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102 こいつを、これ以上進化させて……完成させたら、洒落にならない事になるな

 血の気の引く思いをしながら、惣左衛門は口惜しげに呟く。


「俺との実戦自体が、クロウリーのジョーカーを、完成に近づけてしまっていたんだ……」


 実戦という本当の戦いの繰り返しこそが、飛躍的に戦う力を高める事を、魔法少女として過ごした結果、惣左衛門は思い知っていた。

 様々なフィードバックを実戦から受けた上で、改良……進化させる経験自体が、強くなる為には、とても重要である事も、惣左衛門は自分の経験から、理解していた。


 そして、実戦からのフィードバックを受けた上で、進化し強くなるのは、魔法少女だけではない事も、惣左衛門は分かっていた。

 魔法使いの側も、同様に進化し……強くなるのだ。


 クロウリーの言葉通り、今現在の惣左衛門との戦いの経験からフィードバックを受ければ、ジョーカーは改良を施され、更に完成へと近付く。

 今のジョーカーでなら、魔法少女の中でも上位の者であれば、倒せるだろう。


 だが、この戦いのフィードバックを受けて、改良されたジョーカーは、更に強くなる。

 そうなれば、魔法少女の中でも上位の者ですら、勝てなくなってしまう可能性はある。


 何せ、天才である大魔法使いのクロウリーが、魔法少女の惣左衛門を倒す切り札として、密かに開発を進めていたのが、ジョーカーなのだ。

 完成に至ったとしたら、その強さは魔法少女の惣左衛門を、越えている可能性すらある。


 そんなジョーカーの進化に、自分が協力したに等しい事に、惣左衛門は今更になって気付き、衝撃を受けて愕然としたのである。


(こいつを、これ以上進化させて……完成させたら、洒落にならない事になるな)


 ジョーカーが完成したら、どうなってしまうかを考え、惣左衛門は背筋が寒くなる。

 銀の星教団自体は、既に壊滅同然の状態なので、ジョーカーが完成したとしても、勢力を取り戻すには、時間がかかる筈。


 銀の星教団の復活よりも、警戒しなければならないのは、完成に至ったジョーカーと魔法の多重発動技術が、他の魔法主義革命家団体に公開される事だ。

 魔法主義革命家団体の多くは、開発に成功した魔法関連の技術を、他の魔法主義革命家団体に公開する場合がある。


 公開された魔法関連技術の、代表的な実例は、シドリだろう。

 シドリを発明……開発したのは、烏雲大社ううんたいしゃという、日本の魔法主義革命家団体に所属する、繊維メーカーの研究員であった魔法使いである。


 完成したシドリに関する情報を、烏雲大社は独占せず、信頼出来る魔法主義革命家団体へと公開。

 結果、シドリは殆どの魔法主義革命家団体に普及し、魔法主義革命家団体の戦力を、大幅に引き上げた。


 他にも、優れた魔法の呪文など、開発に成功した多くの魔法技術を、魔法主義革命家団体が、他の団体へも公開する事は、広く行われている。

 優れた魔法情報の共有こそが、魔法主義革命を成功させる近道だというのが、大抵の魔法主義革命家団体において、共通認識となっているのだ。


 クロウリーも過去に開発した、様々な魔法技術を、自分以外の魔法使いが安全に使用出来る段階になった時点で、公開している。

 その代表的な例が、人型の魔法駆動巨像……ティターンとティターニアである。


 ティターンとティターニアを造り出す創造魔法自体は、魔法書から発見されたものだ。

 しかし、元々のティターンとティターニアを造り出す創造魔法は、使い難く難易度が高く、とても使い物にはならなかった。


 その創造魔法を改良し、武術を使える魔法使いであれば、大抵は使用出来るようにしたのが、クロウリーとルドラなのである。

 魔法武器である魔法駆動巨像を作り出せないクロウリーは、魔法呪文の研究と改良を担当、武術に通じたルドラなどが、発動実験を担当する形で、ティターンとティターニアを造り出す創造魔法は、改良を続けられた。


 武術に通じていれば、A級の魔力を持つ者なら単独でも、B級以下の魔力を持つ者なら、数人が力を合わせるだけで、ティターンとティターニアを安定的に造り出せるように、クロウリー達は魔法を改良し終えた。

 この段階に至り、クロウリーはティターンとティターニアの創造魔法の改良バージョンを、他の魔法主義革命家団体に公開したのである。


 コロッサス・オブ・リバティ程の大きさと強度は無いが、使い易く機動性や汎用性が高く、魔法の呪文による改造が容易で、少人数で運用出来る、クロウリー達が改良したバージョンのティターンとティターニアは、あっという間に魔法主義革命家団体に普及。

 魔法主義革命家団体側で使用される、標準的な魔法駆動巨像となったのである。


 他にもクロウリーが開発し、完成と言える段階に至った後、他の魔法主義革命家団体に公開され、世界中に広まった魔法技術は、色々と存在する。

 クロウリーは自ら開発した魔法技術が、トラブルを起こさない程度に、安定的に使用出来る段階……完成に至ると、惜しげも無く他の魔法主義革命家団体に公開するタイプの、魔法使いなのだ。


 ちなみに、完成といえる段階に至るまで、クロウリーが開発した魔法技術を、他の団体に公開しないのは、危険だからである。

 新たなる魔法技術の開発や実験は、人命を危険に曝す場合どころか、魔法汚染を引き起こす場合すらある。


 実験段階の危険な魔法技術を、他の団体に公開してしまうと、魔法の能力が低い魔法使いまでもが、手を出してしまい、危険な事態を引き起こしてしまいかねない。

 それ故、安定的に使用出来る段階まで、クロウリーは自分自身と信頼する部下のみで開発を行い、他の部下達や他団体には、極秘にするのだ。


 こういったクロウリーの開発姿勢の為、ジョーカーに関する魔法技術は完成するまで、他の団体に流出する恐れはないと考えられる(クロウリーの開発姿勢は、規格外犯罪対策局も把握しているので、惣左衛門も知っている)。

 だが、ジョーカーが完成に至れば、ジョーカーと関連する魔法技術は、他の魔法主義革命家団体に公開され、魔法主義革命家団体側の魔法使い達は、魔法の多重発動技術を手に入れる事になるのである。


 そうなれば、大抵の国では拮抗しているか、魔法少女側が優勢という状況が崩れ、一気に魔法主義革命家側が優勢になるのは、間違いない。

 魔法主義革命が成功してしまう国も、増えてしまうだろう。



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