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鐘の音は深夜響く  作者: あさひ
4/5

そして今が始まった

以前彼といたときに関係を聞いてきた人がいた

そのときは普通に答えていたのだ



私と璃玖は双子です、と



私と彼は兄妹で誕生日が一緒

要するに双子、というわけだ

それを普通に何も引っかかりもなく答えた

しかしそのあと私は璃玖に


「……俺と双子とか兄妹っていうの、止めてくれる?」


怖かった。それと同時に悲しかった

璃玖は私のことを家族だと、兄妹だと思ってくれてないのかと

まさにその時期から璃玖は私のことを避け始めた


私は彼に嫌われている

そうずっと思っていた

しかし大学に入学してからそれがよくわからなくなっていた

いや、正確には入学直前からだ


入試を終え入学準備をしていた忙しい時期、急に親の海外転勤が決まってしまったのである


両親が海外に行くということはこの家には私と璃玖の2人きりだということ

家族でそのことを話しているとき私は漠然と璃玖は家を出るだろうと思った

私と2人なんて嫌だろうから


しかし私の予想は外れることになる

むしろ正反対のことを彼は言ったのだ


その場の雰囲気としてはどちらかが1人暮らししてもよい、そんな雰囲気だった

彼はあえてそれに乗らなった、乗ろうと思えば乗れたのに



出国のため空港に向かう両親を玄関で見送る

私は空港まで見送りに行くつもりだったが両親が玄関でいいと言って譲らなかった

タクシーを家の前に待たせ、慌ただしく家を出る両親

私は微笑みながら2人を見送った。私の少し後ろで璃玖も見送りの言葉を言っていた

2人を乗せたタクシーが角を曲がり見えなくなる


本当に行っちゃったんだ……


早くも悲しい気持ちが湧き上がってきたがそんなこともいってられない

家に入るとリビングには璃玖の姿がなかった

またいつものように部屋に籠っているのだろう……私に会わないように



母が作っておいた夕飯を一人で食べソファに座ってぼぉっとしていた


「……ねぇ」

「……っ!」


不意打ちだった

避けられ始めてから彼から話しかけられることが全くなかった

しばらくしてはっと意識が戻ると目の前のソファに彼が座ってこちらを見ていた


いつ振りだろう。こんなにまっすぐ璃玖のことを見るのは


じっと璃玖のことを見ていたら視線をそらされた

……私に見られるのが嫌だったのか

気分が沈むのが分かったが今の状況をやっと思い出した

璃玖が私に何かを聞こうとしている状況を


「な、何?」

「……家事、どうするか決めてない」

「……あぁ、そういえば。全然決めてなかったね」


内心、璃玖に何を言われるのか怖かった

しかし内容はごく普通のもので体から力が抜けた

本来なら両親がいなくなる前に決めておくことなのに今まで決めてなかったし、決めようとも思っていなかった

今、璃玖が言ってこなければ私から言うことはなかったはずだ


なんとなく適当に決めた私たち

はっきりと決めたのはご飯の支度


朝と昼は各自、夜は私が作る


しかし次の朝起きるとどうだろう

璃玖が朝食を作ってくれていた

私が戸惑っていると璃玖は


「食べないの」

「……う、ううん。食べる。おいしそう」


実際おいしかった。もしかしたら私より璃玖のほうが料理がうまいかもしれない……悲しいことに

しかしなぜ彼は私に朝食を作ってくれるの

最初は自分のついでに私のも作ってくれてるのかも、そう思ってた

けどしばらくしたら違うことに気付いた

私は朝食はご飯を食べることにしていたし、璃玖が用意してくれるのも和食だ

しかし彼は私が朝食をとるときはコーヒーを飲むだけだった

何かを食べた形跡がないのだ

……そのときはまぁいいかで済ませてしまったのである


2人で生活し始め数か月

以前よりも会話が増えたがそれも最低限の会話でほとんどは事務的会話だった

そして日に日に彼が帰ってくる時間が遅くなっていくことになる

最終的に12時を回ってから帰ってくる

しかも週に1日とかではなく毎日そうなのである


私はそのことを璃玖に聞こうと思って自分から話しかけた

思えば私から璃玖に話しかけたのは初めてだったかもしれない

しかし呼び止めたのは私なのに彼は私の話を聞かずに自分の用件だけ言って部屋に入ってしまった


「もう俺に夕飯を準備しなくていい……外で食べてくるから」


彼の立ち去ったところでさすがに泣いてしまった

そこまで彼に嫌われているのかと、なぜ今になってそんなこと言うのか、もしかして最初から嫌だったのに今まで言えなかったのかと

私は彼の夕飯を作っていないのに彼は私に朝食を作る

しかもいつからか朝起こしてくれるようになり、それが日常となった


それからしばらくして璃玖は彼女らしき人のもとに通っていて、でも深夜には帰ってくるなんてことをしてるのに気付くことになる

それが2年近く続いてる


それなのに

これからもそれが続くと思っていたのに

今日を境目に変わってしまうなんて予測できるわけなかった

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