表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝わらない想い  作者: ミサ
11/14

11 失恋と後悔

これで、もう彼に会うことも無いと思っていたのに。

 それから数週間後、再び撮影で顔を合わす事になってしまった。

 何でも前回の【ディア】での特集は好評だった様で、今回は3か月連続での特集記事を載せるというものだった。

 撮影当日、スタジオ内は【ディア】のスタッフ、【アンジェリア】のスタッフが、撮影の段取りを確認したりして慌ただしい雰囲気だった。

 私は早めに来てメイクと衣装を着替えていたので、スタジオへ入るとみんなの仕事の様子を眺めていた。

 メイがスタジオ入りして来た。

「唯香さん……おはようございます」

 私の方へやって来ると、メイは挨拶をした。

「おはよう、メイ。今日はあなたがメインね? 頑張って」

 励ますように言うと、メイは嬉しそうに頭を下げた。

「はい、よろしくお願いします」

 私は微笑むと、メイクの石原さんと一緒にスタジオの隅に行き椅子へと腰かけた。

 メイは朝倉さんに促がされて、着替える為に控室へと消えていった。



「お早うございます! 今日はよろしくお願いします」

 そう言って、リョウがスタジオへと入って来た。相変わらず人懐っこい笑顔でスタッフ皆に挨拶している。

 思わず身体が強張る。

 だけどリョウは私には近づく事は無くて、着替えを済ませてスタジオへ戻って来たメイを見つけると、嬉しそうに彼女の方へと近づいて行った。メイはそんな彼に笑顔で挨拶を返す。

「メイ、今日はよろしく」

 満面の笑みを浮かべながら、リョウがメイの手を握り締めている。

 その光景に胸が痛んだ。

 嫉妬なんかじゃない!

 自分に言い聞かせながらも、見ていられなくて思わず俯く。

「それじゃぁ、撮影始めるか!」

 誰かの掛け声を合図に撮影が始まった。



 撮影はスムーズに進み、思ったよりも早く終わった。

 私はその事に安堵の溜息を洩らした。

 その時、私の耳にリョウの声が届いた。

「メイ、俺が送るよ! 着替えておいで」

「え? でもリョウさん、今から社に戻るんじゃないんですか?」

 リョウの言葉にメイが首を傾げている。そんな彼女にリョウがほほ笑んだ。

「いや、今日はそのまま解散だから、大丈夫。なんなら食事してから帰る?」

 メイが頷いている。

「それじゃ、着替えてきますね」

「あぁ、待ってる」

 リョウに微笑んでメイは控室に向かおうとして、途中で朝倉さんの方へ近づいて行く。

「朝倉く……さん、今日は私……リョウさんと帰るので、送ってもらわなくていいです。ごめんなさい」

 メイは朝倉さんへそう告げると、彼の顔も見ずに急ぎ足で控室へ戻って行った。

 何? 今のやり取り……あれって、まるで……

「……リョウ、メイちゃんと随分仲がいいみたいだけど?……」

 雪村さんがリョウに訊ねている。

 するとリョウは雪村さんの方を向き、にっこりとほほ笑みながら返事をした。

「はい…実はつい数日前から俺とメイは付き合ってます」

 おそらくその場にいた全員が驚きの余り、言葉を失っていたと思う。

 私も一瞬、彼の言葉の意味が呑み込めなかった。

 メイと……付き合ってる? 遼祐が?

 頭で理解した途端、胸が痛んだ。

 何で? 遼祐には婚約者がいるじゃない! なのに何でメイと付き合ってるの? 遊び?

 私は心の中で疑問を繰り返していた。本人に聞きたいけど、そんな事出来る訳がない。

 そんな事をしてる間に、メイが着替えて戻って来た。

 するとリョウは微笑みながら彼女の腕に手を添えて、みんなへ別れの挨拶をすると2人で帰って行った。

 私は泣きたい気分のまま、スタジオを後にした。



 その後、別の仕事を2つこなした。

 仕事をしてても2人の姿が頭から離れず、涙が浮かびそうになっては慌てて気持ちを仕事へと向ける。

 仕事が辛いなんて思ったのは初めてかもしれない。無理してほほ笑む自分が別の人の様に感じていた。



「……っ!」

 家に帰って部屋の電気をつけた途端、私は堰を切った様に涙を流していた。

 もう……遼祐にとって私は過去の人間なんだ……別れなければ良かった……そしたら、今そばにいるのは私だったのに……愛人でも構わないから遼祐の傍を離れるんじゃなかった。

 そんな後悔が胸の中に渦巻いていた。

 別れても遼祐が私を忘れる事はない……そう、心の中で思っていた。だけど現実には彼は他に好きな女性を見つけた。それがメイ。

 それじゃ、由紀奈さんは? 彼女とは結婚するんじゃないの? それともメイは愛人でも構わないって思っているの?

 私は答えが出ない疑問を抱えたまま、誰にも相談出来ずにいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