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037 これだけの数の魔法使いが、ここまで魔法を乱発すれば、電波も乱れ過ぎて、無線も通じなくなりますよ

 実は、蓬莱仙幇側は知らなかったのだが、魔法少女が作り出した防御結界は、かなり特殊なものであった。

 十四分二十八秒だけは決して破られないが、十四分二十八秒が過ぎと消滅してしまう、一刻不落いっこくふらくという防御結界なのである。


 一刻とは東洋の「こく」という時間の単位の事であり、時代や場所により、示す時間の長さは様々なのだが、一刻不落の場合は、一日を百分割した長さを一刻としている。

 その長さが、十四分二十八秒なのだ。


 つまり、蓬莱仙幇側が激しい集中攻撃を行っても、展開してから十四分二十八秒の間は、一刻不落は決して破られない。

 そして、一度使えば、一刻不落は九十九刻の間、使用出来なくなってしまうのである。


 ガス・ホライズンに乗っている、結界魔法を得意とする魔法少女が、この一刻不落という結界魔法を使える様になったのは、つい最近であり、実戦で使用されるのは、今回が初めてだった。

 それ故、一刻不落の存在を知らなかった為、無駄な攻撃を十分間も、蓬莱仙幇側は続けてしまったのだ。


 もっとも、あと四分間程度で、一刻不落は消滅してしまうので、蓬莱仙幇による攻撃自体は無駄であっても、魔法少女側は追い込まれつつあるのだが。


「――残り四分しかないってのに、小僧はまだ来ないのかい?」


 爆音に雷鳴、激突音などが、けたたましく響き渡り続ける中、ガス・ホライズンのブリッジの屋根に立っている、一刻不落を展開している魔法少女は、苛つきを隠さずに問いかける。

 赤い牡丹の花が刺繍してある白振袖に、海老茶の女袴を穿き、黒の編み上げブーツを履いている、大正時代の女学生の様な服装をしている魔法少女だ。


 長い黒髪は頭の後ろで、大きな赤いリボンにより、一まとめに結われている。

 鋭い印象だが、顔立ちは整っていて、凛とした美少女といった感じの見た目である。


 女学生風の服装の魔法少女に問われたのは、左側の少し離れた所に立っている、金髪のショートヘアーの、白人らしき魔法少女。


「無線が全然、繋がらなくなっちゃったんで、全然分かんないっスよ!」


 フリンジの付いた皮製のベストの下は、これまたフリンジ付きのビキニ。

 頭にはカウボーイハットをかぶり、輪拍りんぱく付きのブーツを履いている。

 これらは全てが駱駝色であり、ジーンズだけが青の、カウガールファッションの魔法少女だ。


 ベルトの左右には、今は何も付いていないのだが、拳銃型の魔法武器を創造魔法で作り出すと、その魔法武器がピッタリ納まるホルスターが、自動的に出現して、ベルトに装備される。

 このカウガールファッションの魔法少女は、拳銃型の魔法武器と相性の良い、フォーマルスタイルの持ち主なのである。


 カウガールファッションの魔法少女は、駱駝色の魔法少女専用無線機を手にしている。

 単なる無線機ではなく、小型モニターも付いた情報端末であり、携帯電話としての機能も搭載している。


 魔法少女は皆、魔法少女専用無線機を、規格外犯罪対策局から支給され、携帯しているのだ。

 タイプは複数存在し、色も様々なのだが、イメージカラーと同じ色の物を使用している魔法少女が多い。


「どうやら、電波障害が相当酷くなったみたいっス!」


 カウガールファッションの魔法少女が、そう言った直後、セーラー服に身を包んだ、女子高生風の魔法少女が、ブリッジの屋根の上に降下して来る。

 三つ編みにしたお下げ髪と、黒縁眼鏡が良く似合う、生真面目な印象の魔法少女は、飛行魔法を使用しているので、胸で十字の紋様が輝いている。


 セーラー服姿の魔法少女は、ガス・ホライズンの別の場所にいて、ブリッジの屋根の上まで、飛んで来たのだ。

 ブリッジの屋根の上に降下する際、カウガールファッションの魔法少女の話が耳に入ったので、セーラー服姿の魔法少女は、口を挟んで来る。


「この辺りのセフィル濃度が、高く成り過ぎたせいでしょう」


 周囲を飛び回り、一刻不落への魔法攻撃を続けている、多数の魔法使い達を見上げながら、セーラー服姿の魔法少女は、言葉を続ける。


「これだけの数の魔法使いが、ここまで魔法を乱発すれば、電波も乱れ過ぎて、無線も通じなくなりますよ」


 蓬莱仙幇側の魔法使い達による、激しい空襲が始ってから、無線通信はノイズ混じりで、途切れがちにはなっていたのだが、少し前……完全に途切れてしまったのだ。

 激しい魔法攻撃が続いたせいで、この辺りの空間のセフィル濃度は、急激に高まってしまい、とうとう無線通信が不可能なレベルに、達してしまったのだ。


 通信が途切れる前に、魔法少女達は無線機で、規格外犯罪対策局のICに、襲撃して来た敵の情報を伝えた上で、救援を呼ぶ事には成功した。

 だが、その後に電波障害が発生し、無線が途切れ途切れにしか、繋がらなくなってしまった。


 そのせいで、救援の為に送られた魔法少女が、どの辺りを飛んでいて、あとどれくらいで到着するのかについての正確な情報を、ガス・ホライズン側の魔法少女達は、得られなかった。

 そして、とうとう少し前に、無線通信は途切れ途切れどころか、完全に繋がらなくなってしまったのである。




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