、惣左衛門は空を見回し、魔法使い達の位置と数を把握する。

 惣左衛門の急襲により、数十人もの仲間達を、あっという間に倒されてしまった魔法使い達は、混乱状態に陥った。


 そのせいで、一時的に攻撃が止まっていたが、混乱は次第に収まりつつある。

 程無く惣左衛門に対する攻撃は、再開されるだろう。


「カリース!」


 惣左衛門は魔法の解除コマンドに続き、即座に現象魔法の発動コマンドを宣言。


「ゲフェクト! 我がセフィルよ、雷となりて、我が敵共を死なない程度に撃ち落せ!」


 星型の現象魔法陣が、惣左衛門の足元に現れ、セフィルがチャージされたセフィロトの首輪から、セフィルの光線が現象魔法陣に照射される。

 衆議院本会議場の時よりも、遙かにセフィルの光線の光が強いのは、それだけ大量のセフィルを費やしているからだ。


 すぐに光線の照射は終わり、眩いばかりの光を放つ強烈な稲妻が、雷鳴を轟かせつつ、惣左衛門の足元の現象魔方陣から、周囲の空中に向かって放たれる。

 空に張られた金色の蜘蛛の巣の様に、枝分かれしながら空を駆ける稲妻は、回避など不可能であり、周囲の空中を飛ぶ、全ての魔法使い達を直撃。


 防御障壁などで、己の身を守る事が出来た、ごく一部の魔法使い達を除き、空中にいた蓬莱仙幇の魔法使い達は、撃墜されてしまう。

 撃墜されはしたものの、魔法使い達は死にはせず、気絶して墜落しただけである。


 敵とはいえ、なるべく殺害を避けたい惣左衛門が、言葉で指定した通り、威力は抑えられていた為、雷撃を食らった魔法使い達は、気絶するだけで済んだのだ。

 撃墜された魔法使い達は、海面に叩き付けられる羽目にはなるが、その程度で死にはしない。


 魔法使い達が戦闘時に着る服は、魔力が解放された人間が着ると、強力な防御能力を発揮する、特殊な素材で出来ているので。


「これだけの数を一撃とか、相変わらず無茶苦茶っスね」


 惣左衛門が八百数十人もの魔法使い達を、一撃で仕留めてしまった光景を見上げ、ティナが感想を漏らす。


「――地上なら防げる奴も、それなりにいただろうが、空中だったからねぇ」


 牡丹が言う通り、幾ら惣左衛門であっても、この数を一撃で仕留められたのは、仕留められた魔法使い達の多くが、空中にいたからだ。

 地上戦であれば、纏魔や防御壁により、身を守れた筈の魔法使い達も、飛行魔法で飛んでいる空中では、そういう訳にはいかない。


 単独で空を飛んでいた魔法使いの場合、ある程度以上に強力なアーマーアビリティを持つ、飛行魔法の使い手であれば、雷撃に耐え切れたかもしれない。

 だが、中級や下級の魔法使いに、強力なアーマーアビリティを持つ、飛行魔法の使い手は少ないので、殆どの魔法使い達は、一撃で撃墜されたのである。


 撃墜を免れたのは、一部の筋斗雲に乗る魔法使い達だけ。

 複数の魔法使いが乗る筋斗雲の場合、飛行魔法を担当していない魔法使いが、防御障壁を作り出せれば、威力が抑えられていた、今回の惣左衛門の雷撃を、防ぎ切れたのだ。


「残りは三十ってとこか?」


 空を見回しながら、撃墜し損ねた魔法使いの数を、惣左衛門は数える。

 撃墜されていないのは、八つの筋斗雲に分かれて乗る、三十人程の魔法使い達だけ。


 能力魔法の飛行魔法を発動すると、惣左衛門は一刻不落を蹴り、宙に舞い上がる。

 そしって、百メートル程離れた辺りを飛んでいた、筋斗雲に乗る魔法使い達に襲い掛かる。


 程無く、一刻不落が十四分二十八秒の展開時間を終え、光の粒子群となり、大気に溶け込む様に消え去ってしまう。

 その巨大さには不似合いな程に、あっさりとした消え方だ。




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