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012 そこで、各国政府は一致団結して対策を練り、一つの答を導き出したのだ、「魔法に対抗するには、魔法を使うしか無い」という、単純な答を

 そして、SMROの活動が始まった時期以降、レヴィの書とは別の、魔力解放能力と洗脳能力を持つ魔法教典が、世界中で相次いで発見され続ける事になったのだ。

 それらの魔法教典を得た魔法使い達は、各々が同志となる魔法使い達を造り出し、SMROと同様の、魔法主義革命家団体を作り上げ、魔法主義革命に身を投じた。


 その結果、魔法主義革命家団体による魔法主義革命が、世界中に蔓延したのである。

 シュタイナーが魔法主義を唱えてから二年後には、魔法主義革命を目指す、魔法主義革命家団体の数が、魔法教典を持つ非合法団体だけでも五百を超える程に、魔法主義革命は拡大し続けたのだ。


 SMROや他の魔法主義革命家団体の活動に、各国政府は手を焼いた。

 何故なら、魔法使い達の破壊工作や戦闘行為を鎮圧しようにも、魔法使い達には人間の使う武器や兵器が、通用しなかったからである。


 魔法使い達が、魔法の源とするセフィル(本来は「極点」を意味する言葉)は、この世界よりも上位に位置付けられる、高次のエネルギーである。

 高次のエネルギーであるセフィルを源泉とした、魔法が発生させる現象や、造り出す物体、得る事が出来る能力は、この世界の通常の現象や物質、能力などに対し、完全に優越する。


 炎のセフィルなら、この世界の物体を燃やす事が可能なのだが、この世界の炎は、セフィルで造り出された物体を、燃やす事は出来ないと説明すれば、分りやすいだろう。

 もっとも、物体を造り出した魔法使いが、通常の炎にセフィル製の物体が燃やされる事を望めば、それは可能なのだが。


 つまり、警察や軍隊が装備している、通常の武器や兵器による攻撃は、魔法使いによる魔法により、完全に防御されてしまうし、魔法による攻撃を防ぐ事は、警察や軍隊の装備では、不可能なのである。

 雷のセフィルは、この世界の絶縁処理を完全に無効化し、対象物を電撃で破壊してしまうし、核爆弾の爆発ですら、創造魔法で造り出した防御壁で、完全に防御可能なのだ。


 このように、通常の武装しか使う事が出来ない警察や軍隊は、魔法使い達との戦闘において、圧倒的に不利なのである。

 それ故、魔法使い達が革命を為す為、各国政府に仕掛ける攻撃への対処が、通常の警察や軍隊では不可能なのは、明白だった。


 そこで、各国政府は一致団結して対策を練り、一つの答を導き出したのだ、「魔法に対抗するには、魔法を使うしか無い」という、単純な答を。

 要するに、政府側も魔法使い達を戦力として揃え、魔法主義革命団体の魔法使い達と戦わせ、魔法主義革命を抑え込もうと決めたのである。


 故に、魔法主義革命を目指さない、現在の社会体制維持の為に活動する魔法使いを、各国政府が揃える為に、魔法主義に洗脳される事無しに、人間の魔力を解放する方法の開発が、急務となった。

 各国政府は力を合わせ、魔法教典無しに魔力を解放する方法や、魔法主義に洗脳されずに、魔法教典で魔力を解放する方法の研究を、急ピッチで進めたのである。


 各国の研究機関は、世界中の魔法に関する書籍や道具を掻集かきあつめ、研究開発を続けた。

 科学や歴史、民俗学にオカルト研究家など、様々なジャンルの人材が掻き集められ、魔法に関する大々的な研究調査が行われたのだ。


 その結果、魔法教典無しに人間の魔力を解放し、人間が魔法を使える様にする方法が、一つだけ発見された。

 それが、魔法の装飾品……マジックオーナメントを用いる方法である。


 掻集められた魔法道具は、主に二つに分類された。

 一つは、魔法使いの能力を増幅する増幅器……マジックブースター。

 もう一つが、魔法的な装身具である、マジックオーナメントだった。


 マジックオーナメントは、この世界の兵器による攻撃だろうが、魔法による攻撃だろうが、完全に弾き返してしまうという性質を持っている、謎のアンティークな装身具群である。

 その防御能力の高さから、初期の段階では、魔法攻撃に対する防御手段開発の為の、研究素材となっていた。


 防御手段開発の研究中、高い魔力を持つ人間が、実験の為にマジックオーナメントを装着した結果、マジックオーナメントの本来の機能が、偶然にも明らかになった。

 マジックオーナメントは、人間を魔法主義思想に洗脳する事無く、装着した人間の魔力を解放し、魔法を使える様にする機能を持っていた事が、判明したのだ。


 マジックオーナメントを外すと、魔力の解放は停止し、魔法が使えなくなってしまうので、マジックオーナメントは人間を、完全に魔法使いに変える訳では無い。

 その意味においては、魔法教典が消滅すると、その魔法教典に魔力を解放された魔法使いは、魔法が使えなくなってしまうので、魔法教典と似ていると言えなくもなかった。


 兎に角、本来の機能が明らかになって以降、各国政府は徹底的に、マジックオーナメントに関する研究を推し進めた。

 そして、研究を進める内に、マジックオーナメントには、魔力を解放する機能だけではなく、魔法の呪文を登録する機能がある事も、明らかとなった。


 マジックオーナメントを装着した人間は、魔法使いと同様に、呪文を唱えて魔法を発動する事も出来る。

 だが、マジックオーナメントに呪文を登録しておけば、簡単なコマンドの宣言と、母国語による指示だけでも、魔法を発動出来る事が判明したのだ。


 呪文の登録は難しい上に、マジックオーナメントと呪文の相性が悪くて、登録出来ない呪文も存在する。

 しかし、呪文を登録出来る魔法であれば、長い呪文を唱える必要無しに、魔法を発動する事が出来る、マジックオーナメントを装着した魔法使いは、魔法の発動や解除に要する時間が、通常の魔法使いに比べて、圧倒的に短くなる。


 この時間の短さが戦闘の際、かなりのアドバンテージとなるのは、明白だった。

 超高速詠唱法という、呪文を超高速で唱える特殊技術を持つ上級魔法使い同様に、魔法を使う際の隙が、小さくて済むのだから。


 強力な魔力を持つ人間は、マジックオーナメントを装着し、魔法を登録するだけで、魔法の修行をせずとも、強力な魔法使いと同等の魔法戦闘能力を、得る事が出来る……。

 この事実が明確となった為、各国政府はマジックオーナメントによって、魔法主義に洗脳されていない魔法使い達を作り出し、魔法主義に染まった魔法使い達に対抗させ、魔法主義革命家団体の殲滅を目指す事にした。




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