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ファンタジー考察~エルフは何を食べているのか~

作者: サターン


 ファンタジー作品でお馴染みの種族〈エルフ〉

 美しい容姿に長い耳。ヒロインとしてもよく登場するこの有名な種族は普段どのような生活をしているのか?

 今回はエルフの謎に満ちた生活に着目して考察をしていこうと思う。


 エルフと呼ばれる種族はファンタジー作品において一般に深い森の中で生活しており外部との接触をあまり持たないとされている。

 中には人里に下りてきて人間と交流を持つ個人もいたりするが、はぐれエルフなどと言われたりしてどちらかというと少数派だ。

 外界との接触をもたない深い森の中で、エルフたちはどうやって生活の糧を得ているのだろうか。


 まず考えられるのは畑を作って農業をしているか、あるいは森の中で狩猟生活を送っているという説だ。これらを順番に考察していこう。


 畑を作って農業をしているという説だが、エルフたちの住む環境はどうも農業をするのに向いていないと思われる。


 森の中では木々の葉が光を遮るので薄暗く、農業をするのに十分な日光を得ることができない。

 そしてエルフたちは森の掟などで木を伐ることを忌避している場合が多いので、邪魔な木々を切り払って農地を作るのも難しいだろう。


 焼畑農業で森を焼きはらうのはどう考えてもエルフたちのイメージに合わないし、そんなことをすれば山火事になって住む場所を失いかねないだろう。


 またエルフは長身、美形、色白な外見に描かれることが多いが、その見た目から言って毎日泥にまみれながらきつい農作業をやって生計を立てているとは想像しづらい。


 もしエルフが毎日畑仕事をしているのなら、もっと手の肌がガサガサになったり、無理な姿勢で長時間畑仕事をしたせいで腰が折れ曲がったりしているはずだ。


 だがそういったエルフがファンタジー作品の中で描写されたことはほとんど見たことがない。

 エルフたちの容姿はみな美しく、農民というよりどちらかというと貴族的なので、エルフが日々農業に従事しているというのはあまり考えられないだろう。


 ではもう一つの説。森の中で狩猟生活を送っているというのはどうだろうか。


 現実世界で森での採集で生活をする狩猟民族の人口なのだが、これは森の外で農業を営む農耕民族と比べると少ない傾向にある。

 農業の方が同じ面積の土地から得られる食料の量が狩猟民族よりも多いのだ。


 作品によるがエルフの人口はあまり他の種族に比べて多いという印象はない。

 どちらかというと人里離れた秘境に住むめずらしい種族といったイメージだろう。


 だからエルフたちの人口が少ないという部分からは、エルフが狩猟民族に近い種族であるといえるかもしれない。

 またエルフは弓が得意なのでそれで森の獣を上手く狩ることもできるだろう。


 なのでエルフの主食は狩りで得た動物の肉や、森で採取した木の実、キノコと想像することもできるのだが……しかしどうも私にはあまりそうは思えない。


 そもそもエルフというのはただの森に住む原住民ではない。

 ファンタジー世界において人間よりも高度な文化と魔法、歴史を備えた、いうなら上位種族とも言うべき存在なのだ。エルフは森に住んではいるが、どちらかというと人間たちよりも都会的だと言える。


 プライドが高く高貴なエルフたちが、現実のジャングルに住むどこかの原住民のような……そんな原始的な生活を送っているだろうか? それはなかなか考えにくいことだ。


 エルフたちが狩りで仕留めた獲物を焚火で焼きながらバーベキューを楽しむような姿はあまり想像できない。

 そもそもイメージから言ってエルフは草食系なので、儚げな雰囲気のエルフたちが肉を両手にガツガツ頬張るようなことはしないだろう。


 なので狩りで得た動物の肉がエルフたちの主要な食料というのもやはり現実的ではないと考えられる。

 やはりどちらかというと植物系の栄養を得ていそうな気がするのだが、しかし森の掟などがあり木が伐れないとか木の実を採りすぎないとかそういう縛りもありそうなのでそっちの線もなかなか厳しい。


 肉も駄目、植物も駄目となるとエルフはいったいどうやって生きているのか?

