~河戸隆二の場合~ 3
マッチョ男は指をポキポキと鳴らしながら教壇を下りると、ゆっくりと俺の方へ近づいてくる。
こいつは他の雑魚共とはレベルが違う。
俺はすぐにそれを感じ取った。
本当に強い奴は相手の実力がどの程度かすぐにわかるもんだ。
「このわしに戦いを挑んでくる奴は久しぶりだ」
そう言うと、マッチョ野郎は上着を脱ぎ捨てた。
「小僧、せいぜい楽しませてくれよ」
「へっ、楽しむ前にノックダウンしてなきゃいいけどな」
俺も学ランを脱ぎ捨てた。
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
俺と奴の気合の掛け声で教室のガラスがビリビリと振動する。
クラスの奴等はすっかり怯えて教室の隅で一塊になってやがる。
まあ、そのほうが戦いの邪魔にならなくて好都合だけどな。
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
俺と奴の気合による鍔迫り合いはまだ続く。
今のところほぼ互角だ。
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
俺は徐々に気合を高めていく。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
奴の気合もだんだん高まっていく。
窓が粉々に砕け散った。
教室の中では教科書やノートが乱舞している。
クラスの奴等は吹き飛ばされないよう必死に教室の後ろロッカーにしがみついていた。
先に動いたのは奴の方だった。
ものすごいスピードで迫ってきたかと思うと、急に俺の目の前から消えやがった。
「くっ、どこに消えた!?」
俺は左右に首を振って奴の姿を探すがどこにもいない。
――上か!
だがそこにも奴はいない。
「残念、後ろだ!」
俺は振り返る間もなく、背中に奴の蹴りを喰らって思いっきり吹き飛ばされた。
教室の壁に激突した俺は「ぐっ」と呻いた。
とどめを刺そうと、奴が超スピードで迫ってくる。
奴の繰り出した右ストレートを俺は間一髪のところでかわした。
後ろの壁に大穴が開いた。
俺も反撃に出る。
ワンツーからハイキック。さらに連続パンチ。
だが奴はすべての攻撃をガードしやがった。
「はっはっは。甘いな小僧」
今度は奴の攻撃ターン。
凄まじいスピードのパンチを次々と打ってきやがった。
俺はガードを固めたが、そのガードの上からでも容赦なくダメージを喰らった。
奴の攻撃は一先ず収まったところで、俺と奴は教室の中央でまた睨み合いになる。
息が上がっているのは俺だけだった。
奴は涼しい顔をしている。
すると不意に、奴がファイティングポーズを解いた。
そして、不敵な笑みを浮かべて言った。
「ふっふっふ。お前はたいした奴だ。そんなお前に敬意を表して一ついいことを教えてやろう」
奴は俺に向かって右手を突き出して開いた。
「わしはまだ五十パーセントの力しか出していない」
「何…だと…?」
俺はヘビー級の衝撃を受けた。