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恋を捨てた魔女は子どもたちの先生になります!  作者: 虎依カケル


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第15話 祠(1)

「どこに向かっているの?」


 村を出たあと、ミアは街に行って馬車に乗った。旅に出ると伝えてはいたが、具体的にどこに向かうのかは話していなかった。


「南の方だ。前に南の方の干ばつがひどいと聞いた。もしかしたら、南の地域に何か異常があるんじゃないかと考えたんだ」


 あくまで推測に過ぎない。だが、向かってみなければ、判断もつかなかった。

 ミアにはこの異常な現象に心当たりがあった。


「瘴気というものがある。それはいろんな場所で発生し、害を及ぼす」

「瘴気?」

「悪い気のことだ。それを抑えるために、祠があるんだ。前に異常現象が起きたときは、その祠が壊れていた」


 祠は瘴気を抑えるために封がされている。だが、誰かが封を解けば、瘴気が溢れ出てしまう。


「だから、瘴気が濃い場所を探そうと思うんだ」

「すぐに見つかるの?」

「わからない。だが、怪しい地域を見ていくことしか方法はない」


 ミアが世話になり、コリンも住んでいる国だ。いずれ出ていくとはいえ、このままにしておくわけにはいかない。


「気の長い旅になるかもしれない」


 ミアの言葉にダンが鼻を鳴らす。


「覚悟してついてきた。先生は気にしなくていい」


 ダンがそう言うと、デイジーもうなずく。


「変な現象がなくなったら、みんなが助かるもの! 私も頑張るわ!」


 心強い二人の言葉に、ミアは頬を緩める。


「ああ、ありがとう」




 着いたのは、王の直轄地から離れた領地だ。昔と変わらなければ、公爵家が治めている領地だ。

 近づくにつれて感じていたことだが、瘴気が濃い。


「さっそく当たりを引くとは」


 生徒たち二人は何も感じていないようで、物珍しそうに街を見渡していた。住んでいた村の近くにあった街よりも活気のある街だった。宿も一つだけでなく、複数ある。


「先生、街を見て回りたい!」


 デイジーは楽しそうに言う。小さな村で育った彼女にとっては、まるでお祭りのように見えるだろう。


「そうだな。だが、まずその前に街の周りを見て回りたい」


 祠は人によって管理されている。村か、もしくは街の近くにあるだろう。まずは街の周りを見て、そのあと近くの村に向かうつもりだった。


「今日は街の周りを見て、明日は街の観光をしようか」


 そう提案すると、デイジーは嬉しそうにうなずいた。




 街の外を出れば、草木が茂っていた。ミアは瘴気の濃い方へと進んでいく。瘴気が濃くなればなるほど、息苦しい。何も感じていない生徒たちが少し羨ましかった。


「先生、足音聞こえる」


 ダンが腰に着けている剣に手をかける。デイジーはミアの後ろに隠れた。耳を澄ませば、たしかに人の足音が聞こえる。だが、それ以外にも音が聞こえた。


「誰か……っ」


 駆けてきたのは女性だった。彼女はダンの身に着けている剣を見ると、こちらに走ってきた。


「魔獣が!」


 彼女の後ろから魔獣が現れた。見るに、狼の魔獣だ。ミアは弓を構え、魔獣に対して射る。魔獣はうめき声をあげ、足を止める。


「やああっ!」


 ダンが剣を首に突き刺す。魔獣は苦しそうな声を上げると、横たわった。ほかにもいるかとしばらく武器を構えていたが、それ以上現れず、ダンとミアは武器をおさめた。


「あ、ありがとうございます……!」


 女性は腰が抜けたように、地面に座り込む。額には汗がにじんでいた。


「どうしてこんなところにいたんだ? ほかに人は?」


 彼女は視線を下げる。


「護衛と一緒に出たのですが、彼は……」

「彼はどこにいる?」

「向こうの方……祠の近くです」


 女性は『祠』と言った。きっと近くにあるのだろう。


「案内してもらえないだろうか?」

「は、はい!」


 彼女の手を引いて立ち上がらせる。彼女は足を震わせながらも道案内してくれた。





 祠は少し離れたところにあった。その近くには男が一人倒れている。

 ミアはすぐに駆け寄って脈を取る。まだ動いている。息もしていた。


「先生……」


 デイジーが不安そうに見ている。彼女を安心させるために、ミアは指示をする。


「デイジー。治療の準備をしてくれ」

「は、はい!」


 デイジーはカバンの中から薬とガーゼ、包帯などを準備する。ミアはそれを横目で見ながら、男に触れる。

 ミアの手のひらから光が零れる。それは広がっていくと、男を包み込んだ。


「これは……」


 女性は目を大きく開いて、その光景を見ている。はじめて魔法を見る人からしたら、幻想的だろう。包み込んでいた光が消えると、男は咳き込みはじめた。


「ごほっ、ごほっ」


 男は体を起こし、周りを見渡した。そして女性の姿を見つけると、そちらに体を向けた。


「お嬢様、ご無事ですか!?」

「ええ、無事よ。……よかった」


 女性の目元に涙が浮かぶ。彼女はミアの方を見ると、頭を下げた。


「助けていただきありがとうございます!」


 護衛を連れていることからして、身分の高いお嬢様なのだろう。見れば、身なりもしっかりしており、着ている服も装飾がされている。


「いや、こちらも目的地に着けた。感謝を言う」

「目的地……?」


 ミアは祠に目を向けた。祠は石で作られており、中に神の像がある。だが、その神の身に着けている緑色の石は割れていた。

 やはり、封印は解けていた。


「あの、あなたは……魔女様ですか?」


 女性は恐る恐る尋ねる。ミアは祠から目を外し、女性の方に向けた。


「そうだ」


 ミアが返事をすれば、彼女は顔を輝かせた。そして、また頭を下げる。


「お願いがあります。この領地をお助けください」


 ダンとデイジーが顔を見合わせる。どうやら彼女は何か知っているようだ。


「話を聞かせてもらえるか?」

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