 これらをふまえた上で私は三つの可能性があると考えている。順を追ってそれぞれ解説していこう。



 仮説その①『種として優れたエルフは食事など必要としない』


 第一の説、それはエルフは人間と比べ優れたエネルギー効率を持っており活動するのにほとんど食事を必要としないというものだ。


 エルフというのは長い寿命と知性を兼ね備えた、人間よりも上位のものと描かれることが多い。

 その歴史は神話の時代にまでさかのぼり、エルフたちの先祖には古の神々や精霊の名前があげられるような例もあるだろう。


 そのようないわば半神的な存在。種としてすぐれたエルフたちは人間のように日に何度もの食事を必要としないのだ。


 人間よりも効率的な肉体を持つエルフは、肉体の活動に必要なエネルギーが極めて少なくて済み、木の実一つを食べただけでも充分に活動できるのかもしれない。


 現実で動物のナマケモノなどは一日中木にぶら下がったままでほとんど動かないが、食事は日に数枚の葉っぱだけで生きている。

 また外敵に襲われることがなければナマケモノの寿命はかなり長い。


 エルフに動きが鈍重なイメージはないが、寿命に関しては意外と近いところがあるかもしれない。


 なんとなくだが食の細い生き物ほど長生きな印象がある。ガツガツ食べている人は早死にするイメージがあるし、食の細いエルフが長寿なのも一定の説得力があるのではないか。


 エルフの寿命は人間からみるとやたら長いので、普段何をして過ごしているんだろうと不思議になるが、この場合エルフたちは動く必要のないときは森の中でひっそりと静かに暮らしているのだろう。


 エルフが戦いの際などに機敏に動けるのは、身体のオン、オフがはっきりしていてエネルギーを使うべき時には素早く動けるように調節できるのだ。


 あるいは高度な生命体であるエルフは、魔力を使って肉体の活動に必要なエネルギーを生み出せるとか、森の木々から力を得られるとか、そのような特別な力が最初から与えられているのかもしれない。


 もしそのような能力があれば、エルフが自分は他種族よりも優れていると思ってしまうのも無理はない。人間たちが食料を得るために日々汗をかいて働いているのを見て、人間というのは実に不便な肉体だなと、そう思ってしまうのだろう。


 以上が一つ目の仮説だ。森の中で労せず手に入る最低限の食事でも十分に足りるということなのだろう。続いて仮説の二点目だ。



 仮説その②『エルフの森がとても実り豊かな場所である』


 第二の説はエルフの住む森が、特別に素晴らしい場所だというものだ。


 エルフの住む森は普通の森ではない場合が多い。

 例えば世界樹と呼ばれるような特別な木があったり、精霊の加護で特別な魔力に満ちていたりといった具合だ。


 このような自然の力に満ちた場所では、森から取れる恵みも普通のそれとは大きく違うのかもしれない。

 エルフの森というのは人間の滅多に近寄らない秘境のような場所だ。

 そこは美しい川が流れ、一年中実り豊かな楽園のような所かもしれない。

 森では栄養満点で味も良い果実や木の実がいくらでも手に入るのだろう。


 生活環境に恵まれているのでエルフたちは食料を得るために労働する必要がない。

 エルフたちが色白で線が細く、綺麗な手をしたりしてどう考えても重労働をやっていなさそうなのもそういう理由なら説明がつく。


 だがその場合、豊かな恵みをもたらすエルフの森は他種族からの侵略の対象になるだろう。


 実際に侵略されて、エルフが他種族(人間やオークなど)の奴隷にされるようなファンタジー作品も多い。だがそうでない場合にはエルフが効果的な防衛手段を準備しているのだろう。


