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013 数多くの魔法主義革命家団体によって、甚大な被害を被っていた日本においても、二十一世紀初頭の規格外犯罪対策特別措置法の成立によって、同様の法整備がなされたと言える

 だが、政府側の戦力となる魔法使いの数を揃えようという、各国政府の目論見は、当初……上手くは行かなかった。

 マジックオーナメントが抱える二つの問題点が、上手くいかない原因となってしまったのだ。


 一つ目の問題点は、マジックオーナメントを一度身に付けたら、最低でも一年間は、死なない限り外せない事。

 二つ目の問題点は、装着した人間の身体を、十代中頃の少女の身体に変えてしまうという、悪い冗談の様なマジックオーナメント装着による副作用である。


 体制側の魔法使いとなり、魔法主義革命家団体の魔法使いと戦うという事は、命を危険に晒す戦いに、身を投じるという事なのだ。

 命がけの戦いを、最低でも一年間、続けなくてはならない上に、少女の身体になって生活しなくてはならないという条件を、喜んで受け入れる人間など、この世には殆ど存在しない(少女の身体になる方は、男性限定のデメリットと言えなくもないが)。


 マジックオーナメントを装着し、各国の体制側の魔法使いとなって、魔法主義革命家達と戦う人材の確保に、各国政府が苦労する羽目になったのも、当然といえば当然だろう。

 それ故、魔力検査によって、高い魔力を持つと確認された人間には、魔法使いとなって戦う義務を課す法律が、世界各国で立法化された。


 政府による人権侵害とも言える立法が、主要先進各国ですら為されたのは、それだけ各国政府が、魔法主義革命家団体に追い込まれていたせいである。

 数多くの魔法主義革命家団体によって、甚大な被害を被っていた日本においても、二十一世紀初頭の規格外犯罪対策特別措置法の成立によって、同様の法整備がなされたと言える。


 同時期、日本における魔法主義革命を阻止するべく、二つの機関が立ち上げられた。

 内閣府直属の行政機関である規格外犯罪対策特別委員会と、その配下の実働組織である規格外犯罪対策局である。


 この二つの機関は、規格外犯罪対策特別措置法により整備された、様々な新制度を、即座に実行に移し始めた。

 有り体に言えば、日本政府側の魔法使い戦力を揃え、魔法主義革命家団体と戦い、殲滅する事こそが、この二つの機関に与えられた使命であった。


 規格外犯罪対策特別措置法の施行により、高校生以上の日本人全てに、魔力検査を受ける義務が課された。

 そして、レベルB以上の魔力の保有者だと確認された国民は、規格外犯罪対策特別委員会により、規格外犯罪処理専任特種公務員……要するに、政府所属の魔法使いに任命され、魔法主義革命家団体の魔法使い達と戦う義務が、課せられたのだ。


 義務である為、この任命を拒否すれば罰として、懲役十五年以上の実刑が科せられる。

 しかも、規格外犯罪対策特別措置法の成立と同時に、少年法が廃止された為、拒否すれば未成年者であっても、刑務所送りとなる。


 ただし、中学生以下の子供が、規格外犯罪処理専任特種公務員に任命されたり、任命を断わり刑務所送りにされる事は、基本的には有り得ない状態となっている。

 少年法廃止に反対する勢力と政府側の、政治的取引の結果、義務教育期間中の者は、魔力検査義務対象外となった為、規格外犯罪処理専任特種公務員に任命されるのは事実上、高校生以上のみとなったので。


 無論、懲役十五年以上の実刑という鞭だけでは無く、飴も用意された。

 規格外犯罪処理専任特種公務員として働く国民には、国家公務員平均賃金の十倍という、多額の報酬が支給される事になったのだ。


 しかも、最低限の任期である一年間を勤め上げた人間には、国家公務員平均給与額と同額の特別年金が、生涯に渡って支給される制度までも、整えられた。

 本人が死んだ場合は、同等の遺族年金が、遺族に支給される。


 懲役十五年以上の実刑という鞭と、多額の報酬という飴を使い分けた、飴と鞭の政策により、任命された殆どの国民は、規格外犯罪対策局所属の規格外犯罪処理専任特種公務員、つまりは政府所属の魔法使いとなる道を、選ぶ羽目になった。

 結果として、常時百人以上の政府所属の魔法使い……通称、魔法少女達が、日本中を舞台として、魔法主義革命家団体の魔法使い達と、命懸けの壮絶な戦いを、繰り広げる状況となったのだ。


 しかし、百余名の魔法少女達の力をもってしても、戦況は魔法主義革命家達の方が、圧倒的に有利であった。

 中でも、レベルS以上という、最強クラスの魔力を誇る大魔法使いである、アレイスター・M・クロウリー率いる銀の星教団の勢力は凄まじく、大国の中で最も早く、魔法主義革命が成功してしまったロシアに続き、日本での魔法主義革命を、成功させかねない勢いだった。


 ちなみに、アレイスター・M・クロウリーは、魔法使いとしての名前……真名しんみょうであり、本名は塩川饅頭朗しおかわまんじゅうろうという。

 勘違いされ易いが、アレイスターの方が姓であり、クロウリーの方が名という、姓名の順になっている。


 このクロウリー率いる銀の星教団を中心とした、魔法主義革命家団体側に、日本政府側の魔法少女達が、追い込まれつつあった勢力図を、一人の魔法少女が、たった一年半の間に、塗り変える事になった。

 その魔法少女こそが、鬼宮惣左衛門である。


 鬼宮一族は、鬼から伝えられたとわれている事から、鬼伝きでんの名を冠する古武術、鬼伝流きでんりゅうを継承する一族として、武術界では元々、名が知られた存在だった。

 魔力とは似て非なる生命エネルギー……気を操り、人間の限界を遥かに上回る速さや強力ごうりきを操る事が出来る、まさに鬼の如き強さを実現する武術が、鬼伝流。


 その鬼伝流の流れを汲む七つの門派の一つ、鬼伝無縛流きでんむばくりゅうの継承者であり、実戦では世界最強と言われていた武術家が、惣左衛門なのだ。

 実戦だけでなく、世界中で開催される格闘技の大会における、ルールに縛られた試合においても、負けを知らない程の強者であり、格闘技や武術の世界では、知らぬ者がいない程の存在でもあった。


 四十歳の誕生日、義務である魔力検査を、惣左衛門は受けた(検査対象となる人間は、コンピューターがランダムに選ぶ制度)。

 惣左衛門は検査の結果、マジックオーナメントを装着出来る魔力レベル……レベルBを遥かに超える、レベルS以上の魔力を持つ事が、判明したのである。




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