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~篠原亜美の場合~ 2




その異変が起きたのは、一時間目の社会科の授業中のことでした。


わたし達はやる気のない青山先生の授業をいつものようにぼーと聞いていました。


すると突然――、本当に突然のことでしたが、剣や斧を持った大勢の男達が教室に入ってきました。


わたし達は、何が起こったのか理解できずにただ呆然としていました。


青山先生が『な、なんですか? あなた達は?』と怯えた声で男達に話しかけると、男の一人が剣を抜き、先生の喉に突きつけました。


青山先生は『ひっ』、と短い悲鳴を上げると石像のように動かなくなりました。


みんなはそれを見てパニックになり、一斉に教室のドアから逃げ出そうとしました。


しかし、教室の前と後ろにあるドアの前に武器を持った男が立ちふさがっていたので、誰も逃げ出すことが出来ません。


「席に戻れ!」と男が怒鳴り声を上げて剣を振りかざしたので、わたし達は慌てて自分達の席へと戻りました。


みんなが自分の席に座ると、男達の中から一番体の大きな人(たぶんリーダーかな?)が教壇に上がり、バン! と大きな音を立てて教卓に手を置きました。


そして、怯えるわたし達に『この教室は俺達が頂いたぜ!』と言いました。


その瞬間、わたしは自分が今どういう状況に置かれているのかを理解しました。


そう、わたし達の教室はテロリスト達に襲われたのです。


わたしはお父さんとお母さんのことを思い出して泣きそうになりました。


もう二度と会えないかもしれないと思ったからです。





テロリストの男達があらわれてから三十分ぐらいが経った頃のことです。


突然、テロリストの男の一人がわたしの方に歩いてきました。


男は下心丸出しの顔でわたしの前に立つと、『お嬢ちゃん可愛いね、ちょっと一緒に来てもらおうかな』といってわたしの腕を掴みました。


わたしは悲鳴を上げて抵抗しましたが、男は無理やりわたしを引きずって行きます。


わたしがもう駄目だと絶望しかけたそのとき、『待て!』と叫んで一人の男子が立ち上がりました。


それは俊君でした。


「亜美から手を離せ!」


俊君は臆することなく、男の前に立ちはだかります。


「なんだ~、お前、オレの邪魔する気か~」


男は私を掴んでいた手を離すと、鞘から剣を抜いて振り上げました。


わたしは「危ない!」と叫んで思わず両手で目を覆いました。


ビュン! と剣が空気を切り裂く音がします。



わたしが恐る恐る目を開けると、俊君は両手を合わせて相手の剣を受け止めていました。


「こ、この野郎!」


相手の男はびっくりしたような声を出しました。


俊君と男はにらみ合いになります。


俊君が『やぁっ!』と一声上げて剣を引っ張ると男から剣を奪い取りました。


今度は逆に俊君が男に剣を突きつけます。


「お、俺が悪かったよ。許してくれ」


男は床に手を付いて謝罪しました。


俊君は男から剣を引くと、尻餅を付いている私の手を取り『亜美、大丈夫だった?』と言って引っ張り起こしてくれました。


そして、わたしと俊君は手と手を取り合ったまま、しばらく見つめ合います


そのときの俊君は、私の知っている俊君より150%くらいかっこよく見えました。


「さあ亜美、一緒に逃げよう!」


こうして俊君に手を引かれ、私は教室を後にしました。





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