 元々エルフは魔法への適性は高く、労働に時間をかける必要がなく長寿なエルフは魔法の修行を積むことでさらに強力な戦力になるだろう。


 見通しのきかない森の中でエルフに弓で正確に狙われたら避けるのは困難だ。


 森自体が迷いの森で侵入者を惑わせたり、結界が張られていて部外者は入れないケースもある。

 あるいは森の魔物や、トレントなどの木の怪物をエルフは配下にしていることも考えられるだろう。


 そういう事情もあって豊かな森に住むエルフ族は他国からの侵略に備え常に防備を張っている。

 だから侵入者にはことさら厳しい。そう考えればイメージからいっても想像がつきやすい。


 エルフというと自分たちの里や森を守ることに並々ならぬ熱量を持っているような印象があるが、彼らの愛国心のようなものは、この豊かな森での生活を守ることから来ているのかもしれない。


 以上が仮説の二つ目だ。


 そして次が最後だ。個人的にはこれが一番可能性が高いと思っている。



 仮説その③『エルフは他種族から食料を輸入している』


 第三の説、それはエルフは自分たちでは食料を生産せず他種族からの輸入に頼っているということだ。自分たちの森では食料の生産が難しいのだから、森の外に住む種族から食料を買ってくればいいという話である。


 では輸入の対価としてエルフは何を支払うのか。それは彼らの持つ知識である。

 そもそもエルフという種族は他種族からみれば相当なインテリ集団だ。


 もともと知性の高いエルフだが、さらに長寿なので多くの時間を研究に費やすことができる。

 種族としての歴史もその世界で一番長いことがほとんどなので、エルフの里にあるであろう図書館には政治、経済、宗教などあらゆる分野において膨大な量の知識が収められているだろう。


 これらの知識は為政者である人間の君主などからすれば喉から手が出るほど欲しいはずだ。


 森から出た一部のエルフがアドバイザーとして、希望する者に知識を与えてやるのである。

 見返りとして平地で取れた食料や、エルフの森への不可侵条約などを人間の君主に求めるのだろう。


 あるいは魔法を極めたエルフのウィザードが、人間たちの勢力に力を貸しているようなこともあるかもしれない。そういった活動の見返りとして得た金で彼らは食料を買っているのだ。


 あるいはエルフたちの力がもっと強大ならば、わざわざ買わなくても強大な魔力をちらつかせて脅すだけでも周辺の勢力から求めるものをもらうこともできるだろう。


 世界の支配種族である森のエルフたちに、被支配者の人間たちは食料を捧げるのが当然というわけである。攻めないでやるから払うものを払えよという態度なのだろう。人間の国家の上層部にエルフ国から派遣された役人が入り込んで、政治を裏からコントロールしたりすることもあるだろう。


 頭脳に優れたエルフたちはもはや自分たちで食料を作ったりはしないのだ。

 欲しいものは他からもらってくればいい。彼らの貴族的な振る舞いもそれなら説明がつきやすい。


 だが植民地を支配する宗主国のようなやり方なので、場合によっては後にエルフへの反乱などを招くことになるかもしれない。



 ――以上が私の考えるエルフの食糧事情についてだ。

 森の中で生きる謎に満ちたエルフたちの生活、皆さんはどのようにお考えだろうか。


 今回はこれで終わろうと思う。ではまた機会があれば……



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気になって栗やマカデミアナッツの収穫量を調べてみたけど、10a当たり100~300kgぐらい採れるらしいので十分な生産量があると言えます。ちなみにお米の収穫量が10a当たり現代は500kg、江戸時代で…
摂食量が少ないのと堅果類を主食に樹園を管理してるイメージで、交易は少なくとも人間やドワーフとは行っていない印象ですね。ノームやホビットとだったら取引がありそうですが、大々的にやってるイメージは湧かない…
[一言] まあ①だろうなあと勝手に想像。
2023/07/10 19:24 通りすがり
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