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鐘の音は深夜響く  作者: あさひ
3/5

遮る腕は誰のため



しばらくしてお開きとなった

本来なら2次会が行われるらしいが私たちではない4人は意気投合したもの同士で飲みに行きたいということで8人での飲み会はここで終わることになる

会計を幹事の浪川さんが全員分をまとめて払ってるとき、ほかの人たちは外に出る

飲み直すという4人はすでに次の店に足を進めていたためそこには4人、私と澪そして璃玖がいた


澪はちゃっかり璃玖に寄り添っている

ずっと璃玖と二人で話していたわけだから当たり前だといえば当たり前

もともと璃玖に会いたくてこの合コンが開催されたわけで

会計を済ませた浪川さんが店から出てくるまで2人を眺めていた



「待たせた!で、これからどーする?俺たちもどっか飲みに行く?それとも今日はとりあえずお開き?」

「えーもっと飲みたい!」

「お前結構飲んでたろ。まだ飲み足りないのかよ」



これからの予定を聞いた浪川さん

最初に反応したのは澪で別の店に行きたいとのことだった

澪はまだ璃玖と一緒にいたいから、だから次の店に行きたいんだろう

そこでまた2人で話したいんだ


そう考えるだけで私はもやもやした感情が生まれる


この分だと澪に引きずられて2軒目に行くことになるはず

そこでまた澪と璃玖の2人を見なくてはならないのは辛い

……私が辛いなんて言う権利はどこにもないのだけれど

だから断ることにした

どう切り出そうか悩んでいた私に浪川さんが話を振ってきた


「ゆうりちゃんはどうする?っていうかどうしたい?」

「私は……帰ります。なんか、調子も悪いから」

「飲みすぎた?言われてみれば顔色が……」


調子が悪い

別に澪と璃玖のことをひがんでのことではない

浪川さんに勧められるがままにグラスを開けていった私

どうやら酔うまで飲んでしまったらしい

思ってみればなんかふわふわした気分になっているし体も心なしか熱い


「酔うまで飲んだみたい……。あ、3人で次に行ってください。私、帰りますから」

「由理!1人で帰るなんて危ないよ!」


澪が心配そうに私に言う

私は澪を安心させるように笑みを浮かべながら


「大丈夫だよ、何もないから」


「あ、じゃあ俺が送ってあげるよ」


声の主は浪川さんだった

それはそのはずで璃玖が私にそんなこと言うわけない


お願いも断りもせず浪川さんを見つめる

浪川さんは私のほうに腕を伸ばした

私はそれを客観的にみる


しかし浪川さんの手は私に触れる前に止まることとなった


「辰巳……俺が送っていくからいい。それとそのまま帰るから」


伸ばされた浪川さんの手を遮ったのは彼だった

浪川さんは驚いた表情を浮かべたがそれも一瞬ですぐにあの笑いに変わった

璃玖はそれを無表情で見つめるばかりで何も言わない


私も心の中ですごく驚いていた

いや、もしかしたら隠し切れずに顔に出ていたかもしれない


璃玖が私を送っていく?


そんな展開一寸たりとも想像できなかった

それなのに現に今璃玖の口から言い放たれた


しかし私は自分で納得のいく理由を見つけた


きっと璃玖も家に帰りたかったんだと

私を送るといったのもその口述でしかないんだと


別に理由をつけなくてもいいのに思わずにはいられなかった



「あ、そう?いやいや、わざわざ璃玖が送ってくれるなら俺の出る幕はないよね。あ、そうそう。今日来てくれて助かったよ!おかげで由理ちゃんも来てくれたし」

「……何?」

「まぁ、こっちにもいろいろあるってことかな。あ、またこのメンバーで合コンしよう。…ゆーりちゃんもまた飲もう」

「え、えぇ。機会があれば……」


「帰るぞ」


「え、ちょっ……!……ごめん澪っ、また来週ね!」


いきなり腕を引かれて歩かされ、それに驚きつつ澪に一言断りを入れた

振り返りながらだったからか澪の表情はよく見えなかった


あぁ、澪に悪いことをしてしまった


私の腕を引きつつ、半歩前を歩く璃玖のことを見ながら思った

澪は彼とまだ居たかったはずなのに、もしかしたら彼に送ってもらえるかもと思っていたかもしれない

だって彼は飲み会にきて澪としか話していないのだ

彼の自己紹介以降澪は懸命に反応の薄い彼に話しかけていた

話題によっては会話になっていたし、自分が彼に一番近いと思っても当たり前


ただ私と彼はたがいに知っていて……というか一緒に暮らしている


それを知らない澪はどう思ったのだろうか

私に対して何らかの感情を抱いているだろうか

それとも彼に対して?


わからない

けど勘違いされているのは確実で

次回あった時に本当のことを話せばそれで解決するかもしれない

けど……彼は私との関係を周囲に知られるのを極端に嫌がるのだ

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