2話
‐第二話‐
私に優しくすれば、罪を赦してくれる。
だから私につきまとうし助けてくれたりする。
そんな思考にもなったことがあるけれど、違う。
表情で分かる。
綺羅は、いつも私を心配していたんだと思う。
私を必要としてくれていたんだと今更気付いて、認めたところで、もう彼の居場所も知らない。
光と闇の戦いが終わってからは、能力も使えなくなって他の能力者たちと会うこともなくなった。
この気持ちって何なんだろう。
綺羅に、会いたい?
もう、私たちを不幸にした能力も無い。
けど、もう遅い。
散々失った。今更会えない。
襤褸とも喋れなくなってしまって、私はもう、本当に独りなんだと気付く。
「悲しい。」
涙の流し方も、感情を表情に出すことも分からなくて、無表情のままなんとなく久しぶりに外へ出てみた。
大好きなせんべいでも買いに行こう。
そしたら少しはこのモヤモヤした気持ちも無くなる。
少しだけ遠いお店まで歩いてみようと、ゆっくりと歩いていると。
「はあ?ふざけんな馬鹿が」
「馬鹿言うな。ったく。可愛げねえなあ。」
「うるさい。」
なんだか聞き覚えのある声。
振り返るとそこにあった姿は。
「っ………伶峰!?」
「刃霧………それに士季。」
伶峰が昔、唯一そばにいると安息できる存在だった彼女が居た。
でも、刃霧は大嫌いだった士季の隣にいる。
「伶峰……」
互いの名前を呼び、彼女と抱きしめあう。ああ、懐かしくて、居心地が良い。
再会を喜んでから、刃霧と士季の話を聞く。
刃霧もまた、認めたくなかった自分の感情を認めて士季が大切だと気付いたそうだ。
偶然大学生になってから再会し、付き合い始めたと知る。
「なんだろう、士季も死んじゃえって思ってたけど、今の士季は嫌いじゃない。なんか、昔の士季とは違うんだね。」
「刃霧のおかげだと思う。俺が、こんな風に生きれるようになったのはよ。でも…過去の過ちも罪も忘れた訳じゃなくて、背負っていこうと思ってんだよ。伶峰……ずっと謝りたかった…お前の父親のこと。ごめんな。」
「うん、私も今更気付いて認めた。綺羅のことも士季のことも父さんのことも……」
俯く伶峰を刃霧が抱きしめる。
「刃霧……士季………私、綺羅に会いたい……………会いたい。でもどこにいるか分からなくて、会えない……」
士季は財布に入っていたレシートの裏に何かを書き出し伶峰に突きだした。
「住所。いま、あいつ独り暮らししてんだ。ここにいる。もし会いたいなら行ったらいい。会ってやってくれるか?」
「士季………。うん、あり、がと…」
その返事を聞いた士季は嬉しそうに笑って、刃霧と出掛けて行った。
「綺羅に、会えるといいな……」
住所の書いてあるレシートの紙切れを大切そうにしまって、駆け足で向かった。