1話
‐綺羅×怜峰‐第一話
散々傷付けて。
散々傷付いて。
唯一の家族は流川、父さんだけ。
そんな大切な人も、殺された。
幼い頃、一人だった私を助けてくれた綺羅に殺された。
忘れもしないあの光景。
だから、綺羅に苦しんでほしかった。
そうしたら、私の苦しみが分かるはずだから。
それなのに。
ある日いなくなってしまった襤褸を見つけて助けてくれた事があった。
私の大切な襤褸を。
それからも、何度か私を助けることがあった。
頼んでもいないのに、余計なことしないで。大嫌い。
大嫌いなのに、いつも考えるのは彼のこと。
私が復讐に行く度に、下手くそに頬笑むようになった。
困ったような、悲しいような微笑み。
もう綺羅にいなくなってほしい。
それか、私がいなくなりたい。
苦しみも悲しみも、今ではよく分からない感情だけど、彼の下手くそな微笑みを見るたびなんだか目眩がする。
考えるのは疲れる。朝日が昇る頃にそっと目を閉じて、眠りについた。
「伶峰。」
懐かしい声。
ああ、夢?
父さん…
「赦してあげてほしい、綺羅のこと」
どうして?許せない。
だって父さんを殺した……
「彼も、苦しんだはずだ」
私のほうが苦しんだ。
「不慮の事故だった。彼は殺そうと思って俺を殺したわけじゃない。」
けど……
「もう、心のどこがでわかってるはずだ。伶峰。綺羅は君と向き合ってる。償おうとしている。大切に想っている。」
………。
「俺がお前を引き取れたのは、綺羅がお前を連れてきてくれたからだろう?綺羅がいなければ俺はお前の父親にもなれなかった。もう、やめなさい。復讐がすべてではない、俺はお前が誰かを苦しめたりすることを望んでいない。」
珍しく、ハッと冷や汗をかいて目を覚ました。
これは夢じゃない。父さんからのメッセージ。確信はないけれど、そう感じた。
本当はわかってた。
大人になるにつれて気付いてた。
子どもだったあの時は自分のことで精一杯で、綺羅の気持ちなんか考えてなかった。
私が綺羅を殺しに、苦しめにいこうとする度、彼はどんな気持ちだった?
大人になった今、やっと気付く。
でも、綺羅を恨むことをやめてしまえば、父さんを悲しませる気がしてどうしようもなかった。
大切な父を亡くした。
誰も、もう私を必要としない。
ーーーそんなことない。
父さんを失ってから私の傍に一番居たのは、誰だった?
綺羅が見守ってくれていたんだ。