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4 自己紹介と女神の話

 ◆英霊Side


 血だらけの顔と身体を待機場にあるタオルで拭き取りながら俺は新たに増えている英霊達を一瞥した。


 女神ディアーナは居ない、居ないがあの女の話は極力しない方がいいだろう。必要な事だけは伝えておかねばな。


「話してる所悪いが少し聞いてくれ、俺達は先程移動ポータルという物に乗ってダンジョンと言われる場所に行ってきた、偉ぶるつもりは全くないが、一応先輩になるな。」


 ざわざわと話す言葉が聞こえなくなり、一同が俺の方を見る、値踏みしてるかのように見てくる奴もいるが放っておこう。


「続けて話すぞ?まず女神には逆らうな、先に召喚された俺達の中の1人に、女神に楯突いたやつがいて、女神が手を叩いただけで消滅させられたのを見た。」


 アンネ、ベラ、ギレンの他に一緒に召喚された女が頷いた。


「もっと居たよな?他の奴等はどうしたんだ?」


 今度は後発組とでも言うべきか、後からここに来た奴等の中の1人が口を開く。


「★★ベン・コナーと申します、演説家というまぁ人前に出て講師のようなものをしている者です、お見知り置きを。」


「えーっと女神様ですかな?に連れられて神殿奥の部屋に此方の女性と一緒に入った方々合計7名ですかな?は消えてしまいました。私も詳しい事は分かりませんゆえ、此方の女性に話をお聞きしたい所存です。」


 待機場の扉が開いて女神ディアーナが現れた。


「そこからは私が話しましょう。」


「使えない肉片には餌になってもらいましたわ、経験値という名の餌に。ここにいるこの水魔術師の女性★★★マイア・ディ・パイモンに吸収された形ですわね。」


 名前を出されたマイアという女性がビクッと反応するが、唇を噛み締めて耐えている。


 女神が一同を見渡して愉快そうに笑いながら話しを続ける。


「貴方達も使えない肉片だと、いつ誰かの餌になるかも知れませんわね。」


 ヒッ ハァハァ …。


 ★の女性達は今回運良く餌にならずに済んでいたが、次は無いかもと暗に言われて1人は悲鳴をあげ1人は過呼吸を起こしている。残った1人もガタガタと震えていた。


「マスターは女性にお優しい方と見受けたので、女性はやや有利かも知れませんわね。ただ、肉片よりタチの悪い屑肉は私が処分を致しますが。」


 口の端をぐにゃりと歪めた女神ディアーナがそう言葉を発すると3人の女性の内二人はヘナヘナと力無く崩れ落ちた。もう1人はバタンと泡を吹いて倒れてしまった。


 慌てて駆け寄ったベラが回復魔法をかけている。


「一般的には合成と呼ぶわ。あとはそこのマイアさんから聞いてくださる?」


「女神様、一つ質問があるんですが。」


 目尻を上げて俺の方を向く女神ディアーナ


「先程少し頑張った剣士ジュリオ君ね、いいわ、ご褒美に一つだけなら応えてあげても。」


「感謝します、では早速。どうしたら俺達は元の世界に帰れるんですか?」


 俺が元いた世界には獣人など居なかった、魔法も無い。しかしここには獣人がいる、魔術師とかいう女もいる、という事は別の世界なのだろうここは。勝手に連れて来られたのなら、帰れるなら帰りたいのが本音だ。


 女神ディアーナが値踏みするように俺を見てくる。非常に美しい顔をしているのに視線は冷酷で女神という呼称は相応しくない。冷や汗が背中を伝う、まずかったか?


「ウフフいいわ、応えてあげましょう、ダンジョン100階をクリア出来たら帰れるかも知れないわね、それもマスター次第よ。」


 マスター[主人]って事か、今は消えているが、ずっと妙に不愉快な視線を感じていたのはそれか。


「あの、私も一つだけ良いでしょうか?」


 女神ディアーナが露骨に嫌そうな顔をして、女性を回復しながら話すベラに向ける。


「ベラは先程何も役に立っていない、まずいか!?」


「しっ、死んだら光の粒子に包まれて消えていましたが、どうなったのでしょうか!?」


 女神が手を叩く動作をとる前にベラが言い切った。


 女神ディアーナがキョトンとした顔をして、手を下に降ろした。クスクスと笑いながら話し出す。


「言い忘れてましたわ、死んだら死んだで終わり、元の世界に戻る事なんてないわよ?この[ラバルナ]のダンジョンに吸収されてその内モンスターの養分にでもなるんじゃないかしら?」


 その時完全に死角から★★バロンが女神ディアーナに襲い掛かる


 ガィーン 


 鈍い音と、見えない壁に遮られたように進めなくなったバロンに女神が顔を向けて話す。


「獣は《《おいた》》が過ぎるわね、教育が必要かしら。」


 女神ディアーナが指をパチンと鳴らすと狼の獣人バロンが弾けるように女神から吹っ飛んで離れた、クルッと空中で体勢を直し足から着地したバロンは尻尾を巻いて座り込む。


「そうそう、獣は可愛気がないとね、マスターに怒られちゃうから命は取らないであげるわ、次はないけど。」


「あとはこれね」パチンと女神ディアーナが指を鳴らすと、待機場の机の上にパサパサッと纏められた書類が落ちて来る。


「このラバルナの施設の使い方ガイドだから穴が空くほど見ておくのをお勧めするわ。それと先程も見て分かった通り私には一切攻撃が効かないから、無駄な事は止めなさいね、次は貴方達で教えてやりなさい、連帯責任取らせちゃうかも知れないわよ。」


 そう言って女神ディアーナが待機場から去って行った。


 俺達はマイアという女性から合成の話を聞く事にした。


「神殿の奥に連れて行かれた私達は扉が閉まった瞬間に目を開けられない程のまばゆい光がしたと思ったら私以外の皆が消えていたわ。それとレベルアップを報せるキラキラしたエフェクトが流れたわ。」


「2度目も同じだけど、残念ながら何も得た物は無かったみたいね、今度はエフェクト無しだったわ。」


 ダンジョンでモンスターにやられても死に、合成されても死ぬ、勿論女神に楯突いても次は死ぬか…。


「とんでもねえ所に連れて来られたようだな。」


 俺達は死なないで済むように、必死でラバルナ施設使い方ガイドを無言で読んだ。

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