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122 ああしてると、街ン中で見かける、ケータイ弄ってる可愛い女の子にしか、見えないんだけど……

「ゲドの書の破壊、終わりました! もう学校に戻って良いですよね?」


 オペレーターは一刀斎に、ゲドの使途の魔法使いだった者達の身柄を確保した上で、その場で暫く待機する様に告げる。

 規格外犯罪対策局の本部から、習志野に向かった護送班が、すぐに到着する筈なので、学校に戻るのは、護送班の到着を待ってからにする様に、一刀斎に指示したのだ。


 魔法教典は破壊されたとはいえ、様々な魔法に関する情報が記された、貴重な魔法書であり、ゲドの書の残骸を研究すれば、様々な新しい魔法を得られる可能性がある。

 魔法を失ったとはいえ、ゲドの使途の魔法使いだった者達は、強力な魔力の才能を持つ、魔法業界にとっては、魅力的な人材だ。


 つまり、ゲドの書の残骸も、ゲドの使途の魔法使いだった者達も、魔法主義革命家団体のターゲットとなる可能性がある。

 故に、魔法少女を帯同している護送班が到着するまで、ゲドの書の残骸とゲドの使途の魔法使いだった者達を、一刀斎は保護しなければならないのである。


 ゲドの書の残骸と、ゲドの使途の魔法使いだった者達を、護送班に引き渡すまでが、今回の一刀斎の任務という訳だ。


「了解しました!」


 一刀斎は無線通信を切りながら、ぼそりと呟く。


「早く護送班来ないかな? 三時間目の体育までに、学校に戻りたいんだけど……」


 体育の授業が好きな一刀斎は、時計機能で現在時刻を確認してから、携帯用無線機をポケットに仕舞う。

 直後、一刀斎の耳は、近付いて来る多数のエンジン音を聞き取る。


 エンジン音の方を振り向くと、近付いて来るバギーカーやバイク、軽装甲機動車などが、一刀斎の目に映る。

 対魔作戦群の車両群が、一刀斎達の方に移動して来たのだ。


 一刀斎だけでなく、意識を失ったままの、ゲドの使途の魔法使いだった者達を取り囲む様に、対魔作戦群の車両群は停車する。

 バギーカーの一台から降りた、迷彩服姿の洋司が、一刀斎に歩み寄って立ち止まると、敬礼する。


「対魔作戦群、群長ぐんちょうの南雲洋司一等陸佐です! 当演習場におけるテロ活動鎮圧へのご協力、感謝します!」


 明らかに年長である洋司に、丁寧に礼を言われて、一刀斎は恐縮してしまい、不慣れなポーズの敬礼と共に、言葉を返す。


「いや……あの、仕事しただけですから」


「規格外犯罪対策局の方から、ゲドの使途のメンバー達の身柄拘束に協力するよう、依頼を受けましたので……」


 倒れたままの、魔法使いだった者達を指差しつつ、洋司は言葉を続ける。


「早速、拘束作業に入ります」


「助かります」


 一刀斎は素直に、礼を口にする。

 三十人もの魔法使いを、一人で拘束するのは、かなり面倒そうな気がしたので、協力して貰えるのは一刀斎にとっては、有り難かったのだ。


 対魔作戦群の隊員達は、軽装甲機動車が積んでいた、機材の結束に用いる結束バンド風の拘束具を使い、手際良く魔法使いだった者達の手足を拘束する。

 既に魔法を使う力を失った、ゲドの使途の魔法使いだった者達は、魔法少女の力を借りずとも、対魔作戦群のみで身柄拘束が可能なのだ。


 多数の隊員達が分担して行ったので、作業は短時間で終わり、一刀斎は特にする事が無くなってしまった。

 対魔作戦群の隊員に貰った飲み物で、乾いた喉を潤しつつ、手持ち無沙汰な状態になっていた一刀斎は、自分専用の携帯用無線機が、スマートフォンと呼ばれる、新型の携帯電話風の物であるのを思い出す。


「親父が使ってたのより、色んな事が出来るらしいけど……」


 携帯用無線機を取り出して、一刀斎は弄り回し始める。

 規格外犯罪対策局が作成した、ゲーム風に遊べる、魔法少女向けの戦闘シミュレーションのアプリがインストールされていたので、一刀斎は遊び始めてしまう。


 微風に草が靡く、草原の様な演習場に立ち、携帯用無線機で遊んでいる一刀斎の姿を、少し離れた場所から、対魔作戦群の若い隊員達が、興味深げに眺めていた。

 隊員達は警備の為、護送班が到着するまで、この場にいるのだ。


 若い隊員の内の一人……色黒の隊員が、ぼそりと呟く。


「ああしてると、街ン中で見かける、ケータイ弄ってる可愛い女の子にしか、見えないんだけど……」


 身柄を拘束されている、ゲドの使途の魔法使いであった者達に目線を移し、隊員は続ける。


「俺達が三十分、動きを封じるのが限界だった連中を、あんなに簡単に……短時間で殲滅出来るくらいに、強いんだよな」


 続いて、隣にいた大柄な隊員が、口を開く。


「規格外犯罪対策局の警備隊に出向してる、特殊作戦群とくしゅさくせんぐん時代の先輩が、鬼宮家の警備を担当してるんだが……」


 規格外犯罪対策局は、警察や自衛隊、公安調査庁などの政府機関だけでなく、大学や企業などの各種研究機関から、組織横断的な人材集めを行い、設立されている。

 それ故、自衛隊からも有能な隊員が多数、出向という扱いで働いている(特殊作戦群は自衛隊の特殊部隊)。


「先輩は空き時間に、鬼宮親子のトレーニングに付き合い、あの子を相手に、実戦形式の組み手をやった事があるんだそうだ」


「結果は?」


 色黒の隊員の問いに、大柄な隊員は答える。


「特殊作戦群時代は、近接戦闘最強って言われてた人なんだが、手も足も出なかったって、驚いていたよ。魔法少女になる前から、近接戦闘能力が人並外れなんだよ、あの子は」


「――血は争えないって奴だな」


「無論、才能も受け継いではいるんだろうけど、それだけじゃないだろう」


 大柄な隊員は、付け加える。


「先輩の話じゃ、毎日の地道な身体作りのトレーニングを欠かさず、その上で世界最強の男を相手に、武術の修行を続けているって話だ」


「才能に恵まれた奴が、努力まで積み重ねた上での、人並外れた強さという訳か」


 色黒の隊員の言葉に頷いてから、大柄な隊員は口を開く。


「鬼宮惣左衛門が、魔法少女を引退するって聞いた時は、正直……これから日本が、やばい事になるんじゃないかと思ったんだが、何とかなるのかもな」


「――まだ親父の方には、遠く及ばないって話だけど、悲観する程でも無さそうだ」


 一刀斎を眺めながら、色黒の隊員は続ける。


「魔法少女になった直後で、これだけの戦いが出来るなら、経験を積みさえすれば、相当な戦力になってくれそうだな」




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