6、これで最後だ
☆
そんなこんなの一件があり俺は家に帰る。
すると八鹿が出て来た。
俺を心の底からだろうけど心配げに見てくる。
その姿を見てから俺は八鹿の頭を撫でた。
「...大丈夫。死んでないから」
「...まあそうだけど...でもそれは...」
「心配してくれて有難うな。八鹿。でも俺は大丈夫だ」
そして俺は八鹿の頭を撫でてからそのままリビングに入る。
すると八鹿は背後から「何か食べる?」と聞いてくる。
その言葉に俺はビニール袋を見せた。
中にはケーキが入っている。
「コンビニのケーキだけど」
「...お兄ちゃん...」
「紅茶でも沸かそうか。...そして食べよう」
「そうだね。...お兄ちゃんが言うなら」
俺は紅茶を淹れようと思いキッチンに向かうが。
八鹿が首を振って俺の手を止める。
そして「私が淹れるから」と笑みを浮かべてくる。
その言葉に甘えた。
☆
私は...お兄ちゃんを裏切った山﨑を決して許さない気でいた。
全てを裏切りやがって...私は絶対に許さない。
そう思いながら私は紅茶を淹れる。
それからお兄ちゃんの元に持っていく。
「...八鹿。有難うな」
「何が?...私は何もできてないから」
「できているよ。...俺にとっては最高の妹だ」
「...山﨑とはどうなっているの?関係」
「ああ。...アイツの方から接触があったから。別れた」
「別れたんだね。...良かった」
「...アイツの。...後輩の力もあってな」
「お兄ちゃんの後輩...?...それは...」
「ああ。今度紹介するから」
そしてお兄ちゃんは笑みを浮かべる。
私はその姿を見ながら頷いた。
それからケーキを出す。
苺のケーキとモンブランだった。
私はそのケーキを静かに見つめる。
「どっち食べる?」
「私?...いや。お兄ちゃんが買ってきたんだから」
「いや。決めてもらって良いよ。お前に」
「...そうだね。じゃあモンブランを食べる」
お兄ちゃんは落ち込んでいる私に柔和になりながら「じゃあ半分こしようか」と提案する。
私は頷いた。
それから私はフォークで切ってからお互いに入れ替える。
そして私はモンブランを食べる。
有名な店舗のモンブラン。
美味しい。
「...美味しいな。流石に」
「コンビニの力は上がってきているからね...こういうのも」
「そうだな。...大丈夫か」
「...お兄ちゃん。私は山﨑...を許せない」
「...それで怒っていると?」
「そうだね。...お兄ちゃんはないの?そういうの」
「...無いって言ったら嘘になる。...お前達がそうやって怒ってくれるのが本当に嬉しいしな」
そう言うお兄ちゃん。
私は「?」を浮かべてからお兄ちゃんを見る。
お前(達)?
お兄ちゃんに向いてから「お兄ちゃん。お前達っていうのは?」と聞いてみる。
「...ああ。...いや。後輩も同じ事を言っていたなって思って」
「ああ。そうなんだね。...じゃあその後輩さんと私、仲良くなれるかも」
「...後輩は俺思いだからな。...七瀬って言うんだけど」
「七瀬さん...そうなんだね」
「...」
お兄ちゃんは静かに黙る。
それから顔を上げてからこう言う。
「だけどこっちから手を出したら負けっていう話はしている」
「...だけどもう出されているよね?お兄ちゃん。...負けもクソもなくない?」
「だが...」
「お兄ちゃん。ソイツは。...山﨑は調子に乗って来ると思う。...いくら幼馴染であってももう論外に手を出さないと。...絶対に敵意を向いてくる。それに調子に乗ってくるよきっと。弱腰は駄目だよ」
「...確かにな」
「...私は弱腰だから...負けてきたけど。...お兄ちゃんは負けてほしくないしね」
そう言いながら私は紅茶を見る。
茶柱が立っている。
はは。無駄に運が良いな。
思いながら私は怒りを露わにする。
「...山﨑を地に落とすべきだよ」
「...確かにな」
「...お兄ちゃんが言う手出しは確かにそうだけど...だけど耐えれば耐えたなりの見返りがあるわけじゃ無いから。...何かされたら直ぐに反撃しないとね」
「...」
私は言いながらお兄ちゃんを見る。
そうしているとインターフォンが鳴った。
その事に私は「宅配便...」と呟いてからモニターの無いインターフォンなので玄関を開ける。
そして見開いた。
「...山﨑雪香」
「...こ...こんにちは」
「...何の用事ですか」
威嚇する様に私は目線を向ける。
すると背後から「どうした。八鹿?...っておま...」と声がした。
山﨑雪香は「その...」と言う。
「...誤解を...解きたくて」
「...は?誤解もクソもない。証拠を直に見た。...帰ってくれるか」
そして私を室内に入れてから山﨑雪香を追い払う様にする。
だが山﨑雪香は動かない。
私達に縋ってくる様な目を向ける。
しつこいなコイツ。
「...お願い...は、話をさせて。1回でも良いから」
「馬鹿か。話なんぞ無い。死んでくれるか。100回ぐらい。帰れっつーの」
「...」
山﨑雪香は横に首を振る。
私はスマホを取り出してそれから威嚇する。
そして睨む。
「警察呼びますよ。あまりにしつこいと」
「...!」
そして山﨑雪香は「...分かりました」とドアを離す。
それから「...」となる私達。
お兄ちゃんが動かない山﨑雪香を見てから「...これが最後だ」と言う。
そうしてから山﨑を睨む。
「...お兄ちゃん。もう話を聞いても無駄だって」
「...これが最後だ。...話次第だが。...絶縁する」
山﨑は私達を見る。
そして雨に濡れている身体を向けてくる。
それから口を開いた。