表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちはあの日、消えてしまいそうな恋をした。  作者: 乙川せつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

破‐8

「……さて」


 僕は洗面台の前に立ち、自分の顔――というか、見える全身を見ていた。

 これにはワケがある。

 なかったらただのナルシストだしね、そこまで自意識過剰じゃないし。


「どうしようか」


 そう、僕の迷いというのは服装のことである。

 今まで女子と一緒に買い物……というかデートみたいなことをしたことがなかったせいで、僕の服は地味なものばっかりだ。

 まあ、お洒落に興味がないからというのもあるが。

 

 兎に角明日までにかっこいい服を揃えなければ!


「とは言え、どういう服がいいんだろ……あ、そうだ」


 スマホを手に取り、電話をかける。


『もしもし?』


「あ、晴也。ちょっといいかな?」


『どうしたよ、珍しいな』


「いやー、明日女の子と一緒に買い物行くことになってさ。それで……」


『……え? ―――――えええええええええええええええええええええええええっ⁉』


「うわうるさっ」


 鼓膜破れるかと思った。


『え、おまっ、だ、誰と⁉』


「言うわけないじゃん、相手に迷惑かかるでしょ」


『そ、それもそうか……そうだな。それで?』


「明日着ていく服が無くて、ちょっと手伝ってくれない?」


『いいぜ、やってやるよ!』


「ありがとう晴也!」


 やっぱり持つものは友達だね。

 これで課題はクリア。残る問題は僕自身なんだけど……それは後回しか。


「六花、ちょっと出てくる!」


「は、はい。分かりました」


 急いでエレベーターに乗り込み下についたら直ぐに走り出す。

 近くのショッピングモールへと急行し、晴也を待つ……つもりだったんだけど。


「おー、早かったな」


「え、もう居たの⁉」


「ダチの一大事だからな、かっ飛ばしてきたぜ!」


「あ、ありがとう……⁉」


 これは凄いというだけで良いのだろうか。

 僕の方がショッピングモールに近くて、急いできたっていうのに。まるで瞬間移動じゃないか。


「それで、お前に似合う服を見繕ってくれって話なんだよな」


「あ、うん……出来そう?」


「まっかせなさーい!」


 ドヤ顔で親指をぐっと立てる親友に頼ってみることにした僕は、ショッピングモールの中へと足を向ける。


「なあ新、お前好きな色あるか?」


「好きな色? 強いて言えば……そうだね、白かな」


 あんまり派手なのは好みじゃないし。

 それにいろんな色で着飾っても、彼女には何でも見透かされてしまうような気がする。


「白、か……よし、ちょっとこっち来い」


「え、ちょっと」


 晴也に手を引かれ、服屋に入る。そこにはいろんな種類の衣服が揃っていた。

 普段来るような所じゃないから少し緊張してしまう。

 手を引いている親友は彼女とこんな風にデートしているんだろう―――動きに迷いがない。


「まずは王道のジャケット!」


「なんか着られてる気がする」


「ええい次!」


 それからどんどん服を着せられ、似合うものを探した。


「トップス!」


「何か違う」


「タンクトップ!」


「論外」


「……見つからねぇええええええ!!!!」


「お店だから静かにね。他の人ビックリしちゃってるよ」


「……コホン。――――諦めた方がいいんじゃね?」


 降参宣言出てしまいました。

 さて、どうしようか。


「うーん……何かいいのないかな」


「諦めろ、新」


「うっ……」


 結果、成果なし。

 僕たちは泣く泣く帰宅した。

 

「お帰りなさい、新さん」


「ただいま」


 家に帰ると美少女がいる日常、これが凄く大切に思える。

 僕は世界一の幸せ者だと断言できるほどに。


 お金も、成績も、未来だってそこそこでいい。


 僕の今は、ここにある。


「新さん、今日はどこに行っていたんですか?」


 聞きながらお茶を出してくれる六花に僕はさらっと、


「いやぁ、晴也と服を買いに行ってたんだけど、いいのが見つからなくて」


「……」


 言い終えると、六花の体が不自然に固まっていた。

 少し震えているだろうか。


「ど、どうしたの六花……?」


「……それは、二人きりですか?」


「え、うん……二人だったけど……?」


「そう、ですか」


 彼女は深呼吸をして、僕の方をまっすぐ見てきた。

 待って、僕何かした?


 怒らせちゃった?


「新さん……いえ、新くん」


「ハイっ⁉」


 ちょっと待って怖い怖いコワイ!!!!


「そういうのは、私とだけにしてください」


「…………はい?」


 僕の服を摘まむ彼女は、ぷくっと頬を膨らませた。

 可愛い。


 ……っていけないいけない。


「えっと……うーんと……」


 何か返答をしようと頑張ったが、駄目だった。こういう時中々言葉って出てこないものなんだね。


「……私と一緒に、選んでください」


「六花……?」


「そうじゃなきゃ、ちょっと……嫉妬、しちゃいます」


「う、ん……わ、分かった……」


「はいっ」


 にっこりと笑う彼女を見て、小悪魔だなーと思うのであった。

 ご機嫌になったようでよかったけど。


「新さん、明日は楽しみましょうね♪」


「……―――そうだね、六花」




 僕も、笑うしかなかった。



 

 笑えるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