第4話 せや! お風呂屋さんゴッコしよう!
「お、お、おっ☆い、デッカ!」
わたしは叫んだ。声がうわずった。
ヒーラさんが、わたしの前に立ってる。至近距離。視界を埋め尽くすのは、クソエロいスイカ。ぱつぱつ。今にもはじけそう。
てか、ブラしてないのか? 乳☆の形が浮いてる。完全に浮いてる。シルエットくっきり。これって犯罪じゃね?
「どうしたの? ダンジョンちゃん わたしの顔に何かついてる?」
ヒーラさんにっこり笑顔。
ぷるん、ぷるん♡
ヒーラさんが歩くたび、あの二つのスイカが揺れに揺れる。左右独立して。物理法則ガン無視で。
今日のヒーラさんの格好は、これまたエロかった。
黒いオフショルダーのブラウス。肩から二の腕が丸見え。鎖骨が綺麗。胸元ざっくり。谷間ばっちり。ありがたや~で拝めちゃう設計。
大人っぽい。色気ムンムン。くっそ、まぶしいぜ。
「今日も暑いわねえ」
ヒーラさんは、扇子でぱたぱた。わざとらしく、スカートの裾をぴらぴら。
「——は?」
Tバック。Tバックが見えた。黒レースのTバックが、見え隠れ。
(絶対狙ってるよね)
「あら? ダンジョンちゃん、わたしのお尻に何かついてる?」
「い、いえ! 何でも!」
(クソ女が。計算ずくじゃねーか。男を手玉に取るテク、完璧に身につけやがって。許っせん!)
♢ ♢ ♢
「じゃあ、ダンジョンちゃん、家のことよろしくね~」
ご主人様は、手をひらひら振って、ヒーラさんと腕を組んで出かけて行った。二人で農園デートか。いいな。
わたし? ザ・留守番。ザ・家政婦。
くっそ何を喋ってるんだろう、あの二人。
(羨ましくないぞー! 羨ましくないぞー!)
わたしは指をくわえて、二人の背中をじーっと見つめた。
ご主人様ってば、今やヒーラさんにしか目がないじゃん。わたしのことはそっちのけか?
(こうなりゃ、【地獄耳 Lv.16】!)
わたしはスキルを発動。耳をぴくぴく。集中。
二人の会話、盗み聞き。
ほとんど聞こえない。風の音に紛れる。けど、少しだけ——
「ねえ、ボーケンくん、あのメイドの代わりにわたしが永久就職してあげようか?」
——ぬわにぃいいい!!
わたしは首になるのか!!
(おい、ご主人様! なんか反論しろよ! なんだ? わたしの日頃の行いが良くないせいか? ちっとも反論しないじゃないか。おい、鼻を伸ばすな!)
いやいや、何を動揺してるんだ。
(別に首になるなんて、後腐れなくていいじゃないか)
わたしは胸を撫で下ろす。
(どーせ、今日でアイツ(←ご主人様)は死ぬんだ。首にするならするで自由にしやがれ)
♢ ♢ ♢
——二時間後。
二人が土まみれになって農園から帰って来た。キャベツの箱を抱えてる。
「ご主人様~♡」
わたしは風呂場からご主人様を呼んだ。とびっきりの笑顔。満面。八重歯もちらり。
「お風呂がわきました~。どうぞ入ってください~」
「おお、気が利くね!」
うひひ。今日こそお色気の術で、サクッと命を頂戴するぜ。
スケベな椅子。ローション。マット。全部、魔道具通販で取り寄せた。お風呂屋さんごっこ。気持ちよくなって、気が緩んでる間に、ご主人様に落雷を浴びせて始末しよう。完璧。
「どーしたの、ダンジョンちゃん!」
ご主人様がタオルを巻いて入って来た。
わたしは、あられもない姿でお出迎え。
どや? エッチやろ?
泡まみれ。髪をアップにして、うなじ全開。胸元から太ももまでぜんぶ丸見え。
「それじゃ、洗って差し上げますので、座ってください~」
「え、あ……。でも」
「だめですよ、わたしは彼女ではなくメイドなんですから、仕事をさせてくださいって言ってるんですよ~」
「だめだよ、だめだよ!」
ご主人様の腕を無理やり掴んで、椅子に座らせる。
わたしはおっ☆いを背中に当てながら、洗ってあげる。
ぷにぷに。むにむに。これくらいはサービスだ。
マットに寝かせて、キスキス。
それじゃ、いよいよ本番と……
「わわわ、もう十分だから」
ご主人様は赤面。耳まで真っ赤。
(くそ、あと少しだったのに!)
「実はさ、今日、ヒーラから説教食らったんだ」
え? 説教?
わたしはぽかんと口を開けた。
「いくらダンジョンちゃんが可愛いからって、下品な関係になったら承知しないからって」
ご主人様は下を向く。
「それを聞いてすごい反省したんだ。たしかに僕の日頃の行いは、ダンジョンちゃんを傷つけていたかもしれないなって。ダメだったなって。本当にごめんね、ダンジョンちゃん。もうエッチなことはしないからね」
(うえええええええーーー!!)
まさかの、謝罪!!
もうお色気作戦が通じないってことか!? そこは獣であれよ! 性欲爆発させろよ!
「でもでも、ヒーラさんは彼女なんでしょ?」
「違うよ。ヒーラはいとこだよ。お前は女耐性がないから、免疫力を付けてやるって、エロい格好してただけなんだ」
なんだ……。そういうことか。
わたしは全身の力が抜ける。
「ごめん」なんて言われたら、殺しにくいじゃんか……。
でもこれは、ご主人様がわたしのことを大切に思ってくれている証。
「うふふふ」
なんだか安心した。
わたしはスキップで風呂場を後にする。
「わかりました。それじゃ、あとはご主人様だけでごゆっくりと」
しばらく、暗殺はお預けかな……?




