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桜の王子様Ⅱ 3

俺は次の日から、頻繁に1年生の教室へ行った。

女の子たちに見られながら、紅ちゃんを探す。



「紅ちゃん、一緒にお昼食べようか」

「え、私とですか?」

「うん。迷惑かな?」

「い、いえ、全然。あ、ありがとうございます」



ひょっとしたら、女の子たちに怪しまれるかもしれない。

告白してくれた女の子のように、俺と紅ちゃんが付き合ってるって勘違いする人もいるかもしれない。


でも俺は、紅ちゃんをいじめから守りたかった。


俺のような苦しい思い、

させたくなかったから。





今日はバイトも休みだから、

帰りも紅ちゃんを誘った。

二人並んで、歩く。


「今日も、お兄さんはお休み?」

「は、はい」

「そっか」


桑野くんは、やっぱり考え直してはくれなかったようだ。


「どうして学校に来てくれないんだろう」


俺が呟くと、紅ちゃんが俺の顔をチラチラと見る。

何か言いたげだ。



「ん、なにかな?」

「あの、兄から聞いていないんですか?学校へ行かない理由」

「うん、全然」

「そうですか・・・」



どうやら、この雰囲気だと

紅ちゃんは理由を知っていそうだ。


・・・教えてくれないかな。



なんて考えているうちに、

紅ちゃんの家に着いてしまった。



「送ってくださって、ありがとうございました。あの、兄に会われますか?」

「いいよ。明日また会えるからさ。じゃあね、紅ちゃん」


頭を下げる紅ちゃんに手を振って、

俺は自分の家に向かって歩く。








そして次の日も、紅ちゃんの教室に向かう。

女の子たちが見つめる中、教室の中にいる紅ちゃんに手を振る。


「紅ちゃ――」

「おい」


呼ぶ前に、誰かに肩を叩かれた。


振り向くと・・・


「あ・・・」


この間、紅ちゃんを囲んでいた男子3人だった。

鋭い目つきで俺を睨んでいる。


・・・怖い。



「な、なにかな?」

「ちょっと来い」


男子たちは、スタスタと歩いていく。


本当は着いていきたくなかったけど、

ここで断れば、回りの女の子に怖がっていることが伝わってしまう。


俺は笑顔を絶やさないようにして、

彼らの後ろを着いていった。





建物の陰まで来ると、3人は足を止めた。

一番目立つ男子が、俺を正面から睨む。


この人、紅ちゃんをいじめようとしていた人だ。



「お前さ、桑野紅とどういう関係?」



低い声が、俺を威嚇する。


・・・負けちゃいけない。



「紅ちゃんは、大事な後輩だ」

「後輩?」

「だ、だから・・・」


ぎゅっと拳を握って、勇気を出して言う。



「紅ちゃんに、ち、近づかないで!・・・く、くれる、かな」



「あ?」


3人が俺に迫る。


こ・・・怖い。



「なんでお前にそんなこと言われなきゃならねぇんだよ」

「お前何様?」

「つーかそれ、こっちのセリフなんだけど」



怖くて怖くて後ずさりをしていると、

壁に突き当たった。


もう、逃げられない。



・・・え?


こっちのセリフ?




「うう・・・っ!」



突然、お腹に鈍痛が走って、

おもわずその場に蹲った。



「なにが大事な後輩だ。キモいんだよ。お前」

「う・・・ぐ」


ど、どうして俺、

殴られ・・・たんだ?



二人に腕を掴まれて、

無理やり立たされる。



「その顔使ってヤりまくってるくせに」

「・・・え?」

「桑野紅にも手、出そうとしてんだろ!」



俺が・・・紅ちゃんに?



「ち、ちが・・・」

「うるせぇ!」

「あぐ・・・っ」


もう一度、お腹を殴られる。



痛い。


・・・怖い!



「お前こそ、桑野紅に近づいてんじゃねぇよ」



脳裏に、昔の記憶がよみがえる。


嫌だ。



・・・助けて!

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