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伝わらない想い  作者: ミサ
6/14

6 気づいた想い

「初めまして! 真帆です。よろしくね」

「あ……初めまして、唯香です。よろしくお願いします」

 最初は、髪の毛を綺麗に巻いてバッチリメイクをしている真帆に圧倒されてた私だったけど、見た目に反して真帆はさっぱりした性格で、私達はすぐに仲良くなった。


「ねぇ、一緒に仕事する瑛とリョウってモデル歴長いのよね? ベテラン過ぎて少し緊張するんだけど」

 撮影の合間に真帆が意外にも弱気な発言をした。

「そうなの? 真帆、すごく余裕の笑顔だったけど?」

「ホント? そんな風に見えた? 良かったぁ、引きつった笑顔だったらどうしようと思ってたから……でも、唯香も余裕そうだよね? もしかしてモデル歴長いの?」

「えっ! ううん、まだ1年位。今回の撮影が本格的なモデルの仕事よ」

「その割には慣れてる感じだよね? リョウとのショットなんて、すごく自然だったし」

 感心した様に言われて、私は少しだけ嬉しくなった。

「ありがとう、そう言って貰えてうれしい」

 私の言葉に真帆はニッコリとほほ笑んだ。

「これから一緒に仕事していくのが、唯香で良かった。仲良くしてね」

「うん、私も真帆で良かった。私の方こそ仲良くしてね」

 そして私達は仕事でもプライベートでも仲の良い親友になった。

 瑛も気さくな性格で私達はとても気が合い、仕事以外でもよく遊びに行ったりなどして親交を深めた。

 リョウもそんな私達とよく一緒に出掛けていたので、4人で一緒に居るのが当たり前の様になっていた。

 そして私は高校を卒業し、短大へと進学した。

 別に大学へ行かなくても私は構わなかったけど、両親や愛華さんにせめて短大は卒業した方がいいと説得されたのだ。

 短大へ行っても私は学校生活を楽しむより、モデルの仕事に重点を置いていた。

 真帆はモデルをしながら専門学校へ通い、デザインの勉強をしている。瑛は国立大学に通っていて、いずれ親の会社を引き継ぐつもりだと話していた。

 リョウは大学へ進学してからはモデルの仕事を減らしていて、それなりに大学生活を満喫している様だった。その為、私達は高校の頃よりも会う機会が少なくなっていた。



 そんなある日、私は1人で買い物に出掛けた時に、2人で仲良く歩いている真帆とリョウを見かけた。

「え? 真帆、何で……」

 今日は大事な用事があるから、私に付き合えないと言っていたのに……

 そこまで考えて、私はある結論にたどり着いた。

 そっか……2人は付き合っていたんだ。

 納得した瞬間、私の胸がズキンと痛んだ。

 何で、苦しいの?

 そう思った時、頬を濡らす感触に思わず手を触れた。

 涙? どうして?

 買い物をする気分にもなれなくて、そのまま自宅であるマンションへと戻った。

 短大に入学した際に始めた1人暮らし。今日ほど1人で良かったと思った事はない。

 玄関を閉めた瞬間、私はボロボロと涙を零して声を出しながら泣いていた。



 --- ピンポーン ---

 玄関のインターフォンの音で目が覚めた。

 どの位経っただろう? 気づけば私は泣き疲れてそのまま眠ってしまっていた。

 時計を見ると、夜になっていた。

 再びインターフォンが鳴った。

 誰?

 人が訪ねてくるなんて滅多にない私は、恐る恐る玄関へと向かう。

「どなたですか?」

「結唯子……俺、遼祐だけど」

 何で? リョウが家に?

