~河戸隆二の場合~ 2
俺達のクラスは今、すげーやばい状態になってる。
どのくらいやばいかというと、そりゃあもうスーパーヘビー級のやばさだ。
信じられねーことだが、二時間目の数学の授業中にいきなりテロリスト共が襲撃してきやがったんだ。
テロリストの人数は四人だった。
下っ端の三人がナイフを振りかざして「動くな!」と俺達を脅している。
テロリストのリーダーらしきマッチョ野郎は教壇の上にふんぞり返り、俺達にこう宣言した。
「この教室は我々が占領した。抵抗する奴が一人でもいれば全員皆殺しにする」
クラスの奴等はそれを聞いて大パニックを起こしやがった。
キャーキャーうるさい悲鳴を上げる女や、泣き崩れる奴も居る。
モブオの野郎なんかション便までちびってやがる。
だが、俺は冷静だった。
俺だけは冷静だった。
本当に強い男ってのは、どんなやばい状況でも慌てないものだ。
俺はしばらくの間、奴等におとなしく従う振りをしてチャンスを待っていた。
もし俺一人だったなら、すぐにでもテロリスト共全員を半殺しにしてやれるんだが、この教室には足手まといになる奴等がたくさん居る。
俺が下手に動けばあいつらが殺されるだろう。
そうなったら、さすがに俺も寝覚めが悪くなる。
三十分くらいたった頃だった。
急に下っ端の一人が、俺達の机の方に向かって歩いてきやがった。
何するつもりだろうかと俺が様子を見ていると、あろうことかあのゲス野郎! 醜悪な笑みを浮かべて亜美の腕を掴みやがった!
そのまま嫌がる亜美を引きずるようにして連れて行こうとしてやがる。
もう我慢できねえ!
俺は立ち上がって叫んだ。
「てめえ、このチ○カス野郎!! 亜美からその薄汚ねえ手を離しやがれ!!」
ゲス野郎は怒りの表情でこっちを振り向く。
俺は目にもとまらぬ速さで奴に接近すると、渾身の右ストレートを奴の顔面に喰らわせた
奴は十メートルくらい吹っ飛んで、ぴくりとも動かなくなった。
それを見た他の下っ端二人がナイフを振りかざして俺に襲い掛かってくる。
まず、一人目が俺の喉元に向かってナイフを突き出してきた。
俺はそれをかわしざまにカウンターを奴の顔面に叩き込んでやった。
当然、男はノックアウトだ。
続いて、二人目がナイフで連続突き攻撃を繰り出してきた。
俺は華麗なフットワークでそれをかわすと、男にボディブローを一発入れた。
男の顎が下がったところで、アッパーを叩き込む。
男は後ろにぶっ飛びノックアウト。
教室中に歓声が沸き起こった。
亜美が俺の方に駆け寄ってきて、潤んだ目で、「隆二君ありがとう」と言った。
こりゃあ、完全にこの俺にほの字だね。
「へっ、あんな雑魚共が相手じゃあ本気を出すまでもなかったぜ」
俺はそう言うと、リーダーのマッチョ男を指差す。
「最後はてめえの番だ、そんなとこでふんぞり返ってねえでこっちに下りてきやがれ」