ヤミに包まれて
ある日、私はヒカリを見た。
ギラギラと熱く、眩しく輝くヒカリを。
その時の私はヤミを纏っていた。
ジメジメと悲しく切なく凍えるようなヤミを。
ヒカリと対峙して私のヤミは怯えた。
かき消されるのが怖くて、飲み込まれるのが恐ろしくて、包まれるのが嫌だった…。
ヤミの反応と同じく、私もヒカリを拒んだ。ヒカリに照らされて素直になるのが、本心を見られるのが、不安でしょうがなかった。
ヤミと私は少なからず繋がってしまっていた。
ヤミは隠してくれるから。
気弱な私を。
不器用な私を。
強がる私を。
バカな私を。
そんな私をヤミは覆い隠してくれた。
周りから見えなくしてくれた。
私にとってヤミは、なくてはならないものになっていた。
寂しく、冷たい世界の中でヤミだけが救いだった。
だからヒカリによってヤミを奪われるのは恐怖以外の何でもなかった。
ヒカリはその輝きを増していた。
ヤミは、さらに怯えていた。
ヒカリに照らされて、自身の闇が薄らいでしまっていたからだ。
ヤミが私の体に強く寄り添う。
しがみつくように、抱き締めるように、強く。
私もそれに応えて、ヤミを抱き締める。自らをかばうように、強く。
ふと…抱き締めた腕の中、自分の胸に目をやった。
そこには小さな小さな、けれど確かな…ヒカリが…あった。
私とヤミとが繋がっている心に、ヒカリが生まれていた。
私の心臓の鼓動に共にトクン、トクンと脈を打ちながら。
ヤミは震え始めていた。闇の濃さはどんどんと薄くなっていく。
ヒカリによってその大きさも縮められてゆく。
ヤミが焦っているのが私にも感じられた。
ヤミが小さくなってゆく…全身を覆っていた闇はもう、胸の部分だけにしか残っていない。
「消えないで!」
小さく小さくなってゆくヤミ。私は胸を手で押さえた。ヤミが消えないように、ヤミから離れないように。
でも私の胸には…確かに…ヒカリが脈打っている…。
次第に明るく、輝く私の心。
ヤミは…消えていった。
ヒカリに照らされる私の体。
ヒカリ輝く私の心。
焼かれるほど熱いと思っていたその光は、温かく心地よいもので。目が潰れるほど眩しいと思っていたその光は、優しく私を包んでくれていた。
私の心臓の鼓動に合わせ、さらに光は強くなってゆく。
「あったかい…」
それから、全てが変わった。
ヒカリがそばにいれば、私は前向きに行動できるし、自信を持って喋れるし、失敗だって怖くない。
ヤミのいない今、私は…。
ヒカリに照らされている少女の、
光輝く少女の後ろには、
長く長く、
ヒカリの輝きに反比例するように、
暗く、黒く、深い、ヤミをその身に宿した
カゲが
どこまでも続いていた…。