「何?」

 玄関越しに訊ねると、リョウが心許無い様子で答えた。

「あのさ……話があるんだ。少しだけでいいから、時間くれないか?」

 私は躊躇った。今の気持ちで彼に会うのは余りにも辛い。

 黙っている私に、リョウは更に懇願してきた。

「頼む!」

「……少しなら」

 渋々と言った感じで、私は玄関を開けた。

 ホッとした様にリョウは私に笑いかけてから、訝しげな表情をした。

「結唯子? お前、何かあったのか?」

「え?」

「目が腫れてる…」

「あ…今まで眠っていたから、腫れてるんじゃないかな」

 慌てて目を押さえながら答える。

「そっか、ならいいんだ」

「それで……話って?」

 私はさっさと用件を聞いて、彼を帰そうと必死だった。

「あ、あぁ……これ」

 そう言ってリョウは、手にしていた小さな紙袋を私に差し出した。

「な…に? これ」

 紙袋に刻印された文字は、有名な宝石店のものだった。

「結唯子、今日誕生日だろ? だから、プレゼント」

 リョウはぶっきら棒に言うと、紙袋を私に押し付ける。

「何で?」

 紙袋を押し返しながら私は彼をみた。

「何でって…お前に似合うと思ったし、それに…」

 リョウはそこまで言うと、何故か黙ってしまった。

「それに?」

「と、とにかく開けてみろよ!」

 私はそっと袋の中身を覗いてみた。

 小さな箱が入っている。それを手に取ると、包みを剥がして蓋を開けた。

「これは……」

 箱の中に入っていたのは、ダイヤのピアスだった。

「結唯子に似合うって思ったんだ。それに、ずっと身に着けていてほしいから」

「どうして?」

 何で? そんな思わせぶりな事するのよ。リョウには真帆がいるじゃない!

 涙が滲んでくる。

 あぁ、私、リョウが好きなんだ。

 口は悪いけどいつも私の事を気にかけてくれて、それがいつの間にか居心地のいいものになっていた。

 今頃、気づくなんて私ってば馬鹿!

「どうして……私に?」

「結唯子が好きだからだよ。いつも一生懸命なお前にいつの間にか惹かれてた」

 珍しく頬を赤らめながら、リョウは真っ直ぐ私を見つめた。

「嘘っ! 遼祐には真帆がいるじゃない」

 私はリョウに向かってそう告げていた。

「はぁ? 真帆? 何でここで真帆が出てくるんだよ?」

「だって、遼祐と真帆は付き合ってるんでしょ? 今日……見たの、2人が仲良く歩いてるの」

 首を傾げるリョウに私は淡々と答えた。

「今日…って? あ! もしかして俺と真帆がこれを買いに行くところを見たんだ」

「え?」

「実は……結唯子がどういったのが好きなのか分からなかったから、真帆に手伝って貰った。ピアスならずっと付けていられるだろ? まぁ、撮影で外す事もあるかもしれないけど、指輪やネックレスよりは失くす可能性は少ないしな」

