表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/14

第12話 ナイスバディーの筋肉女子はいかが?

 ムキッ!

 わたしは鏡の前でポーズを決めた。

 腕を曲げ、胸の位置で拳を作る。おっ☆いがプルルン♡


 別のポーズを取る。


 背中を向けて、頭の後ろで手を組む。お尻がプリリン♡



「はあ~」

 わたしは溜息をついた。


 最近は筋トレがブームと聞く。ナイスバディーには憧れる。


 でも、わたしには向かないかな。筋トレ週間も続かないだろうし……。


 どうすればマッスルになれるんだろう。



 ♢ ♢ ♢



 今日は狩りの日。

 ご主人様と森に行くと、例の薬屋のNPCおじさんがいた。惚れ薬をもらった人。


「いらっしゃい! 新しい薬が揃ってるよ!」


 わたしはうろうろ。きょろきょろ。


(——おや?)


 キラリと光る小瓶。ラベルは『マッスルドリンク』。


「あの~、この薬は……」

「お目が高いねお嬢さん。その薬は、飲んで運動すると、一時的に筋肉がついてムキムキになれる秘薬ですよ。100万はくだらない逸品ですがね、お客さんには安く提供させていただきやすよ。これを使えば、どんなモンスター相手でもメッタメタのズッタズタでっさ」


「買います!」


 即決。


 わたしは財布から小銭を出して、薬をゲット。


(ふふふ。これで憧れの筋肉女子になれそうだ。筋肉がつけば、ご主人様に体格差で負けることもなくなる! 完璧!)



 ♢ ♢ ♢



「ご主人様~! ジムに行きませんか~?」

 わたしは紅茶を飲むご主人様に、にっこにこで提案した。


「ジム?」

「はい! 最近運動不足だし、たまには体を鍛えるのも良いかなって!」

「それはいいね!」




 隣町のジムは、ダンベルなんかがずらりと揃った、立派な施設だった。

「わあ、すごい!」


 ご主人様とわたしは、早速筋トレを開始する。ご主人様はタオルを肩にかけて、ベンチプレス。わたしはランニングマシン。


「いやあ! 久々にいい汗がかけるよ! ありがとう!」

 ご主人様にこり。


 胸板バーン。腕の筋肉デーン。前髪から汗ポタ。わたしにウインク。


「ぐほっ!」

 あまりのイケメンっぷりに、鼻血が止まらない。〝水も滴るイイ男〟すぎだろ。


「大丈夫!? ダンジョンちゃん!?」


 しっかりしろ! コイツは敵だ! 暗殺対象だ!


 わたしはフラフラしつつ、運動を続けるのだった。



 ♢ ♢ ♢



 暗殺ターイム♡


 みなさんお待ちかねの暗殺タイムですわよ。


 今日のテーマは筋肉! このさらっと飲みやすいマッスルドリンクで、張りのある筋肉を手に入れましょう!


(——ごくごく)


 このように飲んでから筋トレをしますと、あら不思議、みるみるうちに、腕、腹、肩、太もも。ありとあらゆる場所に魅力的な筋肉がつきま~す!


 なのに、ばばーん♡とおっ☆いのボリュームは変わらない!


 今なら、一万でご提供させていただきます。奮ってお電話ください~!


(——って、通販番組かっ!)


 わたしは自分にツッコむ。




 みるみる筋肉がついていくわたしに、ご主人様が叫んだ。

「すごいよダンジョンちゃん! 筋トレの素質があるんじゃない?」


(うふふ、作戦通り!)


 すたすた。


 わたしは筋トレ中のご主人様に近づく。


「ご主人様~♡」

「ダンジョンちゃん!?」


 ぐいっと押し倒す! わたしとご主人様は、ジムの柔らかいマットの上に転がった。

 その上に覆いかぶさる。のしかかる。


「うふふ♡ ご主人様、筋肉質の女性はどうですか?」

 わたしは自分の二の腕を見せつけた。


「ムキムキなのに、おっ☆いだけは大きい♡」

 ぎゅっと胸を寄せる。谷間、強調。

 力を緩める。

 二つのメロンが、ゆっさゆっさ♡


 ぽろり♡


 ぽろり♡の先から汗が伝って、ご主人様の肌を濡らす。


 ご主人様、真っ赤♡ 可愛い♡


 そして——

 ご主人様の手を取って、力任せに、谷間にぐいっと差し入れる。

「ほら♡ 柔らかいでしょ♡」

 すりすり。ご主人様の手を挟む。もみもみ。ぷにぷに。


 ご主人様の体温が伝わる。


「ダ、ダンジョンちゃん!?」

「えいっ!」


 わたしはご主人様の腰に座る。とびっきりの甘い声でささやく。

「ねえご主人様~♡ わたし、ご主人様ともっともっと〝運動〟したいです~♡」


 ぎしぎし。わたしが動いて、床がしなる。


 リズムよく音を刻む。


 たんたん♡ たんたん♡


 リズムが激しくなる。


 ちゅちゅ♡


「ご主人様、いい匂い♡ 汗の匂い♡」


 首筋をぺろぺろ舐める。


「だめだよ! ダンジョンちゃん! ここジムだよ!」

「ジムだから興奮するんじゃないんですか? ほーら♡ わたしは準備万端なんですから♡ もっともっと〝運動〟しましょうよ~♡」




(——今だ!)


 わたしはご主人様の首に手をかける。抱き♡


(ふっふっふ! 油断したな主人よ! ゴキッと締めあげれば、秒殺——)


「そういうことだったんだね!」


 へっ?


 ご主人様は目を輝かせた。


「気が付かなかったよ。ダンジョンちゃんがもっと〝運動〟したいだなんて。それじゃ、とりあえず腕相撲でもどうだい?」


 ——うえぇぇええええ!?


 そっちの運動じゃねーよ! 文脈考えろよ! 夜の運動に決まってんだろうが!


 ご主人様はサッと、


 そう、


 サッとわたしをどかして、


 床に肘をすりつける。


「実はさ、力比べの相手が欲しかったんだけど、村の人たちはみんな弱くてね。実力を発揮できる挑戦者がいなかったんだよ。


 ダンジョンちゃんの今の体形なら、僕の0.1パーセントくらいの力はあるだろうし、少し手加減しなくてもいいのかなって思って」


「はぁぁああああ!?」


 0.1パーセント!? 0.1パーセントって言った!?


 コイツどんだけ強いの?


(——待て待て。冷静になれ自分!)


 わたしに殺されると踏んで、ハッタリかましてるだけだ。そうに決まってる。


 冷や汗たらり。


「うううううう、う、腕相撲ですか! いいですね! まままま、まあ、わたしが勝つに決まってますが!」


「利き手はジャンケンで決めるってことかな? ダンジョンちゃんはジャンケン強いんだね!」


 ちげーよ! 誰がジャンケンで勝つ話をしてんだよ!


(くっそ!)


 舐められてる! 思い知らせてやる! マッスルドリンクの力を! すべてのモンスターを蹴散らす、カンストの魔力を!


「よーし、いくぞ! レディー、ゴ……」


 だんっ!!!!


「はい、僕の勝ち~」



 ……。……。……。 ……。……。……。

 ……。……。……。 ……。……。……。

 ……。……。……。 ……。……。……。



 一瞬だった。わたしの腕があっという間に倒された。



「どうしたのダンジョンちゃん! ごめん、本気でやるのかと思って。次は力をセーブするから……」


「ベーだ! ベーだ!」


 わたしはご主人様に舌を出す。


「ご主人様なんてあっち行け! うわーん!」


 わたしは泣きながらジムを飛び出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