第8話 下半身がキュンキュンします♡
パ☆チラほどエロいものはない。
全裸? 論外。見えすぎ。つまらん。
下着姿? まあまあ。でも、ちょっと物足りない。もう一声欲しい。
だから、男を満足させるもの、それは——きっとパ☆チラだ!
「ダンジョンちゃん、何見てるの?」
「あ、ごめんなさい」
ここは村はずれの魔道具店。
釣鐘型のツンとした胸と、キリキリのミニスカートから常に無自覚パ☆チラをするこの女。紫のポニテと垂れ目。とんがり帽子。魔道具店の店主、マドーグさん。
今日も、棚の上の商品を取ろうとして、背伸び。スカートがふわり。白地にピンクのリボン。可愛い系のパンティーが見えてる。
(まったく、無自覚は罪だよな)
わたしはハァーとため息をついた。
わたしは時々、この店に来る。面白い商品が入っていないか。暗殺に使えそうな道具はないか。物色するためだ。
「これなんてどうでしょう?」
マドーグさんにこにこ。尻尾のようなアイテムをすすめてきた。しゃがむ。またスカートがふわり。
「サキュバスに変身できる魔道具です。今日はハロウィンでしょ? お尻に取り付ければ大変身。人気者間違いなしですよ」
ほお。面白そうなアイテムだ。
これでご主人様を油断させて、尻尾でブスッと一刺し。完璧じゃん!
「それください!」
わたしは即決。お金を払って、店を出た。
♢ ♢ ♢
「ハロウィンです、ご主人様!」
「はろ? へ?」
がおーっ。わたしはメイド服のサキュバスに大変身。ハロウィンにかこつけて、怪しまれないようにしてみる。
わたしの姿。コウモリの翼。小さな角。鋭い歯。長いしっぽ。ピンクの髪。
「すごい! お祭りの仮装だね!」
「そうですご主人様! では早速ベッドに……」
ご主人様は納得したように、紅茶を一口。
「じゃあ、お菓子貰いに行こう!」
「へっ?」
「ハロウィンでしょ? 仮装してトリックオアトリートしなきゃ」
「うぇぇえええええ!?」
ハロウィンって、そんな面倒なイベントだったのか!
♢ ♢ ♢
「トリックオアトリート!」
夜。キラキラの小道。かぼちゃのランタン。
古風な家。ドアをノック。
中から出てきたのは、ご主人様のいとこ、ヒーラさん。
「まあ、かわいい!」
ヒーラさんはわたしの格好を見るなり、私の頬にキスキス。やめろ、照れる。
そんでもって、ぐるぐるのキャンディーをもらった。ご主人様にも、かぼちゃクッキー。
次の家。もっと大きな屋敷。
「トリックオアトリート!」
中から出てきたのは、西のダンジョンちゃん。褐色の肌にエプロンドレスが似合ってる。
「なに? お主、仮装とやらをやっておるのか。ちょっと待っておれ!」
奥に引っ込んで、すぐに戻ってきた。
フランケンシュタインの姿。ボルトが頭に刺さってる。
「どうじゃ! ワシのほうが仮装が上手じゃろう!」
「まあまあ、かな」
「なんじゃとー!」
そんなこんなで、家々を回って、お菓子を貰い、無事に自宅に帰った。
「楽しかったね、ダンジョンちゃん」
ご主人様はにっこり笑顔。
♢ ♢ ♢
暗殺ターイム♡
ふふふ。ようやく、待ちに待った暗殺タイム♡
ご主人様はテーブルで夕食。
わたしは、サキュバスの姿のまま——
——ダンッ!
テーブルの上に座った。両足を開いて、パンティーがこんにちは。パ☆チラならぬパ☆モロ。
「ダ、ダンジョンちゃん……!?」
ご主人様の声が裏返る。ご主人様は目を泳がせる。どこを見ていいかわからない。可愛い。
わたしは、ご主人様の耳に息を吹きかける。
「ご主人様~♡ わたしのパンティーの中、気になりますか?♡」
わたしはご主人様の前で、パンティーの中に手を入れる。クチュクチュ。何とは言わない音が出る。
ご主人様の心臓が、跳ね上がる。
わたしは、ご主人様の唇に——顔を近づける。
「いいですよ、ご主人様なら。たっぷり見てください♡」
キス。唇が触れ合う。柔らかい。温かい。甘い。
唾液が伸びる。糸を引く。
「ダンジョンちゃん……だめだよ!」
ご主人様の声が、かすれる。
わたしは、もっと深く、無理やりにキスをする。舌を絡める。ちゅぱちゅぱ。
「ん……ふぁ……♡」
息が荒い。身体が熱い。
パンティーを脱ぐ。しゅるんと紐がほどけ、おまたが露出。紐がぎりぎり、大切なアソコを隠している。
「ダンジョンちゃん……っ」
「ご主人様ったら、息が荒くなってますよ♡ エッチ♡ ほーら♡ 中までたっぷり見てください♡」
ご主人様は、完全に油断してる。目がとろん。顔が真っ赤。呼吸が荒い。
(——今だ!)
わたしは、即座にご主人様の背後に回り、尻尾でご主人様の身体を、ぐるぐる巻きにした。椅子ごと拘束。
「——!?」
ご主人様が気づく。でも、もう遅い。
はははは! もう動けまい! わたしの勝ちだ!
「今日という今日は、貴様の命を頂戴する!」
わたしは尻尾の先を、力いっぱいご主人様の首筋に——
——ぱぁあああん!
魔力が爆発。光が弾ける。
(へっ? 何が起きた?)
見るとわたしの尻尾のエクステは霧散していた。
ご主人様の身体に湯気。無表情。戦闘のときのポージング。
やばい、怒らせた? どうしよ。どうしよ。
「ダンジョンちゃん、そういうことだったんだね」
「あ、いや、その……」
にじり寄る。目が怖い。
「僕はダンジョンちゃんを勘違いしてたよ」
「その、あの、ひっ」
「ハロウィンだから仮装して〝戦闘ごっこ〟がしたかったんだね!」
「は? はぁぁあああああ!?」
ご主人様は屈伸運動。聖剣を掴む。腰を落とす。構える。
「ごめんね。気が利かなくて。いいよ、どこからでもかかっておいで(にこっ)」
なんだろう。この敗北感は。すごくすごく、舐められてる気がする。
子供扱いされてる。
「ぐがぁあ!」
わたしは思い切って、ご主人様に襲い掛かる。爪を立てる。牙を剥く。
ご主人様はジャンプして壁を蹴り、すぐさまわたしの背後をとった。
「はい、僕の勝ち」
ぽん、と頭を撫でられる。
(うえぇえええ!? ご主人様強くね? めっちゃ強くね? なんなん、こいつ)
「楽しかったよ、ダンジョンちゃん。また来年もやろうね」
わたしは——枕を抱えて、ベッドに倒れ込んだ。
「くそー! 次だ次! 次こそは絶対に暗殺する! 絶対だ! 絶対に! 300%! いや400%!」




