7話 恋人たち
生い茂った枝葉の影で、二つの白い身体が重なり合って蠢いていた。
身体が位置を変えるたび、地面に降り積もった枯れ葉がカサカサと乾いた音を立てる。涼しい夜気の中で、そこにだけ匂いと湿り気が濃厚に立ちこめていた。
少女はほとんど裸だった。唯一身につけている肌着は胸元までたくし上げられ、小さいながらも張りの良い乳房が二つ丸出しになっている。冷たい夜気に触れて、薄桃色の乳頭はかたく尖っていた。
その下方、肋骨が浮き出た脇腹、滑らかな腹部を経て、小さな褐色の茂みの辺りで、少年の頭部が動いていた。熱に浮かされたように少女の太股の間から溢れだす蜜を舐め取る。少年の舌が少女の鋭敏な部位に触れるたび、少女の全身を細かな戦慄が走りぬけ、切なげな吐息が漏れる。紅潮した長い耳がびくぴくと痙攣する。
やがて、少女は少年の上に腰を落とした。スリムな体型の割に意外と重量感のある臀部をゆっくりと降ろし、熱をもち、溶けたようになった中心部で、屹立した少年の物を包み込んだ。
挿入の刺激だけで、たちまち少年は中に放ってしまった。しかしそれは少しも硬さを失わなかった。そのまま二人は動き続ける。再び快感が高まっていく。汗まみれになりながら身体を打ち付けあう。動きは激しさを増していく。飛び散った汗が落ち葉にぱたぱたと降り注ぐ。とうとう少女は耐えきれなくなり、全身をぐぅっと弓なりにのけぞらせて硬直し、果てた。ほどなく少女の下で少年も達し、先程よりも多量に放った。
少年と少女は並んで横たわった。汗と体液にまみれた二人の身体からは湯気が立ち上ている。視線と、指先が絡み合う。少女の手が少年の頬に触れる。少年はその手を愛おしげに唇に運び、口に含む。
その少年、パステムは無上の幸福感に満たされていた。まさか自分がリウィと結ばれるとは。これは夢に違いない。リウィは16歳。この修練者のチームでも特に人気のある高嶺の花だ。すらりと背が高く、仲間思いで優しくて、頭の回転も速い。大きなアクアマリン色の瞳はキラキラと輝き、見ていると吸い込まれそうになる。やわらかそうな薔薇色の唇の感触を想像しただけで胸が高鳴ったものだ。
対して自分はチーム最年少の12歳。おまけにチビで劣等生。
人間の町で、人間とともに育った彼はエルフ族の知識や技術などとは縁のない生活を送ってきた。今回、母方の親族からの要望で修練者の訓練を受けさせられることになったが、はじめは苦痛でしかなかった。厳しい山中での生活。来る日も来る日も続くきつい山歩き。馴染めないチームメンバー。味気ない食事…。脱走を考えない日はなかったが、疲労のあまり実行することはできなかった。
そんな彼に手を差し伸べてくれたのがリウィだった。いつも行列のはるか後ろで、ひとりだけ脱落しそうになりながら必死に付いていこうとしていた彼に歩調を合わせ、並んで歩きながら励ましてくれたのだ。彼女のおかげで、やがて訓練にも慣れ、チームにも馴染めるようになっていった。
リウィの事は尊敬していたし、憧れてもいたし、それに秘かに好意も抱いていたが、この夜、彼女からお誘いを受けるまでは自分と結ばれることがあるなんて思いもしなかった。今でもまだ現実とは思えない。
「あのっ…オレなんかで、よかったの?」
「オレなんか、なんて言わないで。とっても素敵だったよ君」
「だってオレ、はじめてだったし、それに…」
「もう、ウジウジしないの。ほんとによかったんだから」
「ほんとに?」
「うん、だからパスはもっと自信を持って」
「…ありがとう」
「こちらこそ。…ほんとに君って可愛い!」
(可愛い、か)リウィの胸に抱きかかえられながらも、若干複雑な思いを抱くパステムだった。しかし顔に押し付けられる乳房の感触に、はやくも回復したパステムのものは反応しはじめていた。ほどなくリウィもそれに気づき、若い二人は再び体を重ね合わせた…
パキッ。
行為の後に疲れ果てて眠りに落ちていた二人のすぐそばで、何者かが枝を踏む音がした。