↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/10

桜の王子様Ⅱ 10

店に入ると、

美華さんが明るい笑顔で迎えてくれた。


「あら、那智くん。もう平気なの?」

「はい!ご心配おかけしました」

「いえいえ。よかったわ、本当に」



美華さんはほっとした表情で俺を見つめる。

それほどまで俺のことを心配してくれていたんだ。


5日ぶりの花の香り。


休んだ分、今日からしっかり働かなきゃいけないな。






あの出来事の次の日、

俺は学校に行くことができなかった。


行こうという気持ちはあった。


でも、桑野くんが許してくれなかったんだ。



『お前はバカか?そんな身体で行けるわけないだろ』

『でも、行かなきゃみんな心配するからさ』

『心配させとけ』



ベッドの上にいる俺を残して、

桑野くんがシャツを脱ぐ。



『桑野くん』

『あ?』

『桑野くんは学校、行くんだよね』


桑野くんがそんなことを言う俺を睨む。


『お前が行けって言ったんだろ』

『そ、そうだよね』



確かに昨日、学校に行くって約束してくれた。


だから桑野くんの行動は正しいんだけど、

でも、だけど・・・


俺の中のすごくワガママな俺が、

行かないで一緒にいてほしい、って思ってる。



『・・・ったく』


桑野くんが大きなため息をつく。


そして、近くにあったトレーナーを手に取った。

制服じゃなくて。



『冗談だ。飯買ってくる』

『あ、うん。・・・・・・え?』



桑野くんはそのままアウターを着て、

外出してしまった。



冗談って・・・なにが?


俺の頭の中には、たくさんのはてなマークが浮かぶ。



結局その後、

桑野くんは学校に行かないで、ずっと一緒にいてくれた。



そして今日、二人で一緒に登校して、

桑野くんは自分の家へ帰る。


今日からまた、一人暮らしに逆戻り。



桑野くんと過ごした数日間、

本当に楽しかったなぁ。






「ところで、那智くん」

「はい」


美華さんが少し困ったような顔をしている。


どうしたんだろう。



「最近、怪しい男の子たちが店内を覗いているんだけど」

「怪しい・・・男の子?」

「そう。那智くんが怪我した次の日くらいからかな。

 那智くんと同じ制服の、3人組の男の子が覗いてて」



3人組の、男の子?


・・・あ、まさか。



「でね、目が合うと、ニヤニヤしながら会釈するのよ。

 気がつくといなくなってるんだけど」



美華さんを見てニヤニヤ・・・。


もう、考えられる可能性はひとつしかない。



あの3人組が、美華さんのことを見に来てるんだ。



『バイト先の人妻一筋だからな』


桑野くんがあのとき、あんなこと言うから!



「すみません、美華さん」

「え?那智くん、知り合い?」

「知り合いというか、なんというか・・・」



美華さんがまだ不思議そうな顔をしている。


でも、言えるわけがない。



彼らは、俺の好きな人を見に来てるんだ、なんて。



「・・・桑野くんの、バカ」



今日、バイトが終わって迎えにきたら、

このことを伝えて怒ってやろう。


そう考えると、

自然と夜が楽しみになってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。