#19 妹との時間
私は上野四季。人間観察が好きな女子高生だ。ただ、なぜか家族にはウザがられている。いつも、妹たちのことを思って助言しているのになぜだろう?反抗期もあるのだろうが、何かそれ以外のものを感じる...
今日は土曜日。どこかに行くのも面倒くさいので家でゆっくりすることにした。適当にスマホをいじっていると、妹のナツが何かしている。あれは料理を作っているようだ。何の料理を作っているのか聞いてみた。
「ねぇ、何作ってるの?ざらめとか?その材料だと、普通の料理じゃなくてスイーツっぽいけど」
使っている材料は、砂糖、卵、牛乳などでもしかしたらもっと難しいものを作っているのかもしれない。ただ、なぜかナツは私の質問に答えてくれない。最近はいつもこうだ。私の質問に答えてくれないことも多いし、答えてくれても一言だけだったりする。なぜだろう?...そんなことを考えていると、ナツが台所から出てきて、やっと質問に答えてくれた。
「今作ってるのは焼きプリンだよ。お姉ちゃんにはあげないから」
ナツが冷たくそう言う。なるほど。焼きプリンを作っているのか。あれは途中で焼いたりするからちょっと危険だと思うのだが大丈夫だろうか?ナツはあまり器用じゃないし、3年ぐらい前に母と料理をして手を切ってしまったから、料理はあまりしないほうがいいと思うだけど…
「ナツはあんまり器用じゃないし、この前も手を切っちゃったでしょ?やめといたほうがいいと思うけどなぁ...なんならお姉ちゃんが代わりに作ってあげようか?」
ナツが明らかに機嫌を悪くした。本当になんで?ただプリンが食べたいだけなら、私が作ってあげるのに。いや、それよりも買ったほうが早いし、なんで自分で作っているんだろう?もしかして、自分で作ることで何かを作るという経験をしたいのかな?それならわからなくもないけど…
「お姉ちゃんさぁ、なんでいつも私がやること全部に口出しするの?私だって自分で何かしたいし、そうやっていちいち言われるとむかつくんだけど。あと、手を切ったの4年前のことだし」
...そんな風に思われていたのか。ちょっとショックだな。確かに、いろいろなことに口出ししてた気もする...でも、それはナツが危険な目にあってほしくないからであって別に悪意があったわけじゃないんだけどな…
「お姉ちゃんのことだから、別に悪意があったわけじゃないって思ってるかもしれないけど、こっちからすると迷惑なんだよね。幼稚園児じゃないんだから、少しは目を離してほしいんだけど」
めちゃくちゃナツの事見てるのはそうだけどさぁ...そこまで言われると傷ついちゃうんだけど…もしかして、私ってめちゃくちゃ嫌なことしてたのかなぁ…
「あの...ナツ、ごめんね?いつも言い過ぎちゃって。でも、それも全部ナツのことを思って言ってるからちょっとは許してほしいなぁ...」
一応謝罪してみたが、ナツの機嫌はまだ治らないようで、
「お姉ちゃんのその、全部善意でやってるっていう認識もよくないと思うよ。自分でも気づいてないかもしれないけど、お姉ちゃんって自分が理解できないことが好きじゃないでしょ?だから、家族とか友達の自分が理解できない行動をやめさせようとグチグチ言うんじゃない?」
よく考えてみれば、そうなのかもしれない...私は無意識に家族に対してひどいことを言っていたのかも...本当に申し訳ない気持ちになってきた。
「お姉ちゃんが泣きそうだからここでやめとくけどさ、あんまり人のこと気にしすぎて自分が嫌な思いしたり、人に嫌な思いさせるのは人としてはちょっとどうかと思うから、考え直したほうがいいと思うよ。まあ、完全にそのおせっかいが嫌いかといわれるとそうでもないけど...」
言い終わると、ナツはそそくさと台所に戻っていった。最後に小さい声でナツが嬉しいことを言った気がする!いやぁ、やっぱりナツは優しいなぁ。ほくほくしながら、ナツが焼きプリンを作り終わるのを待つ。私の予想だと、なんだかんだ言いつつナツは私の分までプリンを作ってくれてるはず!材料も多かったし!50分ほどして、寝ている私をナツが起こした。
「お姉ちゃん!焼きプリンできたけど食べる?あと、私が真剣に話したんだから、もうちょっと頭悩ませるとかしてよ...」
ナツが小言を言ってくる。まあ、確かに私にも悪い部分があると思うけど、反省するのは後からでもできるから早くできたてのプリンを食べたいな。
「ちょっと!まだ食べないで!...お姉ちゃん、さっきの私の話本当に理解した?」
うんうんとうなずきながら、二口目を食べようとする私。だが、本気の目で睨んでくるナツが怖かったのですぐにスプーンを置いてさっきの話を思い出す。
「えっと、あれでしょ?私は人に対して過干渉すぎるから、それを抑えろってことでしょ?わかってるって!」
多分そんな内容だったはず...だが、まだ睨んでくるナツ。もしかして、そうじゃなかった!?
「それもあるけど、根本的に自分の価値観を人に当てはめるのやめてってこと!人は人、自分は自分なんだから、そこまで気にする必要ないの!それとも、気にしたい理由でもあるの?」
...そういえば、なんで私は私と違う人をあんまり好きじゃないんだろう...考えたこともなかったけれど、そこに何かあるのかもしれない
「黙ってプリンを食べようとしない!まだ話は終わってないんだから!」
いけない。無意識にスプーンを口に運んでしまいそうになった。だが、そこまで他人を気にするのはなんでだろう?自分と違う人が許せないから?それもあるかもしれないが、もっと何かある気がする...なんとなく、自分は他者を枠に当てはめることで理解しやすくしたり、自分が正しいと思いたい?それが一番大きな理由かもしれない。もしかして、私はとても劣等感を持った人間なのかもしれないなぁ…
「お姉ちゃんもしっかり考えたみたいだし、プリンはもう食べていいよ。...あと、多分お姉ちゃんは自分一人だとそういうのに気づけないだろうから、人間関係でわからないことあったら私とか、優しい友達に相談してよね?そうしないと、いつまでたっても成長しないでしょ」
そう言い終わって、ナツが自分の食器を片付け始める。やっぱり、ナツは優しいなぁ。そこまで行ってくれるなんて。そんな優しいナツに一つだけわがままを言ってみよう。
「ねえ、今日お姉ちゃんと一緒に寝ない?」
なんとなく、自分がなぜそうするのか考えてみて、すごく悲しい気分になったから。という理由は言わないでナツにそうお願いしてみた。
「お姉ちゃんが寂しいならいいけど...寝てるときに布団取らないでよね」
若干恥ずかしそうに言うナツ。そういう所もかわいいんだよね。