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019 親父のフォーマルスタイルが、お洒落で可愛い? 自分の親父が、十代の女の子みたいな格好で、人前に出てるんだぜ! 気持ち悪いって感じるのが、普通だろ!

「大体ね、息子に絞め技をかけて絞め落としてる時点で、親として失格だっつーの!」


 家族四人で居間のテーブルを囲み、夕食を食べている最中、豚カツにソースをかけながら、一刀斎は不満げに愚痴る。


「まさか、あんなに簡単に落ちるとは、思わなかったんでな」


 一刀斎からソースを受け取りながら、惣左衛門は平然とした口調で続ける。


「お前は鍛え方が足りん。絞め技をかけられた時、落ちるまでの時間を引き延ばす方法も、教えた筈だろうが」


「親父のやってる事は、アメリカだったら、児童虐待っていう犯罪になるんだからな!」


「ここは日本だ」


 豚カツを切り分けつつ、一刀斎に言い返す惣左衛門は、フォーマルスタイル……ブルーのワンピース姿である。

 別に、着替えた訳では無い。

 フォーマルスタイルは、惣左衛門が首に装着している、首輪状のマジックオーナメント、セフィロトの首輪に登録されている、正規のスタイルなのである。


 マジックオーナメントには、オフとフォーマルにスタイルを切り替える事が出来る、スイッチとしての機能を果たす部分が、必ず存在する(見た目では分かり難いものが多い)。

 スイッチをフォーマルに切り替えるだけで、何時でも魔法少女は、服装と髪型を、フォーマルスタイルに変える事が出来る。


 逆に、スイッチをオフに切り替えれば、フォーマルスタイルは解除され、服は消える。

 他の服に着替えたり、風呂に入る時などは、スイッチをオフにすればいいのである。


 フォーマルスタイルの衣服は、魔法の攻撃以外では、破損したり汚れたりしないし、魔法により破損したり汚された場合でも、数分で元の状態に戻る、自己修復浄化機能を持っている。

 その上、スイッチを切り替えるだけで、一瞬で着替える事が出来るのだから、この上無く便利な衣服だと言える。


 本来は戦闘用の服装らしいのだが、一瞬で着替えられる上に常に清潔な為、惣左衛門に限らず魔法少女は、戦闘時以外もフォーマルスタイルでいる場合が多い。

 本来は男性の魔法少女であっても、つい楽なので、フォーマルスタイルになってしまう感じで。


「あ、パパだ」


 テレビを見ながら、伊織は呟いた。

 国会議事堂から逃亡を計る、銀の星教団の魔法使い達を、追撃する惣左衛門の姿が、大きなテレビ画面には映し出されている。


 テレビの映像が、追撃する場面から、記者会見の場面に切り替わる。

 右に座る柊と、左に座る榊を従える様に、ジャージ姿の惣左衛門は、中央に座っている。


「あれ? 何でパパだけジャージ着てるの? 榊のおばさまと柊のおじさまは、フォーマルスタイルなのに……」


 伊織は不思議そうに、惣左衛門にたずねる。

 伊織は榊をおばさまと、柊をおじさまと呼んでいるが、姻戚関係においては、「おば」や「おじ」の関係では無く、遠縁の親戚に当る。


 子供時代に近所に住んでいたせいで、惣左衛門は榊や柊を、歳の近い妹弟同然の存在として育っていた。

 その影響を受け、伊繊や一刀斎は榊や柊を、「おば」や「おじ」も同然の存在だと、感じているのである。


 ちなみに、榊や柊は、惣左衛門に巻き込まれた形で、魔法少女となった。

 魔力の才能は、血族に受け継がれる場合が多い。

 それ故、レベルS以上の魔力を持つ、惣左衛門を輩出した鬼宮一族には、優先的に魔力検査が行われた。


 魔力検査の結果、榊と柊は、レベルAの魔力所有者だと判明したので、二人とも魔法少女になったのだ。

 その時の検査では、惣左衛門の叔母にあたる鬼宮牡丹も、レベルAの魔力所有者であるのが判明し、魔法少女となったので、鬼宮一族は魔法少女を四人も、輩出する事になったのである。


「――ジャージを作る創造魔法が解析されたんでな、試しにセフィロトの首輪に登録してみたんだ」


「ジャージも悪く無いけど、私はフォーマルスタイルの方が、お洒落で可愛いと思うな」


 伊織は、少し残念そうに呟く。


「親父のフォーマルスタイルが、お洒落で可愛い? 自分の親父が、十代の女の子みたいな格好で、人前に出てるんだぜ! 気持ち悪いって感じるのが、普通だろ!」


 豚カツを箸で器用に切り分けながら、一刀斎は伊織に食ってかかる。


「そうかな? パパの魔法少女の格好、うちのクラスでは、凄く評判いいんだよ! 真似してる子もいるし」


「――小学校に通ってるガキ共には、四十過ぎの子持ち男が、十代の女の子が着る様なワンピース着て、オーバーニーソックス履いてる事の痛さが、分らないんだよ! そんな格好してたら、世間では女装好きの変態扱いされても、おかしくはないんだぜ!」


「そんな事無いよ、世間的には、惣ちゃん人気あるんだから」


 兄妹の口論に、母親が口を挟む。


「基本的に、人気者揃いの魔法少女の中でも、惣ちゃんは一番人気だし、ネットにはファンサイトだって、沢山あるんだよ」


 佐織の言う事は正しく、基本的には魔法少女達は人気者なのだ。

 芸能人や政治家の様に、マスメディアでゴシップがネタにされる程の。


 ただし、本来は男性である魔法少女の場合、人気と知名度に比例して、嘲笑したり悪口を言ったりする人々の数も増えるのである。

 しかも、男性の魔法少女本人だけではなく、その家族までもが、悪口や噂話の対象となる事も多いのだ。


 中でも、最強の魔法少女の息子にして、惣左衛門と見た目が瓜二つと言えるう程の美少年である一刀斎は、ゴシップで商売をするマスメディアには、目を付けられ易い存在といえた。

 そのせいで、一刀斎は何度か悪質な女性週刊誌などにより、写真を載せられてしまっていた為、名前と顔を広く知られてしまっていた。


 故に、クラスメートに色々と言われたり、スーパーマーケットで出会った親子の会話を、偶然に聞いてしまい、気まずい思いをしたりもするのだから、一刀斎からすれば、たまったものでは無い。




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