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7、浮気

山﨑はありったけの説明をしたが。

話にならない様なものばかりだった。

どういう話か。

話を纏めるとこうだ。


寂しかった。だから彼と浮気をした。


いやいや。

だからといえ美談話になるかこれ?

期待した俺が馬鹿だったな。

そう思いながら俺は「帰れ」と言ってから山﨑を切り捨てた。

最後のチャンスは無駄に終わった。

俺は山﨑と別れてから玄関を閉める。



「お兄ちゃん」

「...何だ?」

「無駄だったでしょ?...話なんか聞いても」


確かにそうだったな。

思いながらも俺は回答を控えた。

それから俺は伸びをする。

そして俺は八鹿を見る。

八鹿は俺を見てから「...」となる。


「にしても最低だね」

「そうだな...もう話は通じないな」

「...復讐のしようがない感じがする。...哀れすぎて」

「確かにな」


俺はその言葉を言ってからリビングに入る。

それから土砂降りの音を聞きながら「...何かするか?」と八鹿に聞く。

八鹿は「じゃあゲームでもしようか」と返事をする。

俺は笑みを浮かべて頷いてからゲーム機を出す。

そしてゲームをした。



翌日になってから俺は表に出る。

それから歩く。

今日は...小テストの日か。

考えながら「嫌なもんだ」と呟きながら河川敷を歩く。

そして登校をしていると「先輩」と声がした。


「...よお。七瀬」

「はい。おはようございます。元気ですか?」

「...まあ多少はマシになったよ。...昨日アイツと話した」

「...あ。話しましたね。...それから...」

「違う。またアイツが俺の家に来てな」


俺の言葉に七瀬は「!!!!?」となる。

その様子を見ながら俺は目線を河川敷の川に向ける。

それから「何も変わらなかったな」と呟いた。

すると七瀬は沈黙しながら俺に向いた。


「...そうだったんですね」

「そうだな。結論から言って何も変わらなかった。話をしても」

「妹さんも居たんですか?」

「居た。接触したけど何も変わらない。...奴は言い訳ばかりだ」

「そうだったんですね...」

「...今度妹に会ってみるか?」

「はい。是非」


そして俺は煌びやかな河川敷から目線を外してから七瀬と一緒に登校していると「やあ」と声がした。

背後を見ると...智和が顔を引き攣らせながら立っていた。

俺は「...どうした」と聞くと。

智和は「ざけんなコラ。朝からイチャイチャしやがってよ」と苦笑い。


「七瀬とはそういう関係じゃない。というか生きていたんだなお前」

「お前な...それはどういう意味だ...」

「すまん」


智和は溜息を吐いてから「ったく」と呟く。

それから俺の肩に手を添えてから「食堂チケット1枚分な」とボソッと呟いてから去って行く。

俺は目を丸くしてから苦笑した。

そしてそそくさと去って行くその背中を見た。


「?...先輩。良いんですか?」

「...ああ。智和も何か...配慮してくれたみたいだ」

「あはは。そうなんですね」

「...それにしても...良い天気だよな」

「昨日と打って違ってですね」

「ああ」


そして俺は智和の去ったその背中を追う様にしながら学校に登校する。

それから教室に向かうと...一宮が居た。

俺を見てから笑みを浮かべる。

何だコイツは...。



「こんにちは。...長谷先輩」

「やあ。...クソ野郎。元気か」

「いきなりクソ野郎とは心外ですね。貴方は俺を可愛がっていたでしょう」

「今のお前にはもう復讐心しかない」

「...そうですか」

「何をしに来た。カスが」

「一言を言いに来ました」

「...は?」


俺は威嚇する様に一宮を見る。

すると一宮は「彼女は悪くない」と笑みを浮かべる。

それからそのまま手を振ってから踵を返して去って行った。

その言葉に俺は「...」となってから一宮を見た。


「何をしに来たんだ?あの野郎」

「...知らんな」

「何か教室の前をうろちょろしていたから見ていたけど」

「...すまんな。お前にも迷惑かけて。智和」

「いや。別に良いんだけど」


智和は肩をすくめながら俺を見る。

俺はそんな姿に先程の言葉を思い出す。

「彼女は悪くない」?

庇っているつもりかあのカス野郎め。


「一宮の事ぐらいはネットに載せたらどうなんだ」

「言った様に俺達が手を出したら意味無いだろ」

「...しかしもうその次元超えてね?」

「...手を出してないからな。マジに。...それに俺らが捕まったらマジ意味無い。それはそれで不愉快だ」

「...お前が言うなら良いけどさ」


何かを渡してきた智和。

それはボイスレコーダーだった。

俺は「???」を浮かべながら智和を見る。

智和は「これ。録音したんだわ。さっきの会話」と言う。

録音て。


「待て。何があったんだ」

「...いや。一宮が喧嘩腰になってきたから。...だから念の為にな」

「こんなもん持ち歩くな。怖いわ」

「いやいや。そう言っている次元でも無いだろ。...アイツら何をするかも分からん」

「そうだけど」


俺達は場所を移した。

それから屋上の階段付近で録音音声を再生して聴く。

するとこんな会話が聞こえた。


「で。お前は何をしに来たんだ。仁ならいねぇぞ」

「まあそうですね。...立木先輩にも用がありましたから」

「は?」

「詮索して無いですか?俺達を」

「...それがどうした」

「いやいや。あまり詮索するなら警告を、と思いまして。...貴方も結構最低な真似をしたでしょう。昔」

「...確かにそうだが?」


智和の過去話を出すとはな。

そう思いながら俺は音声を聴く。

すると一宮はこう言った。

「貴方は人の女を取ったでしょう」と。


「...」

「...まあ確かにそうなんだけどな。...だから俺は今...戒めをしているけど」

「...しかしそれは3年前の話でしかも...」

「何れにせよ戒めは戒め。過去話は今話だ。...だから出されると何も言えん」

「...だが...」


そして俺はボイスを聴く。

智和は深呼吸して「確かにそうだ。...だが俺はお前と同じだが長谷仁は違う」と否定した。

それから「彼をお前と一緒にするな」と威嚇する様に、だ。

すると一宮は無言になってからクスッと笑った。


「何れにせよ貴方も最低。俺も最低だけど...俺よりか貴方の過去が最低です。...貴方は決して光の道には戻れませんよ」

「...俺は別に道に戻れんでも良いけど。...お前と一緒に滝壺に落ちるまでは死ねないな」

「滝壺?...ああ。シャーロックホームズ的な?」

「どうでも良いが...つまりはお前も死ねって事だよ。一宮」


そして話は終わった。

俺は静かに膝にボイスレコーダーを置く。

それから智和を見る。

智和は苦笑しながら伸びをした。


「まあスッキリしたわ」

「...何がだ。...お前...騙されたんだろ。...あの女に」

「...確かにな。...だけど蓋を開けたらこんなもんさ。...噂は消えない。...だから俺は死ぬ時は一宮と一緒に死ぬよ。社会的にも」

「...」


俺は静かに笑みを浮かべる智和を見る。

智和は浮気した。

しかしそれは浮気では無い。


全て仕組まれた浮気だったと俺は思っている。

智和はそんな真似をする様な男じゃないしそんな根性はない。

だけど...社会はそれを認めない。

一度染み込んだものはなかなか拭えない。

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