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117 あ、そうだった! 俺、その為に来たんだ!

「誰だ、撃ったのは? 狙いを外し過ぎだろ!」


 爆発を目にして、洋司は呆れ顔で言い放つ。


「まだ誰も撃ってません!」


 洋司の問いに、部下の一人が即答した。


「――だったら、魔法使い共の攻撃か?」


「いや、地上ではなく、空から……飛んで来た様に見えました!」


「空からだって!」


 部下の返答を聞いた洋司は、爆発が起こった辺りを、首から提げていた双眼鏡で凝視する。

 だが、洋司の目に映るのは、舞い上がった土煙ばかりだ。


 だが、このタイミングで、空から飛来したとなれば、爆発を発生させたのは、洋司達が待ち望んでいた存在である可能性がある。

 洋司は期待しつつ、疑問の声を上げる。


「――来たのか?」


 その時、一陣の風が吹き抜け、草原の様に演習場の至る所を覆っている草を靡かせ、爆発が舞い上げた土煙を、流してしまう。

 消え去って行く土煙の中から、何者かが姿を現す。


 姿を現した者は、全身を青系の色でコーディネートしていた。

 丈の短いブルーのワンピースを着て、濃紺のオーバーニーソックスを履いているだけでなく、ツーテールに整えられた髪の色まで、紺色なのだ。


 中央の辺りに目に似た紋様が記された、革製の首輪と、髪をまとめる大きめのリボンだけが黒色であり、アクセントとなっていた。

 外見上の年齢は十代中頃で、顔立ちは整い過ぎている程なのだが、目つきが鋭く、愛想が無い。


 身長は百六十センチ程度で、引き締まった身体を持つ、やや尖った感じの雰囲気を漂わせている。


「ちょっとスピード出し過ぎたな、減速に失敗しちまった」


 爆発を起す程の勢いで、地面に叩き付けられる形の着地になったのが恥ずかしかったのか、ブルーのワンピース姿の何者かは、気まずそうに独り言を口にしながら、着衣や身体に付着した土を払う。


「魔法少女、鬼宮惣左衛門!」


 髪型以外、外見上に違いが無い為、隊員の誰かが、姿を現したのは惣左衛門だと勘違いし、声を上げる。

 だが、姿を現したのが、惣左衛門ではないと気付いた別の隊員が、その言葉を正す。


「――じゃなくて、息子の一刀斎の方だ!」


 正した隊員の言葉通り、姿を現したのは、凪澤市から空を飛んで来た、一刀斎である。

 自分の名を口にした隊員の声を、聞き取った一刀斎は、隊員達の方を向いて、大声を発する。


「すいません! 間違えて九十九里浜に行っちゃって、遅れちゃいました!」


 申し訳無さそうに一礼してから、一刀斎は手にした携帯電話風の携帯用無線機を、隊員達に見せる。

 無線機のモニターには、千場県のマップが表示されている、


「ちゃんと無線機の地図で、方向確かめながら飛んでたんですけど、海が見えて来たんで、おかしいと思って浜辺に下りて、ここは何処なのか、漁師の人に訊いてみたんです! そしたら、ここは習志野じゃなくて、九十九里浜だって言うんですよ!」


 携帯用無線機を弄りながら、一刀斎は遅れた言い訳を続ける。


「――それで、漁師の人に習志野の方向を教わって、急いで飛んで行ったんです! そしたら、今度は海だけじゃなくて、でっかい橋まで見えて来たから、橋の近くに降りて、車停めてる人に訊いてみると、ここは木更津だって言われて……」


 一刀斎の到着が遅れたのは、飛行中に迷ってしまった結果。九十九里浜に行ったり、木更津やアクアラインを経由してから、船橋市と八千代市に跨る習志野演習場に辿り着いたせいだったのだ。


「俺……彩多摩さいたま県民だから、千場ちばの地理、良く分からなくって!」


「いや、その話は後でいいから、まずは魔法使い共の方を!」


 ゲドの使途の魔法使い達がいる方向を指差し、洋司は声を張り上げる。


「あ、そうだった! 俺、その為に来たんだ!」


 携帯用無線機をポケットにしまいながら、一刀斎は後ろを振り返り、魔法使い達と対峙する。

 ローブやダークスーツなどの、黒装束に身を包んでいる魔法使い達を、一刀斎は見据える。


 粘臭剤の除去を終えた魔法使い達は、突然の乱入者である一刀斎の出現に驚きつつも、戦闘準備を整えている。

 三十人程の魔法使い達の胸元には、金色に輝くセフィルの塊が、足元には様々な魔法陣が出現している。


 セフィルの塊を魔法陣に投じ、魔法使い達は様々な魔法を発動し始める。

 雷や炎を発生させ、光り輝かせている者もいれば、防御用の城壁風の障壁を作り出している者もいる。


 対魔作戦群と会話している間に、魔法使い達は魔法の発動を進めていたので、一刀斎は少しばかり出遅れた事になるが、その程度の遅れは大して問題にはならない。

 魔法少女の魔法の発動速度は、超高速詠唱法を使える一部の魔法使い以外より、速いからだ。


「ゲフエクト!」


 一刀斎は、現象魔法の発動コマンド……ゲフェクトを宣言し、足下に星型の現象魔法陣を出現させ、首を飾るセフィロトの首輪を、金色に輝かせ始める。

 セフィロトの首輪は一刀斎の魔力をセフィルに変換し、チャージし終える。


「我がセフィルよ、雷となりて、我が身を包め!」


 発生させたい魔法現象を口にして、セフィルに与える属性を、一刀斎は指定。

 すると、セフィロトの首輪の中央にある、目の様な紋様の部分から、光線状に収束されたセフィルが、現象魔法陣に照射される。


 直後、現象魔法陣の中から雷が放たれ、一刀斎の身体を包み込む。

 雷の属性が与えられた雷のセフィルを身に纏い、一刀斎は纏魔の状態になったのだ。


 役目を終えた現象魔法陣は、金色の粒子群となり、空気に解ける様に消滅する。




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