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123 助かります! これで何とか、体育の授業には出れそうだ!

 色黒の隊員が口にした「まだ親父の方には、遠く及ばない」という話の根拠は、規格外犯罪対策局による、一刀斎の戦力分析のデータである。

 魔法少女と協力して、魔法主義革命家団体のテロ鎮圧を行う場合もある対魔作戦群には、そのデータが開示されているのだ。


 その中には、魔法少女の戦闘能力を分析して数値化した、魔法戦闘能力値に関するデータも存在した。

 基本的には数値が高い程、強い魔法少女という事になる数値であり、世界各国の魔法少女が所属する組織において、標準的な指標となっている。


 魔法戦闘能力値は惣左衛門の場合、魔法少女となった直後の初期段階で六百。

 最終的には、千八百を越えていた。


 一刀斎の場合、昨日受けた様々な検査を元に、算出されたばかりの、初期段階の魔法戦闘能力値は二百。

 つまり、初期段階の強さを比較した場合、一刀斎は惣左衛門の三分の一程度だと、分析された訳である。


 一刀斎の魔力は、惣左衛門と同等のレベルS以上(厳密に言えば、惣左衛門の初期値より、少し劣る数値)。

 だが、武術の実力に大きな開きがあるせいで、魔法戦闘能力値は、惣左衛門の初期値を、大きく下回る形になった。


 そうはいっても、初期段階で二百という、一刀斎の魔法戦闘能力値は、かなり優秀な部類といえる。

 何故なら、現在の魔法少女の平均的な魔法戦闘能力値が、七十程度だからだ(初期段階ではなく、全ての魔法少女の平均値)。


 一刀斎は初期段階においてすら、平均的な魔法少女の倍以上強いと、戦力分析の結果……推測されている。

 世界最高の魔法戦闘能力値を誇っていた、惣左衛門と比較すれば、若い隊員達が語っていた通り、遠く及ばないのだが。


 ちなみに、ゲベルガルの魔法戦闘能力値は、百八十前後と推測されている。

 小さな団体の教主とはいえ、平均的な魔法少女の、倍以上の魔法戦闘能力値だと推測されるゲベルガルは、決して弱い魔法使いではない。


 そんなゲベルガルを、初戦から圧倒してみせた一刀斎の姿を目にして、対魔作戦群の若い隊員達は感じたのだ。

 一刀斎は惣左衛門には遠く及ばないまでも、十分に期待出来る新戦力だと。


 そんな風に、若い隊員達が一刀斎をさかなに会話に興じている時、ヘリコプターのローターやエンジンの音が、空から響いて来る。


「護送班のヘリだ!」


 隊員の誰かが声を上げた通り、音を発しているのは、まだ小さくしか見えない、護送班のヘリコプターだった。

 迷彩塗装された、デュアルローターの大型輸送ヘリ、CH47JAは、元々は陸自の機体だが、操縦する隊員や整備するスタッフと共に、今現在は規格外犯罪対策局の所属となっている。


 CH47JAが飛来する方向から、二人の少女が空を飛んで来る。

 二人の魔法少女が、CH47JAに同行していたのだが、CH47JAに先行して演習場に降りるつもりで、飛んで来たのだ。


 一人はほうきまたがり空を飛ぶ、メイド姿の魔法少女。

 もう一人は、中国風の大きな剣を、まるで空を飛ぶサーフボードの様に乗りこなして空を飛んでいる、天遁剣法てんとんけんぽうを使う、赤い功夫服姿の魔法少女である。


 飛行魔法の使用時に、道具を使う二人組の魔法少女は、CH47JAより先に、演習場の上空に辿り着くと、対魔作戦群の多数の車両や人影を視認。

 その辺りを見回して、青い色で目立つ一刀斎を発見すると、二人の魔法少女は急降下して、一刀斎の近くに下り立つ。


 どちらも見た目は整っていて、背が一刀斎よりも拳一つ分程高い。

 功夫服姿の方は、シニヨンにした黒髪が印象的な、東洋的な印象の少女であり、メイド服の方は、金色の髪に青い瞳という、西洋人の様な見た目である。


 二人が乗っていた剣と箒は、地上に降りた直後、光の粒子群となって消滅した。

 箒や剣が出現する性質がある、飛行魔法を二人は使っている為、飛行魔法を解除すると、剣と箒は消滅するのだ(創造魔法で作られたのではなく、能力魔法で物が作り出される、特殊な例)。


 まずは功夫服姿の魔法少女が、一刀斎に歩み寄って立ち止まると、威勢の良い口調で声をかける。


「――あたしは円城寺幸恵えんじょうじさちえ、ゲドの使途連中の護送を任されている! 君が鬼宮一刀斎だな?」


「あ、はい! 鬼宮一刀斎です!」


 携帯用無線機をポケットに仕舞い、一刀斎は幸恵に言葉を返す。


「詳しい話は、ICの方から聞いている。ゲドの書の残骸と、ゲドの使途達の身柄は、あたし達が引き受けるから、君は学校の方に戻って良いよ」


「助かります! これで何とか、体育の授業には出れそうだ!」


 嬉しそうに言った後、一刀斎の頭の中に、習志野演習場に来る途中で迷ってしまい、辿り着くのが遅れた記憶が甦る。


「帰りに……迷わなければ」


「ここに来る途中、九十九里浜や木更津に行っちゃったんだって?」


 少し遅れて一刀斎の前に立った、メイド姿の魔法少女が、楽しげな口調で言葉を続ける。


「初心者の内は、空飛んでると迷い易いんだよねー。なったばかりの頃は、私も結構迷ったよ」


 そこまで話してから、自己紹介をしていないのに気付いたのか、メイド姿の少女は、本物のメイドであるかの様なお辞儀をしながら、自己紹介をする。


「ゲドの使途の護送を任されている、かのうシモネッタです、宜しくね」


「下ネタ?」


 驚きの声を上げる一刀斎に、「またか」と言わんばかりの口調で、シモネッタは説明する。


「下ネタじゃなくて、シモネッタ……イタリアの女性の名前なの。今は帰化してるんだけど、両親が元々はイタリア人だったんで」


 一刀斎とシモネッタのやり取りを、含み笑いしながら見ていた幸恵が、笑顔のまま一刀斎に問いかける。


「――それで、ゲドの書の残骸は?」


 ポケットの中から取り出した、袋入りのゲドの書の残骸を、一刀斎は幸恵に手渡す。


「でもまぁ、小規模の魔法主義革命家団体とはいえ、初陣ういじんで教主を倒して、魔法教典を破壊するとはね、凄い新人が現れたもんじゃないか」


 ゲドの書の残骸を確認しながら、幸恵は率直な感想を口にする。


「親父さんと比べて、色々な事を言われるかも知れないけど、初陣でここまでの事がやれた君なら、大丈夫に決まってる。外野の言う事なんて気にしないで、頑張りなよ!」


「はい!」


 幸恵の言葉に、一刀斎は少し照れた風な顔で返事をしてから、能力魔法の発動コマンドを宣言し、飛行魔法を指定する。


「ノウビリティ! 我がセフィルよ、空を舞う為の、力となれ!」


 すると、一刀斎の足下に、十字の形をした魔法陣……能力魔法陣が出現。

 セフィルがチャージされ、金色に輝くセフィロトの首輪の目に似た紋様から、光線状のセフィルが能力魔法陣に向けて放射される。


 能力魔法陣は、金色に輝きながら小さくなり、二十センチ程の大きさの十字の印となって、一刀斎の胸元に吸着し、輝き始める。

 これで一刀斎は、飛行能力を得たのだ。




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