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4話 宴と天才と


 クロクロで【星渡りの古森】に入る条件の一つに、【森の命水(エリクサー)】と【森の宝玉(グリダイア)】というアイテムをエルフに譲渡するといったものがあった。


森の命水(エリクサー)】とは【世界樹の(しずく)】の下位互換で、あらゆる傷を一瞬で癒す。【森の宝玉(グリダイア)】は【世界樹の果実】の下位互換であらゆる毒や病、呪いを朽ちらせる。


 シーズン4当時ではどちらも非常に入手困難で、究極のレアアイテムと言っても過言ではなかった。

 そんな二つのアイテムだが、シーズン8の時に一定の条件をクリアすると一瞬で大量生産できると判明したのだ。


 その条件は主に二つ。

 世界樹にまつわる【神象文字(デウスルート)】の正しい組み合わせを入手していること。そして4人以上のエルフ王、もしくはエルフ女王が集っているといった条件だ。

 一つ目の条件を満たせる転生人(プレイヤー)は多くいたけど、二つ目が至難の業でエルフとよほどの友好関係を築いてないと実現できなかった。


 さて、()しくも今の俺はそのどちらの条件も満たしている。

 そんなわけで、この時代では貴重な【森の命水(エリクサー)】も【森の宝玉(グリダイア)】も大量にプレゼントできるって寸法だ!

 これでみんなの俺の覚えもいいよね!


永きに君臨するは(あっきゃっきゃっきゃ)——」


「む? レムリアよ、どうかしたのか?」

「レムリアちゃんったらみんなが集ってくれて嬉しいのかしら?」


 俺が中空に【神象文字(デウスルート)】を描き始めると、パパンとママンを皮切りにハイエルフたちが注目してくれる。


古代樹のそよめき(あーうあうあうぅー)封樹のゆらめき(ふぅあうぅあー)世界樹のさざめきに(てぇってぇいーたぁた)耳を傾ける君主のみみぃてぇってぇうぅあうっ!」


「ん……レムリア……一体、何を?」

「古代樹と意思(パス)を……いえ、この気配はもしかしてレムリアちゃん!?」


大いなる恵みの雨(おぅうめうぅあぁー)王杯の渇きを癒し(おぉてぇってぇて)満たす(たぁーい)————【古き王たちの宴(あぅあっだうあー)】」


神象文字(デウスルート)』を結ぶと、文字そのものが周囲の古代樹へと吸い込まれてゆく。そして不意に木々の葉がざわめき、雫をポタリと落とした。

 次第にポツリ、ポツリと水滴は落ち続け、ついには通り雨のごとくハイエルフたちを濡らした。

 中でもひと際強い輝きを放つ雫は、宴会のテーブルに着地するや否やヌメリと姿を変えて荘厳なゴブレットになっていた。もちろん、中には【森の命水(エリクサー)】がたっぷりと注がれている。


「こ、これは……姫君が……!? いや、しかし我々の色力(いりょく)も吸われている……?」

「なんたることか……もしや姫君は世界樹への意思(パス)が通じておられるのか!?」

「しかし世界樹は5000年前に朽ちたはずです……!」

「じゃあ、今起きている現象はどう説明をつければよいのじゃ!? 待て、次々と現れる美しき杯に何かたゆっていますぞ!?」


「どうやら【森の命水(エリクサー)】のようだ」

「間違いありませんね……レムリアちゃんはやっぱり大天才よ……!」


 パパンとママンがゴブレットの中を一舐めして断言すると、ハイエルフたちはさらにざわめく。


「【森の命水(エリクサー)】……失われたエルフの秘薬ですな……」

「新しく製薬することは叶わず、厳重に保管されておりますが……数は極少ですよね……」

「それをいとも簡単に!? もしや姫君は我々に下賜(かし)されたのですか!?」

「葉より滴り落ちる黄金色の雫……もはや恵みの雨ではありませんか!」



 よしよし、みんないい反応だ。

 さらにもう一つ、サプライズ!


永きに詠われるは(なぁうぅぅあぁー)——黄金樹のきらめき(あうああぅぁー)時空樹のときめき(ずーくーとあぅぁー)世界樹の色めきを(せああぅぃうああ)眼に映す君主のみ(まなぁうぅぅあうぁ)


 ハイエルフたちの色力(いりょく)が周囲の古代樹と共鳴し、さらなる緑の奇跡を起こす。


森の宝玉を身ごもり(おぅうめうぅあぁー)子々孫々の血脈(しぃしそうぇってぇ)を守護する(てたぁーい)————【古き女王たちの星粒(ふぅあぅあっだうあ)】」


 木々には多くの星粒が実り、それらはポロリポロリと俺たちに降り注ぐ。

 まさに星々のシャワーの輝きを浴びるエルフ王と女王たち。


「これは……【森の宝玉(グリダイア)】、ですな……」

「姫君は我らの子らが毒されぬよう、呪われぬようにと案じておられる?」

「まだお生まれになられてまもないというのに……我らへの惜しみない慈愛! そして我らの想像もつかぬ叡智をお持ちだ!」

「なんと、なんと、いと気高き御方(おかた)か!」


 よし! いいぞ!

 俺って元々エルフとかじゃないから……何かの拍子に鈴木徹男だとバレて『無断で【星渡りの古森】に入ってるやんゴルァ』ってなっても、【森の命水(エリクサー)】と【森の宝玉(グリダイア)】をたくさんあげたよね?

 古森に入る条件は満たしてるって言い訳がきくよね?


 こういう不安はぜーんぶお掃除いたします!




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[一言] エリクサー生成の詠唱部分ルビ振りミスってますかね?
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