 リョウは少し照れた様に笑った。

「私……遼祐と真帆が付き合ってるんだと思ったの」

「俺が好きなのは結唯子だよ。大学に行ってからはなかなか会えなくなって、どんどん綺麗になっていくお前を見ていたら、このままじゃ他の男に攫われるって思って……俺」

「遼祐?」

 真っ赤な顔で俯く彼が意外で、私はじっと彼を見つめた。

「私も……遼祐が好きよ……っわっ!」

 話している途中で、いきなりリョウが身体を抱き締めた。

「ち、ちょっと遼祐! 家の前でやめてよ」

 逃げようと身を捩ると、抱きしめる腕の力が弱まった。

「だったら……中に入れて」

「…っ!」

 耳元で囁かれて、私の頬が朱に染まる。

「結唯子…可愛いなぁ」

「も、もうっ! からかわないでっ」

「からかってないよ……本当に可愛い。ねぇ、部屋に入れてよ」

「だ、だけど……」

 いくら両想いかもしれないけど、そんなすぐに部屋の中に入れるのもどうかと…

 躊躇う私にリョウは事もなげに言った。

「あのさぁ……周りのみんなは俺達が、高校の頃から付き合ってると思ってるんだけど?」

「え?」

「真帆なんて今日、『いいなぁ、唯香とリョウっていつでもラブラブね』とか言ってたけど」

「は?」

「愛姉だって前に『遼祐、結唯ちゃんと付き合うんなら真剣に付き合いなさいよ! 遊びだったら私が許さないからね』って言ってたし」

「……」

「だから、ね? 結唯子、中に入れて」

 にっこりとほほ笑まれ、私はもう何も言えずに黙って部屋の中へと通した。

「おおっ! これが結唯子の部屋か……お前、趣味良いな。落ち着く部屋だ」

 そう言って部屋の中を見回している。

「本当? 散らかってるけど…」

 恥ずかしくて私はキッチンへ行くと、コーヒーの準備をした。

「いや、俺の部屋に比べたらすっごく綺麗だけど」

 彼はリビングのソファに座って、私の方を見ている。

 ドリップしたコーヒーの香りが部屋の中を満たした。

「うん、いい匂い」

 カップに入れて、遼祐の前に出すと彼はそれを飲んだ。

「で、結唯子。俺はもうお前の恋人でいいんだよな?」

「……私でいいの?」

「結唯子以外の女は興味ないよ」

 そう言うとリョウは私の手を取り、その手にそっと唇を寄せた。

「遼祐!」

 慌てて手を引込めようとする私の手を、彼は強く握りしめる。

「俺のものだ……結唯子。絶対に離さないから」

 いつもとは違う真剣な眼差しに、私の顔は真っ赤になってると思う。

「ねぇ…結唯子、ピアス付けてみて?」

 そう言うと、私にピアスの入った箱を差し出した。

「うん」

 私は頷くと、台の上からピアスを取るとそれを付けようとした。

「待って…俺が付けても良い?」

 リョウは私の返事を待たずにピアスを取り上げると、私の耳を自分の方に向ける。

「痛かったら言って」

 彼がピアスホールにピアスを通しているのが気配で判る。

「大丈夫…痛くない」

 左右の耳にピアスを嵌めると、リョウは私をそっと抱きしめた。

「遼祐!」

 驚いて離れようとする私を強く抱き締める。

「逃げるなよ! 今日は何もしないから。結唯子、誕生日おめでとう……これからは毎年、俺がお前の誕生日を祝うからな。その日は空けておけよ」

「うん、ありがとう。遼祐」

 彼の腕の中で頷くと、不意に顎を持ち上げられてリョウの唇が私の唇に触れた。

 最初はそっと触れるほどの微かなキスだったのに、何度か触れてくるうちにそのキスは段々深くなってきた。

「…んっ! り、遼祐っ」

 彼のキスが貪欲なものに変わってきた事に気づいた私は、怖くなって顔を背けてしまった。

「……ごめん、つい。でも結唯子、俺は本気だから。お前の事を誰よりも大事に思ってる。気づいてしまったから、もう抑えてなんかやれない。だから、お前も覚悟して」

「……覚悟って?」

「身も心も全て俺のものになる事……お前の全て…これからの人生も俺と一緒にいる事」

「遼祐?」

 そんな大げさな……そう言おうとして口をつぐんだ。

 彼の表情があまりにも真剣だったから、私はただ頷いた。

 そんな私を見て、リョウは嬉しそうに笑った。

「じゃ…今日は帰るよ。このまま居たらキス以上の事を始めそうだしな」

 そして、私を離すとソファから立ち上がった。

「ありがとう…遼祐。このピアス大事にする」

 私はお礼を言ってなかった事に気づいて慌てて彼に告げた。

「あぁ、出来るだけ外さないで」

 部屋を出る時、軽く触れるだけのキスをすると、リョウは笑顔で帰って行った。



 それからは暇があれば、リョウは私の部屋へと訪ねて来た。

 一緒に夕飯を摂る時もあれば、外食をする為に出掛ける事もあった。

 お互いの休みが合う日はデートで遠くまで足を延ばして、夜は私の部屋に泊って行く事もあった。

 そんな日々を過ごしながら、私達は順調な交際を続けていた。


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