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2、終焉を破壊する者

「先輩!おはようございます!」

「ああ。七瀬。おはようさん」


茶色の髪の毛のギャル。

少しだけ緩めた首元に空いている谷間。

小さなリボンが髪の毛に髪留めとして付いている美少女。

彼女は俺の2人目の後輩の、七瀬奏ななせかなで、という。


16歳の人気かつ人気の超人気美少女の女子高生。

彼女が居ても居なくても俺にベタベタくっ付いてくる性格をしている...が。

今はそんな気分にならないな。


「?...何か元気無いですね?パイセン」

「!...あ、ああ。昨日ちょっと色々あってな」

「昨日何があったんですか?」

「...」


七瀬は俺の表情にかなり真剣な顔になった。

そして静かに聞く。

ああクソ。


感情が抑えられない。

全て隠せない。

今日休めば良かったか?

そう思いながら俺は沈黙していると。


「先輩。私は貴方の味方です。...何があったか話してくれますか?」

「実は...幼馴染が浮気してな。それも俺の可愛がっている後輩とな」


まさかの言葉に愕然としてから七瀬は見開く。

その姿を見てから「...」となっていると七瀬は「何ですかそれ」とワナワナと震え始めた。

そして歯を食いしばる。

犬歯が激しく擦れる音がした。


「本当ですか?かなり許せないんですけど」

「そうだな。...マジだ。...だけどお前がそんなに怒る必要無いぞ。...俺の問題だし」

「そういう訳にはいかないです。...最低ですね...最低すぎる!!!!!」

「確かに汚らわしいけどな」

「それどころか他人に股を開いて?最低。キモい」


七瀬は本気で心から怒っている様だった。

そして歯をまた食いしばる。

そんな姿を見ていると七瀬はこう言った。

一発殴りたい気分です、と、だ。

俺は静かに目線を向ける。


「分かる。...気持ちは分かるよ。だがそれをやったら駄目だ。確実に俺達の負けだ」

「分かりますけど。マジ...キモい!!!!!」

「正直アイツが俺に別れを切り出さずにこうしたのは謎だよな」

「そういう浮気で成り上がっていて調子こいている奴って自らの満足する様にポーンの駒の様に予備を置きたがる感じですから。そういう事でしょうね所詮は」

「お前の例えは極端だな」

「こう見えてもチェスが好きですから...ってかまあそれは今はどうでも良いですよ」


七瀬は下駄箱を蹴飛ばしてから「クソアマが」と吐き捨てる。

俺はその姿に「落ち着け」と宥める。

そして七瀬の頭を撫でた。

それから髪の毛を触る。


「先輩。甘すぎですよ貴方」

「...甘すぎる訳じゃないっていうか。...何も考えれないだけだけどな」

「...先輩。ネットにばら撒きましょう。その情報」

「だから先手を打ったらマズイって」


そして俺達は移動をする。

それから俺と七瀬は教室に向かう。

各々の教室に、だ。

すると別れ際に七瀬が俺に向いてきた。


「...私は決して裏切りません」

「...七瀬?

「そのクソ女と違いますから」

「...七瀬...」

「だから許せないんです」

「...」


俺は静かに七瀬を見る。

そして七瀬は俺を心配げに見てくる。

俺はその顔を見てから「...だな」とゆっくり返事をした。



大地も地面も。

全部が霞んで見える。

そして晴れている筈の外は雨が降っている様に見える感じだ。

晴れているのに全部灰色に見える。


俺は一歩、また一歩と重苦しい足を動かしながら教室に入る。

強迫観念が酷い様だ。

思いながら教室の戸を開く。

七瀬と話して多少は良いかと思ったらそんな事は無かった。

マジに最悪極まりない。


「よお」

「おう」

「今朝は忙しくてな。すまん...ん?どうしたお前」


教室に行くと友人の立木智和たちきともかずが俺を見て目を丸くしてきた。

そばかすのある四角いメガネを掛けている男子。

俺の顔色と感情を読み取ってからだろうけど心配げな顔をする。

その姿に俺は「ああ。色々あってな」と答えた。

そして席に腰掛けていると智和が「格ゲーでも負けたか」と揶揄う。


「ああ。...いや。そうじゃないが...まあお前にも話しとこうかな」

「ん?」

「雪香が浮気した」

「は?何...」


智和は「...マジか」と聞き返す。

俺はその言葉に「...マジだな。朝から胃に食べ物が入らない状態だわ」と答える。

すると智和は顔を顰めてから唇を噛む。

それから俺を見る。


「...外に出るか?」

「アホかお前は。時間がねぇよ」

「今は授業をサボる意味があるだろ。重症じゃないか」

「ねぇよ。...お前の言い分は有難いし感謝はしているけどいいや」


思い出すだけでもゾッとする。

雪香...クソ野郎が。

割と本気のマジに最低な気分になる。

とにかく吐き気がしてくるが。


考えながら.....俺は智和を見る。

智和は心配げな顔をしたまま俺を見ていた。

俺はその顔に「ならお前に何か奢ってもらおうかな」と苦笑する。

智和は頷いた。


「じゃあ汁粉でも飲むか」

「お前はアホか。今の時期はあちーよ」

「はははwww」


智和のこういう所が好きなんだが。

いつでも明るく誰とでも接する。

この力が俺にも欲しい。

そう思える優しさだな...と思う。

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