014 最強の魔法少女となった惣左衛門と、日本最大の魔法主義革命家団体である、銀の星教団が激突するのは、宿命という名の当然の流れ
史上最高レベルの魔力に加え、比類無き戦闘センスと技術の持ち主である惣左衛門は、当然のように規格外犯罪対策特別委員会の目にとまった。
惣左衡門は魔力検査の直後、規格外犯罪処理専任特種公務員に任命され、これまで使える者がいなかった、レベルS専用マジックオーナメントのセフィロトの首輪を装着し、魔法少女となったのだ。
実は、魔法主義革命家団体の魔法使い達との戦いを通じて、一つの明確な事実が明らかになっていた。
武術や格闘技などの体術において、高度な能力を持つ人間が、魔法少女や魔法使いとなると、通常の魔法少女や魔法使いよりも、遥かに強力な戦闘力を得られるという事実が。
魔法による戦闘は、現象魔法で発生させた、雷や炎のセフィルを放って攻撃したり、創造魔法で造り出した物を武器として、攻撃や防御の手段としたり、能力魔法で得た戦闘向きの特殊能力で行うのが基本。
だが、身体を操る体術において、高度な能力を持つ人間には、更に強力な二つの戦闘方法が可能になる。
その一つが、現象魔法で作り出した、炎や雷……水や風など、様々な属性のセフィルを身に纏った状態で、格闘戦を行う戦闘方法だ。
様々な属性のセフィルを身に纏った、魔法少女や魔法使いは、セフィルの甲冑に守られたかの様な、極めて高い防御能力を持つ状態となる。
防御能力だけでなく、セフィルを纏った腕や脚は、セフィルによる攻撃能力を持つ、強力な武器でもある。
セフィルを放って飛ばす攻撃方法に比べ、セフィルを纏った身体の部位による直接攻撃は、接近戦限定となるのだが、魔力の消耗が少なく済む。
しかも、属性を持つセフィルには、打撃と組み合わせた攻撃に用いると、威力が著しく高まる性質がある。
その為、属性を持つセフィルを纏った状態での、直接打撃による攻撃には、魔力を僅かしか消耗しないにも関わらず、大量のセフィルを投じた現象魔法で発生させた、様々な属性のセフィルを放つ攻撃に匹敵する、強力な威力があるのだ。
この様に、現象魔法で発生させた、属性を持つセフィルを身に纏う状態を意味する言葉としては、日本において使われ始めた、纏魔という言葉が、世界中に広まっている。
海外ではTENMAと、ローマ字で表記される場合が多い。
セフィルではない全ての攻撃が通じぬ、セフィルの現象を纏って身を守りながら、セフィルを纏った手足を使い、武術や格闘技を駆使して戦える……。
そんな戦い方が出来る、魔法少女や魔法使いは、当然……基本的な戦闘法しか出来ない者達より、遥かに強い。
高度な体術能力を持たない、魔法少女や魔法使いであっても、セフィルを身に纏う事自体は可能。
だが、武術や格闘技の能力が高い者達程に、強力な戦力を得られないのは当然として、そもそも体術能力が低い者は、短時間しか纏った状態を維持出来ない為、まともに纏魔を使いこなせないのだ。
そして、もう一つの戦闘方法が、創造魔法により魔法武器を作り出し、その魔法武器で戦う戦闘法である。
実は、数多くの魔法書や魔法経典の解析が進んだ結果、様々な魔法武器を造り出す魔法が、判明していた。
魔法武器とは、雷や炎……水や風など、様々な属性の強力な攻撃や、それらの属性とは関係無くとも、強力な魔法攻撃が行える武器の総称。
強力な魔法攻撃能力を持つだけでなく、纏魔程に強力な防御能力ではないが、魔法武器は使う者の身体に、同じ属性のセフィルを纏わせ、防御能力を引き上げる事まで出来る(ただし、属性がない魔法武器には、防御能力を引き上げる力は無い)。
セフィルの防御で身を守り、強力な武器を手にして戦える訳なので、魔法武器を使って戦える魔法少女や魔法使いが、魔法武器を使えない者達より、圧倒的に有利に戦えるのは当然だ。
ただし、魔法武器を造り出す創造魔法は、高度な武術や格闘技の能力を持つ、魔法少女や魔法使いにしか、使いこなせないのである。
纏魔を使う戦闘法と、魔法武器を使う戦闘法が存在する為、武術や格闘技などの体術において、高度な能力を持つ者は、通常よりも遥かに強力な、魔法少女や魔法使いになる可能性が高い。
ただし、本当に高度な能力が必要な為、魔法少女や魔法使いになってから、付け焼刃レベルの武術や格闘技の修行を始めても、殆どの者達は、この二つの戦闘法を使える段階には、至れないのだ。
世界最強の武術家と言われていた惣左衛門の場合、武術に関しては、十分過ぎる程の実力と実績がある。
その上、史上最高レベルの魔力まで持っているのだから、規格外犯罪対策特別委員会が、惣左衛門に期待するのは、当然と言える。
規格外犯罪対策特別委員会の期待通り、惣左衛門は凄まじいまでの活躍を見せた。
魔法少女となってから、ほんの半年の間に、五十もの魔法主義革命家団体を、壊滅させてしまったのだ。
この段階で、既に惣左衛門は、世界最強の魔法少女と呼ばれる存在となっていた。
高度な魔法と強力な武術とを組み合わせて戦う事が出来る、魔法少女としての惣左衛門の強さは、まさに圧倒的だった。
最強の魔法少女となった惣左衛門と、日本最大の魔法主義革命家団体である、銀の星教団が激突するのは、宿命という名の当然の流れ。
惣左衛門と銀の星教団は、日本中を舞台として、魔法史上に名を残す様々な激闘を、一年以上に渡り繰り広げる事になった。
半年程前まで、両者は互角の勝負を続けていたのだが、その後……主戦力であった四天王を、次々と惣左衛門に倒されてしまい、銀の星教団は劣勢に陥った。
そして、二千八年の夏……銀の星教団は壊滅寸前にまで、追い詰められる羽目になったのである。
銀の星教団が、起死回生を狙い決行した、蒼天の二つ星作戦も、惣左衛門の手によって、完全に打ち砕かれた。
しかし、銀の星教団の教主であるアレイスター・M・クロウリーと、仮面の魔女カリプソなど、数名の部下達の身柄は、いまだ拘束されていなかった……。
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