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小説&エッセイ

お昼のトランポリン

作者: cyxalis

阪神淡路大震災の記憶ってどのくらい覚えていますか?

それはちょうど乳幼児(にゅうようじ)のお昼寝の時間。


お布団の上でぬくぬくしていたのに、いきなり体が上下に跳ねて叩きつけられる。


痛い!


叩かれたのかと思いながら泣き声をあげ六畳の部屋を見渡すと、母が背丈を越えるタンスを抑えていた。

世界が揺れる中、相撲の四股(しこ)のような体制で全力で抑えている。


涙が引っ込んだ。


叩かれたわけでもなく跳ねる自身が面白かったが、母の体勢も面白かった。


揺れは徐々に落ち着いていた。

タンスを抑える母を手伝いたくてタンスに近づく。


タンスを触った瞬間、

「危ないから触るんじゃありません!!」

聞いたこともないような母の怒号が響く。

「来ないで!!あっちいって!!」


じゃあどうしたらいいの。

タンスと布団がある寝所から居間に歩いていく。

引き戸は開いていて、扉の先の部屋にテレビがあるのが見える。


そっちに歩いていくと、

「こっちに来なさい!!」

と母の怒号。どっちやねん。


どうしようもないので布団の上に座る。

揺れがしっかり止まってから母はタンスから手を離した。


母が居間の大きなテレビが机から落ちかかっているのを戻している。布団の上から眺めながらまた寝ようとした瞬間、今度は身体が横に転がった。


戻そうとしたTVが揺れで滑ってテレビ台から落ちそうになっているのを、母がまた四股(しこ)の体勢で支えている。


当時のテレビは非常に重くて成人男性2人で運ぶ物だったし高い電化製品だったから、完全に持ち上げることもできず落とすこともできず母はそのまま動けなくなった。


揺れがおさまった後も10分くらい同じ体勢の母が心配になり、手伝えないかと近寄ってテレビに手を添える。


母が目を剥いて叫んだ。

「あっちいってて!!」


……怒られてばっかり!!

手伝おうとしただけなのに。


仕方がないので布団の上にまた横になる。

そこから母を眺めていたが、母がやっとこさテレビをテレビ台に載せたのはそこから15分くらいあとだった。




テレビを戻してしばらくして、父が家に飛び込んで来た。自転車を飛ばしてきたそうだ。

母と二言、三言交わしたと思ったら父は家を飛び出した。

「生徒の家を見てくる。」



母はしばらく放心していた。

何も手伝えない私は口をヘにして大人しく寝たのだった。



しっかり眠った私は夕方に帰ってきた父の、

「生徒は全員無事だった。」

の言葉で目を覚まし、

「1人で大変だったのよ。」

という母の言葉に無事ヘソを曲げた。



ーー私だっていたよ!手伝えなかったけどねーー






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― 新着の感想 ―
忘れられない出来事ですね 幼いながらもお母様を支えようとされたあなた様なお気持ち、わかります 皆様が御無事で何よりですね あれから30年がたちますが、その日が来ると特に記憶が甦ります
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