~篠原亜美の場合~
はじめまして、わたしの名前は篠原亜美です。
虹橋中学の二年生で今年の十一月に十四歳になります。
趣味は友達とカラオケに行くことで、友達からはいつも、『亜美ってほんとに歌上手だねー』って褒められます。
学校の部活はバスケ部に所属しています。
でも運動はちょっと苦手。シュート練習のときは全然ゴールネットに入らないし、練習中によく転んだりして笑われます。
わたしの将来の夢は、アイドル歌手になることです。
小さいころから周りの人に、『亜美ちゃんは可愛いね』って褒められることが嬉しかったので、将来はもっと大勢の人から、『亜美ちゃん可愛い~』って言われて、みんなが憧れるようなアイドルになりたいです。
あと、これは内緒のことだけど、自分でも日本で一番可愛いのはわたしだと密かに思ってます。
いつもテレビに出てるアイドルの子とかを見ると、亜美の方がずっとずっと可愛いのにって思ってるのはわたしだけかなぁ?
でも、彼女達は顔はそんなに可愛くないけど、自分を可愛く見せる仕草や演技はとても上手だなぁと思います。
わたしも、そういうところはもっと勉強しなくちゃ。
そうすれば、将来は日本で一番人気のアイドルになれる……かな?
うん、きっとなれる。
恋愛に関しては、わたしはとっても奥手です。
これまで好きになったことがある男子は二人居ましたが、告白はもちろんバレンタインデーにチョコレートを渡すことも出来ませんでした。
友達からは、『亜美の方から告白したら絶対OKもらえるよ~』って言われて、わたしもそう思ったけど、恥ずかしくてやっぱり告白することが出来ませんでした。
二人の名前は鈴木君と三浦君っていいます。
今でもその二人のことはまだ少し好きだけど、昔ほど好きではありません。
なぜなら、わたしには新しく好きになった人がいるからです。
彼の名前は佐々木俊君っていいます。
俊くんはジャニーズ系の中性的な顔のイケメンでスポーツも万能です。
二年生なのにバスケ部では彼より上手な人はいません。
さらに、明るい性格で誰にでも優しいので、クラスの女子の半分以上は彼に夢中です。
わたしも隣の女子のコートから、いつも彼のことを憧れの眼差しで見ていました。
彼がひょっとしたらわたしのこと好きなのかな、と思い始めたのは一ヶ月くらい前のことです。
授業中や休み時間などに時々、彼の視線を感じることがあるからです。
彼がチラッチラッとこっちを見ているのに気づくと、わたしはいつも顔が真っ赤になって体が熱くなってしまいます。
他の男子からの視線を感じることもありますが、その人は全っ然わたしのタイプじゃないので逆に寒気がします。
わたしは俊君のことを好きになってから、よく空想をするようになりました。
それは、ときに少女漫画のように甘い恋物語であったり、ときに映画のように波乱万丈な物語だったりしますが、
いつも最後は、わたしと俊君が恋人同士になって結ばれるハッピーエンドの物語です。
そして今日も、一時間目の社会科の授業中、わたしはぽーとしたまま空想の世界へと旅立っていきました。