4話
‐第四話‐
「伶峰……?」
泣き方なんて知らなかったはずなのに、なんでこんなに泣いてるんだろう。
「伶…!」
その瞬間、綺羅が私を抱きしめていた。
私はピタリと泣き止んだ。本能的に泣き止んだ。
「き、ら」
落ち着かせるように背中をポンポンとさする。
冷静さを取り戻してきたところで、自分の気持ちをポツリポツリと綺羅に話した。
「伶は優しすぎますね。俺は取り返しのつかないことをしたんですよ。そんな、俺が苦しむとか考えなくて良いんです。一番傷付いたのは伶なんだから。」
「違う、そんなんじゃない。優しいんじゃない。もう自分責めないでほしい、きら」
「もう、いいんですよ。気にしないで下さい。俺は伶が例えなんと言おうとずっと背負ったまま生きていくことを決めたんですよ。」
「……」
「伶峰が俺をそんな風に思ってくれるのは嬉しいです、でも、俺の中ではずっと、過去は生きていますから。伶はもう、解放されて、これからやりたいことをしながら生きて幸せになってほしいです。これから先、大切な人ができて、家族ができて、そんな当たり前な日常の幸せを過ごしてほしいんです。」
ズキン、と、なんだか胸が痛かった。
大切な人?
家族?
なんで綺羅がそんなこと言うの?
なんでこんな風に思うの?
こんな、まるで、私が綺羅のことを好きみたいな、感情。
お茶を飲み干した湯のみを洗いにいく彼の背中を見て、焦った。どこか遠くに行くような感覚だった。もう会えなくなる気がした。
「私………やりたいことはない。だけど、大切な人は、いるとおもう。」
気付いたら身体が勝手に彼の後ろから抱きついてしまっていた。
キツく、ただ必死に。
離れていかないように、シャツをぎゅっと掴みながら。
「………伶?」
「わ、私、綺羅のこと大嫌いで、死んでほしかった。なのに、ずっとどこかで綺羅のことしか考えてなくて……本当は、認めたくなかっただけ…で…大切…なんだと思う。綺羅が居なくなったら、寂しい。しばらく会えなくなった時、ずっと心、空っぽだった。」
微かに彼の身体が震えているのを感じた。今更都合の良いこと言わないで下さいって、怒ってるのだろうか。
とにかく必死にしがみついていると、次の瞬間、彼にキツく抱き締められていた。
「っ………れ、い」
小さく私を呼ぶ。
声が震えていて。
「俺、なんか、こんな資格ないのに……」
少し身体を離れて彼の顔を覗きこむと雫が頬を伝っていた。
涙…。
彼が涙を流す姿はひどく綺麗で、切なかった。