表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/124

001 この国会議事堂にいた、全ての閣僚達と国会議員達の身柄は、既に我等……銀の星教団が抑えた!

「勝った……我等は勝ったのだ!」


 力強い男の声が、大ホール中に響き渡る。

 声の主は、ファンタジー映画に出て来る魔法使いが着ている様な、フード付きの黒いローブに身を包んだ、五十前後と思われる、白髪混じりの細身の男。


 大ホールの各所には、細身の男以外にも、黒装束の者達がいた。

 黒いローブやダークスーツに身を包んだ、怪しげな黒装束の者達が二十人程、大ホールの演壇上にいる細身の男に向け、歓声を上げているのだ。


「クロウリー様、万歳!」


 自分の名を称える歓声に、細身の男……アレイスター・M・クロウリーは、右拳を突き上げて応える。

 歓声に応え終えたクロウリーは右腕を下ろすと、大ホール内に並んでいる多数の椅子や、椅子の間の通路に座らされている人々を指差しつつ、大声で宣言する。


「この国会議事堂にいた、全ての閣僚達と国会議員達の身柄は、既に我等……ぎん星教団ほしきょうだんが抑えた!」


 クロウリーが「この国家議事堂」と宣言した事から分かる通り、この大ホールがあるのは国会議事堂。

 より正確に言えば、この大ホールは国会議事堂の正面から見て左側にある、衆議院本会議場である。


 演壇の前や、左右に広がる議席や通路には、手足を拘束された数百人もの人々が、集められている。

 その殆どが日本政府の閣僚達や、国会議員達……つまり、日本を仕切っている政治家達だ。


「これより我等は、日本を支配する者達を教化して支配下に置き、日本を魔法主義国へと進化させる!」


 堂々たるクロウリーの宣言に応え、衆議院本会議場の各所に配置され、政治家達の身柄を抑えている黒装束の者達が、喜びの声を上げる。

 この黒装束の者達こそが、クロウリーを教主とする、魔法主義というイデオロギーを掲げる魔法主義革命家団体、銀の星教団の魔法使い達である。


 西暦二千八年九月二十二日、午前十一時二十三分、国会議事堂は銀の星教団によって、完全に制圧された。

 かっては、日本最大の魔法主義革命家団体であった、銀の星教団が実行した最大の作戦……蒼天そうてんの二つ星作戦が、いよいよ最終段階に入ったのである。


 様々な都合によるスケジュール変更の影響を受け、二千八年九月二十二日の午前中、参院と衆院の本会議が、殆ど間を置かずに開催される事が、数ヶ月前に決まってしまった。

 参院本会議が終わり、衆院本会議が始ろうとする時間帯、閣僚達は当然として、衆参両院の議員の殆どが国会議事堂に集まるタイミングを狙い、国会議事堂を襲撃。


 立法府の頂点である国会議員達と、行政府の頂点である閣僚達の身柄を、一気呵成いっきかせいに拘束した上で洗脳を施し、魔法主義者に教化する……。

 この大胆極まりない魔法主義革命作戦こそが、大魔法使いであるクロウリーが計画した、蒼天の二つ星作戦なのだ。


 国会議事堂の制圧を終えた現在、国会議員達や閣僚達の身柄は、既に拘束済みである。

 後は彼等を、クロウリーが所有する魔法教典、「ケマの書」に触れさせ、洗脳するだけでいい。

 

 そうすれば、彼等は精神に魔法主義思想を刷り込まれ、魔法主義者に教化される。

 ケマの書によって魔法主義者に教化された者達は、クロウリーの同志となり、魔法主義社会の実現の為に、活動する事になるのである。


 国の中枢にいる人間達を洗脳し、魔法主義者に教化してしまえば、日本は魔法主義者の手に落ちたも同然。

 蒼天の二つ星作戦は、銀の星教団が、その存亡を賭けて実行した、最大の魔法主義テロ事件といえるだろう。


 それ程の規模の作戦を成功させる為には、当然の様に多大な犠牲が必要となった。

 魔法主義革命家達の天敵の目を、国会議事堂の襲撃作戦から逸らさなければ、蒼天の二つ星作戦の成功は、有り得ないからだ。


 魔法主義革命家達の天敵……その名は魔法少女。


 魔法使い達と同様に、魔法を使える存在でありながら、現在の社会制度を維持しようとする体制側の、少女の姿をした魔法の使い手達である。


 魔法少女達の目を、国会議事堂襲撃作戦から逸らす為、クロウリーは銀の星教団の残存戦力の殆どを割き、銀の星教団の最高幹部の一人……ルドラに預け、陽動作戦の囮として使ったのだ。

 囮部隊の全滅すら、覚悟の上で。


 大阪にある日本最大級のテーマパーク、グローバルスタジオジャパンヘの大規模テロ計画に関する情報を、事前に意図的に漏らす事から、陽動作戦は始まった。

 情報を漏らした目的が、魔法少女達の注意を、銀の星教団の主力部隊とグローバルスタジオジャパンに引き付ける事なのは、言うまでも無い。


 魔法少女達の注意を、グローバルスタジオジャパンでのテロ計画に集中させた上で、ルドラ率いる陽動部隊が、実際に襲撃を実行に移す。

 すると、大阪にあるグローバルスタジオジャパンにおけるテロ活動の鎮圧に、魔法少女達は専念する事になる。

 その隙に、クロウリーが率いる特殊部隊が、秘密裏に準備を進めていた、国会議事堂への電撃的な襲撃作戦を、実行に移すという訳だ。


 テロ活動とはいっても、破壊活動は基本的に、施設に限定される。

 従業員達や観客連などの非戦闘員を死傷させる事は、魔法主義革命家達の紳士協定、シュタイナー協定に違反する事になるからである。


 もっとも、シュタイナー協定は紳士協定でしか無いので、仮に破ったとしても、罰則がある訳では無い。

 故に、破られる場合もあるのだが、銀の星教団はシュタイナー協定を、基本的には遵守する団体なのだ。


 そんな銀の星教団の囮部隊により、九月二十二日の午前十時五十分……作戦の第一段階であるグローバルスタジオジャパンに対する襲撃が、開始された。

 その結果、魔法少女達はグローバルスタジオジャパンでのテロ鎮圧戦闘に、引き付けられる事となった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