第5話 「そんな大きいの、咥えられません♡」
「っん……♡ そこはダメです♡」
わたしはご主人様とベッド。
「なら抵抗しろよ」
ご主人様の口角が上がる。彫刻のような美しい顔が近づく。荒々しい手で、ぷるるん♡ おっ☆い剥き出し。
「……ご主人様の、いじわる♡」
わたしはされるがまま、身をゆだねる。
(エッチなことはもうしない、なーんて言ってたのに、ご主人様ったら)
わたしは頬を染める。耳まで真っ赤。心臓ドキドキ。メロンを鷲掴みされて、嬌声が漏れる。両足ピンと張る。
「嫌ならやめるけど……どうする?」
わたしは宝石のような乙女の瞳。瞬き数回。小さくて可愛い声で、
「やめないでください♡」
「よく言えました」
ご主人様の甘いキスが、わたしの声を優しく封じて——
——ガバッ!
チュンチュン。朝。わたしは髪ボサで起床。
(はっ? 夢?)
わたしは目をこする。さっきまでの出来事が全部妄想だったことを知り、顔がトマトのように赤くなる。
「ちくしょー! だーれが〝やめないでください♡〟だあああ!」
ボガッ!
枕を力いっぱい投げる。ゼエハア、ゼエハア。
わたしはアイツを殺すためにここにいる。なんだこの夢。最悪。
記憶を抹消するように、ゴロゴロとベッドで転げまくった。
♢ ♢ ♢
それから、わたしはメイド服に着替えて、朝の作業開始。
「おはよう、ダンジョンちゃん。今日もいい天気だね(ニコツ)」
——ビクッ!
ご主人様。新聞を読みながら紅茶をすすっている。
「あ、は、はい。いい天気ですね。天地がひっくり返りそうです」
「どうしたの? 気分でも悪い? 作業代わってあげようか?」
「大丈夫です。おかまいなく」
まったく。夢のせいで、変に意識しちゃうじゃないか!
ぴんぽーん♪
そんなこんなで午後。チャイム。お客さん。
「たのもー! 噂のメイドがいる屋敷はここか!」
バンッ!と扉を開けて入って来たのは、
褐色の肌。赤い目。背丈はわたしと同じくらいの、メイドさんだった。
たゆん♡
と大きな胸が揺れる。
活発そう。アホ毛ぴょこん。
「誰?」
「誰じゃと?」
そのメイドさんは睨む。
「ワシは元、西のダンジョン。転生してメイドになった者じゃ! 積年のライバル、東のダンジョンのメイドっ子がこの屋敷におるらしいではないか」
なんだその設定。どっかの高校生探偵かよ。
「それ、わたしですけど……。ライバルって?」
「お主か! ワシの宝を盗んだのは! お前の宝物は、みんなみんな、みーんな、もとはと言えば、ワシんトコの宝物じゃ!」
ああ、そういう類のキャラか……。
わたしはジト目。
ダンジョンの宝物ってのは、盗んだり盗まれたりの繰り返し。いわば〝流れモノ〟だ。ときどき、宝は自分のだと言い張るネジの飛んだ奴が現われる(←)。だから——
「はあ? ふざけんな! わたしの宝はわたしのモノだ! 取り返しただけ! 文句言われる筋合いはない!」
「いいんや、ワシのだ!」
「わたしのよ!」
「ワシのだ!」
「わたしのよ!」
バチバチバチ……!
「メイドならメイドらしく、ご主人様を満足させられた方の勝ちよ!」
「面白い、受けて立つ!」
♢ ♢ ♢
ひょんなことから勝負が始まった。
こちら、西のダンジョンちゃん(褐色の方):
「ご主人様~。お肩揉みま~す♪(もみもみ)」
「上手! 気持ちいい!」
「ご主人様~。ケチャップオムライス作りました~。ハートも入れてみました~」
「わあ! 美味しいよ!(ぱくぱく)」
「ご主人様~。お部屋掃除しました~。塵一つないです~(ピカピカ)」
「凄い! ありがとう!」
(——どや? ワシの勝ちやろ?)
そんな視線で見てくる。
「——ふっ」
これだから、二流メイドは。わたしは半笑い。
ダンジョンちゃんサイド:
「お紅茶お持ちしました~」
——キャッ!
バシャ!
「ごめんなさい、ご主人様の股間にぶっかけてしまって。あらあら、中までミルクでびしょびしょ。今すぐお拭きしますわね」
(——あのメイド、ワシの前で何をするつもりなのか)
物陰に隠れて様子をうかがう褐色のダンジョン。
ご主人様の背中が邪魔でよく見えないな……。
(えっ? えっ? アイツ、ご主人様の股間に手を当てて、上下させてる!)
「あらら、ご主人様ってば……熱い♡(※紅茶で濡れた部分が)。お汁が溢れて、わたしの手が真っ白♡(※ミルクで)。ご主人様ってば、固すぎ♡(※緊張で)。そんなに震えてると、くわえられないですよ♡(※砂糖が)」
(うえええええええ!?)
これって、どう考えても、アレな行為じゃろ。
いやいや待て待て。早とちりかも知れぬ。心を落ち着かせて再度チラリ。
「あんッ♡ ご主人様ってば大胆♡(※後ろからスカートを拭いてます) キャッ♡ ご主人様のモノがわたしの奥までずっぽり入って来たあ~♡(※手です) わたしの中ヌルヌルです~♡ お汁が溢れかえってます~♡(※こぼれた紅茶)」
(——ゲホゲホ!)
いやいや、どう考えても、アレな行為じゃろ!
「もっと激しく叩いて!(※衣服のしわを伸ばすため) ぱんぱん♡ ご主人様~♡ わたしたちの音、みんなに聞かせましょ~♡」
(だぁあああああ! 今日はお主の勝ちにしておいてやるわあああーー!!)
こうして、西のダンジョンちゃんは屋敷を飛び出していったのだった。
はーははは! わたしの勝利!




